一話 ~混乱~
大分長くなりました。そして遅くなりました。ごめんなさい。
出来るだけ長く、早く投稿できるように心がけます。
「ここは…俺たちの町か?」
さっきまで歩いていた道、さっきまで見えていた建築物、間違いない。意識を失う前に見ていた光景と全く一緒だ。しかし、町には壁なんか無かった。
(京介は…?)
下を見るとさっきと同じ位置に京介が倒れていた。
「おい、京介。起きろ。」
「うっ…、柊夜か?」
何度か体を揺らすと京介が目を覚ました。
「俺たち確か…そうだ、光は?」
「分からない、それより京介、あれって俺たちの町にあったか?」
俺は壁の方に顔を向けて聞いた。
「何だよ、あの壁!?あんなの無かったぞ、本当に俺たちの町なのか…?」
京介は愕然としている様子を見ていると心に余裕が持てた。
周りがパニックになると落ち着けるっていう話はあながち間違ってないようだ。
「分からない、壁を除けば俺たちの町そのものだ。」
京介に話しながら俺は壁を見ていると等間隔で監視塔のようなものが見えた。
(まるでゲームの世界だな。)
俺は結構ゲームを遊んでいる。あの壁はRPGによくある国を囲む壁にそっくりなのだ。そうなるとここは何処なのか。住んでいた町にそっくりな光景。見覚えのない壁。俺は更に情報整理をしようとするとけたたましい音がどこかで鳴り始めた。
「この音って警報機の音だよな?」
京介の言う通り、避難訓練の時に使われる警報機の音だ。
「あっちの方向には市役所があるはずだ。」
「俺たちの他にも人がいるのか!柊夜、行こうぜ!」
「京介、待て…って言っても遅いか…。」京介はスポーツが得意で足が速く、あっという間に遠くへ行ってしまった。対して俺はスポーツが苦手だ。しかし状況が状況だ。
(明日…筋肉痛かなぁ…。)
俺は心の中でため息をしつつ親友が向かった方へ走った。
役所へ向かっている最中、俺は周りを確かめながら走ったがどこを見ても住んでいた町と全く同じだった。
俺はようやく市役所にたどり着いた。足がパンパンになり、膝に手を置き、肩で息をする。もう一歩も動けない。演説広場のような場所に町の皆は集まっていた。俺は端に座って休んでいると京介を見つけた。京介も俺を見つけると駆け寄ってきた。
「柊夜、相変わらずだなぁ。」
「うるせ、誰かを追うのに必死だったんだよ。それよりここで何をするんだ?」
「これから話が……」
京介から教えてもらおうとしたが京介の後ろからこちらに向かってくる複数の人によって遮られた。
「京介君もここに来てたの!よかったぁ、私一人じゃもう…。」「きょーすけ君、何が起きてるの?私怖くなってきちゃった…グスッ。」「きょーすけ君がいればもう安心だわ!」「京介君!」「きょーすけ君!」
どんどん女子が集まってくる。俺たち三年はこの時期は就職や進学で昼で終わることが多い。京介の周りに集まっている大半が同じ学校の女子だ。同じ三年であろう隣町の制服を着ている女子が少数だ。女子が集まるということは京介はイケメンだ。更に家は金持ちだ。そのため京介の彼女になろうとしている女子はザラにいる。というかお前ら、怖いだの頑張れるだの言っておきながらこっちに来るときすごい形相で誰が一番早く着くか競争してたじゃないか。見てるこっちが怖いわ。
「しゅーや君も大丈夫?」「きょーすけ君、柊夜君と一緒なら大丈夫だね!」
「大丈夫、心配してくれてありがとう。」
俺は適当に返事をしておく。こんな感じで俺も心配することで京介から見た好感度を上げようする女子がいる始末だ。
俺だってそれなりに顔はいい方だとは思う。運動が出来ないだけでここまでドライな対応されるとは。お前ら怖すぎ。
「京介~無事だったんだ。柊夜もお疲れ様~。」
横から一人の女子が来た。身長は160程、髪は染めているであろう金髪セミロング。
「よっ、柑那。お前も大丈夫だったのか」
京介は彼女の名前を呼んだ。彼女の名は浜原柑那。俺と同じクラスだ。
「柑那もお疲れ。」
俺も返事をする。柑那は他の女子と違って普通に接してくれている数少ない女友達だ。俺と柑那は女子に囲まれている京介を眺めて休んでいると市役所の方から男性の声が聞こえた。
「町の皆!今日集まってくれた事、感謝する。」
声の主であろう男性は広場にある壇上に上がった。年齢は40くらいだろうか。所々に白髪が見える。強面だがどこか優しさを感じさせる顔だ。見たことがある顔だが名前が思い出せない。
「あの人、町長ね。」
俺が悩んでいると柑那が教えてくれた。そうだった、あの人は俺たちの町の町長だ。出来た人として皆から絶大な信頼を得ている。
「早速だがあの壁に心当たりのある者はいないか?」
町長の質問に皆返事ができない。
「そうか。では現在の状況を説明する。町は現在電気が供給できず、電話も電波も繋がらない絶望的な状況だ。」
周りは一気に暗い雰囲気になった。
「しかし安心してほしい。これから私と市役所の職員数人であの壁が何なのか確かめに行こうと思う。皆は少し待っていてほしい。」
町長は宣言すると壇上から降り、急いで準備に取り掛かろうとした時に壁側からこちらへ何かが近づいてくる。
(おいおい…冗談だろ?)
近づいてきたのは町では絶対見ない騎士と馬と馬車だった。