三話 ~謁見~
俺の中での玉座の間は王様に数人程が頭を垂れるものだと思っていたが、今玉座の間はほぼ満杯に埋まっている。こんな事は最初で最後だろう。
「此度、我が国の危機を知り召喚に応じてくれたこと、誠に感謝する。
私が国王のリカルド・ニフヴェルである。」
国王は三十歳ほどに見え、クロディーエと同じ金髪であるが年のせいか青色の目にはすこし黒が入っている。
「今魔族が人と魔族の境界線を越えて我が領土に踏み入っておる。我が国の兵士、各地の冒険者や傭兵に魔族の討伐を命じておるのだが、魔族一人の討伐に対して少なくない犠牲が出ている。
このままでは人類は負けてしまうと思っていた時に神殿長が女神のお告げを聞いたのだ。勇者の末裔がこちらの世界とは別の世界にいると。そして召喚の儀を行い勇者を呼べと仰ったそうだ。
しかし、勇者の末裔のみを呼んでも慣れない生活や環境の変化で体や精神に支障を可能性があったため、少し多めに魔力を使って町ごと呼び寄せたのだ。末裔の皆様には明日の昼に賜職の儀を受け職業を授かってほしい。明日を楽しみにしておる。以上だ。」
リカルド王はそう言うと立ち上がろうとした。
「待ってくださいリカルド王!私はあの町の町長です。私たちを元の居場所に帰らせてもらえませんか?」町長がリカルド王にこの場にいる殆どの人が思っていることを聞いた。返ってきた言葉は想像通りの言葉だった。
「すまないが、それは出来ぬ。こちらから呼ぶことは出来ても戻すことは出来んのだ。こちらでの生活に困らないよう支援はするため慣れてほしい。」
リカルド王はそう言うと俺たちは玉座の間から出された。玉座の間から出ると泣いている人、俯いている人、中には逆に怒っている人、ワクワクしている者もいた。それぞれの感情を抱きつつ俺たちは来た道を戻り外へ出るとさっきクロディーエと一緒にいた青騎士が立っていた。
「これより皆様をお送りします。もう一度お乗りください。」
相変わらず顔は見えないが、想像したより声は若かった。もっと歳が離れていると思ったがむしろ同じくらいだ。
俺たちは再び馬車に乗ってしばらく揺られると馬車は町との境界の壁で止まった。
「申し訳ございませんが皆様にはここで降りてもらいます。皆様の町はニフヴェルの領地となっていますが、土地ごと召喚したためここからは皆様の町であり、領土となりますので好きにしていい、とのことです。ニフヴェルへの出入りはご自由ですので気軽にお越しください。では私共はこれにて。」
青騎士は俺たち全員が町に入ったのを確認すると馬車で王宮へ戻っていった。
太陽の位置は斜め四十五度ほどの位置にあり、俺はポケットの携帯をみると午後四時過ぎになっていた。まだ時間はあるため俺はこれからどうするのかを話し合う為に謁見の時にはぐれた京介と柑那を探した。柑那は金髪なためすぐに見つかった。女子が多いところを探したら案の定京介がいた。京介は女子の包囲を抜けて俺たちの方へ駆け寄ってきた。
「これから二人はどうするんだ?俺は家に行ってみようと思う。両親が帰っているかもしれないからな。」
「俺も家に帰ろうと思う。両親と弟と妹がいるかもしれない。」
「私も家に戻ろうかな。」
俺たち三人は家族もこちらの世界に呼び出されているかもしれないのでそれぞれ家に帰ることにした。
次の話で前置きは終わりにしたいためちょっと短めです。