『最先端の葬式』【一画面小説】
お葬式が近代化したら―。
タブレット端末の画面で、経を唱える坊さんが動いている―
この葬式を提案したのは姉だ。坊さんも忙しい日は忙しいのだそうで、日に幾つかの葬式を掛け持ちすることもあるらしい。私も以前、袈裟姿のまま原付バイクにまたがって、明らかに制限速度を超えて走っている坊さんを見かけたことがある。そんな坊主に冥福を祈ってほしくはないものだが、とにかく大変らしい。
この読経は事前に録音されたものではなく、ライブストリーミングされているものだそうだ。探偵はよくBARにいるそうだが、この坊さんは寺にいる。大層な装飾彫りの入った木魚が画面の隅に見えるが、セレモニーホールなどを借りるときは、あのかさばる置き物を持って移動しているわけだ。その手間賃が加算されないだけでも、格安プランを作るのには大切なのだろう。急ぐ車内で、口を開けてにやにやしているように見える魚の顔の置き物が助手席に座っていると、癒されるのだろうか。いや、ストレスが増すような気もする。
姉よ。遺影をデジタルフォトフレームにしなかったことは評価する。ただ、その、お前がどう使おうと構わないから、同じ寺の取り持つ葬式に行くとスタンプが貯まるカードは、参列者に配らないでくれないか。
近代化していいものといけないものがあると思います。