ここから
「えっ、えーみなさん、今日はこれでお仕舞いです。お忘れ物のないよう気をつけてお帰りくださいませ」
観客がざわざわしながら帰っていく。ここに残っているのは術式第Ⅶ式学校の俺達とサーカス団の人達だけだ。
先ほどアナウンスをしたあの金髪の女の人が歩み寄る。
「アンタ、大丈夫かい?さっきはこの子を助けてくれてありがとうね」
クラリスの頭わ抱きかかえながら言った。
「いえ、別に大丈‥‥ってうわああああぁぁあ」
気が付くと俺は金髪の女性抱かれていた。むっ、胸が顔にあたる。
「く、苦じぃ」
だ、誰か助け‥‥‥。
すると大男、確か名前は───ジェイソン、が近づいてくる。
よかった。早く俺を助けてくれ。
大男は俺の背後に立ち、俺の首をチョップした。そう、そこは丁度人間がチョップされたら気絶するところ。
俺は意識を失いながら、「誰も助けてくれないのかよ」と考え、頭が真っ白になり、暗い闇の中に倒れた。
ここは、どこだ‥‥‥?眩しい。
「んっ」
俺は呻き声をあげながら、そっと目を開ける。
目がまだ光になれず、目をパチクリさせながらゆっくり起き上がる。
「ああ、起きたのか。キリト」
「ん、先生?」
「さっさと向こうに行く」
俺の横には、あのクラリスもいた。
よくわからないが、着いていくしかなさそうだな。
俺はベッドを降り、先生とクラリスの後に続く。
すごく長い階段を下りているところで、先生に質問する。
「あっ、あの。先生」
「なんだー」
「ここって一体‥‥‥。それにみんなも居ないし」
「ここはクラウンサーカス団の地下。みんあは地下の大広間」
先生の代わりにクラリスが答える。
「んじゃ、俺なんで気絶させられてたんだ?」
「ああでもしないと治療できないから」
「治療?」
「知らないふりしても駄目だぞー。お前、変なことでやせ我慢するかんなー」
「うっ‥‥‥」
「まっ、クラスの奴らなんか誰一人気づいてなかったから安心しろ」
誰一人、か‥‥‥。
「でも、みんな、あなたのこと心配していた」
「えっ?」
「一人じゃ、ない」
まるで、俺の心を読むかのようにクラリスは言った。
「おっ、見えたぞ」
先生がドアノブに手をかける。
『ギイィィイ』
ドアが開く。すると、そこにはクラスメイトとサーカス団がみんなでわいわい盛り上がりお茶会していた。
「訂正。みんな、心配<お茶会?」
「ああ、そう、だな‥‥‥」
すると、入り口に立っている俺に気づいたのか、みんな近づいてくる。紅茶の入った紙コップを持って。
「おい、お前。大丈夫なのか」
「こんな奴、大丈夫に決まってるでしょ」
「この紅茶、とても、おいしよ」
「おい、キリトもこっちに来て一緒に飲もうぜ」
「あの、大丈夫、でし、たか?」
「‥‥‥」
と、いう奴等と。
「クラリスさぁーん。の歌とてもステキでしたぁー」
「クラリスさん、とてもかっこよかったです」
「てか、お肌ぷにぷにすべすべー」
「かわいいぜ。オレの歌姫ー」
何なんだ、こいつ等。
「お前等、邪魔。どけろ」
声とは裏腹に毒舌。あの時と変わらない。
「おい、お前等」
後を振り返ると鬼のように恐ろしい顔をした先生が立っていた。
「何のんきに茶何か飲んでんだー」
『うぎゃー』
みんなの悲鳴が聞こえるが、オレが気絶している間にお茶会して楽しんでいる罰だ。
「アイリス。わたしにも」
アイリスと呼ばれたのはあの金髪の女性だった。
「はいよ。ほら、そこのあんたもここに座りな」
「あっ、はい」
「こら、あんたたちー」
「ひえー」
「ごめんなさいー」
いつもと変わらない毎日と同じ光景はここでも変わらないんだな。