①魔女と赤ん坊と木の実
昔ながらの友人と数年ぶりに会う約束があって、アタシはホウキで空を飛んでいた。
あまり高く飛びすぎると疲れるから低い位置を飛んでいた。
すると地上で小さな生き物がうようよ動いているのが一瞬見える。
あれはなんだろうかと、気になって近づいてみると落ちていたのは人間の赤子だったことがわかった。
それにしてもどうしてこんな人気のない森に?
「かわいいね~アンタ、ウチの子になる?」
「あばー」
まあいいや、連れてこうと思う。
空腹なのか赤ん坊が泣いている。
食べ物は持ち合わせていないのに困った。
「あ、変な木の実!アンタ食べる?」
赤ん坊に木の実を近づけると笑顔になった。
「木の実あげるって言われても変な男についていっちゃダメよ~」
アタシもつい、つられてにやにやと――――
いけない、父性に目覚めそうになった。
「にしてもアンタなんで森に落ちてたの?」
なんて聞いてみたけど話せるわけないか―――――。
「あ、約束があるんだった!」
ホウキを全力で飛ばしてしま4た。。
「あっごめん」
アタシはあわてて赤ん坊を見る。
泣き出すんじゃないかと心配していたけど赤ん坊はなぜか喜んでいた。
「家族を探してあげたいけど、森にいたってことは…」
しんみりとした空気になった。
「大丈夫、もしも見つからなかったら責任もって育ててあげるわ~」
赤ん坊の頭を撫でた。
「伴侶もいないのに子育てなんて魔法使いとは云え不思議ね…」
アタシはため息をつきながらもう一度ホウキを全力で飛ばした。