説明、初戦闘、反撃、そして……。その2
やっと戦闘開始です。
「……これは、酷い」
ヒトデの怪物の攻撃をよけながら一人愚痴った。
話は数分前にさかのぼる。
~数分前~
俺たちは一体のヒトデの怪物と戦っていた。
「とりあえず、『攻撃補助』の使い方を教えるよ」
突進してきたヒトデをサクは慣れた動きでよける。対して俺は紙一重でよけた。
「……NPCの攻撃、リアルで怖えぇ」
「慣れれば大丈夫、後は攻撃するだけだよ」
こんなときでもサクは俺に笑いかけてくる。
「まず、『攻撃補助』は基本音声認識なんだ。例えば……」
そう言うと相手から距離をとり腰に剣を構え、サクは叫んだ。
「いくよ! 『攻撃補助!』『単純剣撃!』」
サクの剣がきらめき、敵の懐に飛び込んでヒトデを横一文字に切り裂く。
ヒトデに変化はないようだが、HPが3割ほど減っていた。
「やっぱり硬いなぁ……、分かった?」
頭では大体わかったが、一度実際にやってみなければ分からないだろう。
「俺も攻撃に参加する。サク、手伝ってくれ」
「いいよ」
俺はヒトデに向かって突っ込んだ。それに反応したのかヒトデは反撃した。
俺はヒトデの攻撃を再び紙一重でよけ、後ろをとる。……ヒトデの怪物は簡単な装備を付けている、このゲームの攻撃判定がシビアなら、背後からの攻撃の方がダメージは大きいはずだ。
剣を腰の位置に構えて叫ぶ!
「『攻撃補助!』『単純剣撃!』」
俺は剣でヒトデの背中(?)を切りつけた。今度は5割減る。しかし残り2割、ヒトデはまだ倒れない。
ヒトデが勝ち誇ったようにこちらを向いた。その行動に俺は……笑う。
「余所見厳禁だ」「『攻撃補助』、『単純剣撃』」
背後からのサクの攻撃でヒトデのHPは0になった。
「こんな感じだね。後は強くなってきたら、アシスト無しでダメージを与えられるよう努力していこう」
初めての戦闘をのり切った後、サクはそう言ってきた。
「そもそもなんで『攻撃補助』があるんだ?」
アシスト無しでダメージを与えられるのならば、『攻撃補助』はいらないはずだ。
「それがこのゲームの面倒なところだよね。例えば、『攻撃補助』ありとなしで同じ攻撃をする。ありだと大体同じダメージを与えられるけど、なしだと少し剣がぶれるだけで相手に与えるダメージがかなり下がるんだ。まあ、『技術魔法』や『芸術魔法』は関係ないし、熟練者は『攻撃補助』なんて使わないけど」
ようするに練習しろということか。
「サク、とりあえずいったん街に戻るか」
そう言った瞬間、新たにヒトデが出現した。……しかも3体。
そして現在。
俺は1体、サクは2体のヒトデの相手をしている。
ヒトデはそれぞれ武器として、短刀、槍、片手剣を持っていた。
彼らはまず、おれとサクを引き離した。そのうち槍と片手剣はサクがターゲットを担い、倒しやすいと思われる短刀を俺に任せたのだろう。
サクはどうだか分からないが、俺は正直きつかった。結果、集中力が乱れ始めている。
攻撃が掠り始めた、痛みはほとんどないが完全に余裕がない。
敵は『攻撃補助』を使わせてくれない。前回は二人だった、その前のサクは一度距離をとって使っていた。……しかし今の俺はサクと協力できず相手と距離をとるスピードもない。
「少し思考がネガティブすぎる……」
俺は敵にのみ集中し、戦闘以外の全ての思考を遮断した。本能だけで行動する。
ヒトデは突撃の構えを見せている……、俺は最小限の動作でよけるとともにすれ違いざまにヒトデを切りつける。
相手HPが4割ほど減った。
ヒトデは振り向くともう一度、突撃の構えを見せた。
「何度やろうと無駄だ」
相手の突きに対して俺はスライディングで足元を狙う。 ヒトデはバランスを崩し、前に倒れこんだ。
「……今だ」
俺は剣を水平に構え、頭の中で叫ぶ。「『攻撃補助』『突撃剣』」
俺は敵に突撃して、剣でヒトデの体の中心に向かって突き出し、ヒトデの体を貫いた。
ヒトデのHPが消滅する。……しかし、
俺の心臓に短剣が突き刺さっていた。最後の瞬間、ヒトデが俺に短剣を投げつけたのだ。
俺のHPが、0になった。
相打ちでいきなりセイが負けましたね。
次回、もう一度戦います。