説明、初戦闘、反撃、そして……。その1
「さて装備の予定はたったし、初期装備のままで初戦闘行こうか」
買い物はすべて済んだらしい。俺的にはこれ以上心配しなくて済むので一安心だ。
「でもその前に、外に出るまでの施設を一通り説明しておこう」
そうして向かった先には、小さな船が並んでいた。
「ここが船場。お金を払えば時間はかかるけど街の好きなところに行ける。歩くのが面倒な人にお勧め」
だから街の至る所に水路があったのか。これは便利だな。
「乗りながら説明した方が楽なんじゃないか?」
「そのまま通り過ぎたら説明する暇がないだろう? それに、いちいち止まるとその度にお金を払う羽目になるし」
そこまで払えるほどのお金は無いということか。
「次、ここは広場。ここの掲示板にあるクエストは好きに選べるし、たまにここでショーを見ることができる」
狭い路地を通り、視界が広がるとそこに広場が現れた。真ん中に巨大と言って差し支えない噴水、その前に大きなステージがあった。いたるところに掲示板がたっている。
「ショーが始まると、ここらは人でいっぱいになるんだ。ショーの予定が決まったら一度見に来ることをお勧めするよ」
「なあ、さっきから聞いているとショーという言葉が出てくるが、それっていったい何だ?」
そう聞くと、サクは少ししゃべりにくそうな顔をした。
「そのままの意味だけど……、って言っても最初から説明しないと分からないよね。全部話すのは面倒なんだけど……、うん、歩きながら話そう。セイは『アート』って知ってる?」
アート? 確か、和訳すると芸術か。
「芸術ってことか。でも、それだったらどうやって表現するんだ?」
「うーん、これがちょっと違うんだよね。セイ、このゲームには魔法に近い力が3つあるんだ。正式名称ではないけど、
一つ目は『技術魔法』。
二つ目は『芸術魔法』。
そして最後は『攻撃補助』。
この3つにはHPと同じ場所にあるAPで常に確認できる」
ステータスを開き自分のHPの周りを確認する、この青いのがAPか。
「その3つの力はどういうものなんだ?」
「まず、『技術魔法』。これはいわゆる普通の魔法と同じものを指すんだ。
風のギミックや、癒しのギミックがそれに当たる。
クエストをクリアした報酬でもらえることがあるけど、それでも入手するのは簡単じゃないし、結構地味だったりするんだ。
次に、『芸術魔法』。これは一言で説明すると『自由』、だね。
これは、攻撃範囲や攻撃力、技の演出が比較的自由なんだ。そして派手で美しく、見る者を魅了する。
ただ、手に入れる方法は不明。しかも分かっているだけでは手に入らないらしい、噂ではPSが必要だって聞いた。だからこそ、みんな芸術魔法を求めるんだけどね。
後は『攻撃補助』だけど、これはシステムアシストと同じものと思っていいから、詳しいことは戦闘を交えながら教えるよ」
プレイヤースキルが必要なのか……、難しいじゃないか。それにしてもその状態で芸術魔法を手に入れた人は、どんな人たちなのだろうか。
「サク、芸術魔法を持っているのはどんな人たちなんだ?」
「うーん、名前を覚えていないから愛称と『二つ名』だけだけどいい? 因みに『二つ名』というのは、芸術魔法を持った人たちの能力に合わせて人々がつけた名前なんだ。僕が知っているのは4人。
一人目は『雷帝』の二つ名を持つルーさん、分かると思うけど能力は『雷のアート』。
水の世界のせいでPTを持っているにもかかわらず、ソロプレイをしている難儀な人でもあるんだ。
『雷のアート』は恐らく芸術魔法の中で最強の部類に入るよ。
二人目は『水使い』……今は『人魚姫』と呼ばれているエリさん、能力は『水のアート』。
ギミックやAGIなしの泳ぎのスピードではめったに負けず、ありだと絶対に勝てないほど速い。
ショーを積極的にやっていたりする。自分に合うPTを探しているのか、PTに入っては抜けるを繰り返しているのが玉にキズだね。『水のアート』は芸術魔法の中でも自由度が特に
高いんだ。
三人目は『花火師』の二つ名のマルスさん。能力は『熱のアート』。
少し好戦的だけど、根は美しいものが好きな人。名前の通りショーは花火をする。
『熱のアート』はこの世界ではちょっと不利かな。だけど大会ではちゃんと成績を残している。
最後は、『泡使い』……なんだけど、あんまり詳しいことは知らない。能力は『泡のアート』。
これらの芸術魔法を持った人たちが持っている力を披露するのがショーなんだ」
「それは芸術魔法の使い手にとって利益になるのか?」
「結構な熟練度と報酬が手に入るらしいよ。ただ自分の芸術魔法の種明かしをしている様なものだから、有名な人以外はあまりやらないと思う」
今度、ショーがあったら見に行くか。芸術魔法を手に入れる方法が見つかるかもしれない。
実は、今回のセリフの中に妹がいます。ただし、ネタバレは無しでお願いします。
次回、おそらく戦闘します。