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ロリータ社長

「遅くなってすまないのぉ、なにしろ忙しいもんでなぁ!何じゃ、その面は。妾の事何も知らされんできたか?あのジジィ、急に代理をよこすとか言いやがって代理には何も言わねぇって?意味分からんのォ?そんな顔するなって若い兄ちゃん!折角のイケメンが台無しじゃろうて!ギャハハハハッ!」

少し高い子供特有の声が社長室に響き渡る。しかし、その内容は全く子どもが言ったと思えなかった。

案内人は怒涛の勢いで喋る社長の言葉が終わるのを辛抱強く待っていたが、笑い声が止まらないのでしょうがなく笑い声をBGMに社長を紹介した。その間社長は腰に手を当て威張りながら笑っていた。

「こちらが社長のuniverso(ウニベルソ)Uranus(ユラァニュス)様です。」

「あ、はい、あ、えっと。ええ。・・・・あ、俺はア、ヘラ・ウィルドです。宜しくお願いします。」

とりあえず頭を下げて顔の動揺を誤魔化すアギラ。

「ギャハハハハッ!混乱しとる!いや、謝らんでいいぞ!だって・・・面白いしのォ?」

―――うわぁ。助けて。・・・偽名で名乗れただけ頑張ったと思うぞ。俺はなんだ、誘惑すればいいのか・・・?ムリだろ。喋り方はともかく、見た目は12歳にも見えないぞ。たぶんフリフリのドレスのせいだと思うけど。しかし、顔の右半分をおおうレースも顔の全容が分からないので幼く見える・・・。

ロリコン以前に犯罪だと思われるな。絶対。――長い回想を終えて気を取り直そうと社長の目を見据えて真面目な口調で切り出した。

「・・・火星の都市化の件ですが。」

「うむ。不服があるなら聞こう!」

少し身を引くような動作をしたが、つつがなく社長は答えてくれた。子どもとは思えない口調で。

困ったのはむしろアギラだった。―――どうしよう。よく考えればついてすぐ魔法かけられてアヘラにここへ飛ばされたし、資料は読んでないし、地球見てたし、何言えばいいか分からない。

《加勢するぞ。》

「アンヘラ!」

《全く同じことを言えよ。》

「ぎゃははは!何じゃ、セリフ忘れたかの?兄さん。」

《私たち火星人は、農業を中心として生活しています。どうぞ。》

「私たち火星人は、農業を中心として生活しています。」

ココからはアンヘラもアギラも同時に言います。

「知ってます。と、これは要らん相づちやなぁ!」

《「しかしマァルス社の都市化活動のせいで、耕地が激減し。精度の悪い機械工業は、周りの星々に受けていません。」》

「・・・。」

社長は答えずレースを鬱陶しそうにそっとつまみ上げ器用にお茶を飲んだ。

《「そしてあなたが潰した会社が多すぎて失業率が跳ね上がっています。頼みの綱である農業も少なくなってきているので尚更です。」》

「・・・使える社員はうちが取ってるし、妾は潰したんじゃなくて合併させたのじゃよ。まぁ、世間的には吸収とか言うらしいがの。」

社長は首をかしげて可愛らしい声なのだがおばあさんのような口調で、お菓子を食べながら器用にも滑舌よく言った。

《「しかし・・・これは無関係かもしれませんが、マァルス社が設立してから失踪者が増えました。」》

お菓子を拭きだして、案内人に拭かせながら社長は笑いながら言い始めた。流石に滑舌よくは言えなかった。

「ギャハハハハハッ!面白い事を言う!ギャハ、そんなことま、でマァルス社、くふっ、のせいにしてくれる、ギャハァ、つもりか?妾は重い看板を背負ったものよのぉ!ギャハハハ!何気に、話題も逸らして・・・じゃあ、お主はマァルス者が人身売買をしている、と言いたいのか?」

最後らへんは声を冷えさせて、彼女は重々しく言った。何も食べていなかった。アギラは(やっちまった!)と考えたが、涼しい顔してアンヘラの言うとおりに言った。

《「ええ。そう考えております。」》

「うむ!そうか。正直は素晴らしき事かな!でも、それは無い。流石にそんなことはしない。確かに火星人は強いからめちゃくちゃ売れそうだが、そんなんで儲けた金は要らん!これは妾のモットーじゃ。」

少し嬉しそうに社長は言った。途中からお茶を飲み始めた。

(器用だな!)アギラはそう書いているが、何の関係も無い。

《「そうですか。スミマセンでした。」》

少し冷淡とも見えるような口調でアギラは答えた。心の中では(俺もお茶飲みながら話せるかな?)と考えていた。しかし(喋れなかった時のリスクが高すぎる。)と悩みぬいて止めた。

「信じてないのぉ?そんなに民間に信用が無いか。妾の会社は。泣けてくるのぉ?」

《「・・・スミマセン。答えかねます。」》

「そうか。信用ないか。そうじゃろうな。良い事、そんなに起こってないもんな。でも、もっとちゃんと見てほしい。食料がどんだけ潤ったか、どんだけ国が平和になったか、錆が減ったか・・・・見てほしい。」

珍しく真剣な様子でそう言った。でも、アギラから逃れるように壁を見つめていた。

《「そうですね。」》

「お主は。何も知らぬのじゃろう。まだ、火星の街を見てないじゃろう。銀河警察の者(・・・・・・・)じゃろうしな。違ったらゴメンな。」

《何をおっしゃっているのですか?》

「・・・。」

《ちょっと、アギラ!なんで黙ってるの?肯定してるようなもんじゃない!》

アギラがアンヘラに反論するより前に壁を見つめる社長が話を続けた。

「お前、火星の作法教わらんかったんか?挨拶はせんし、急に頭下げるし、眼を見据えて来るしのぉ。」

「?」

何の事か全く判らない、といったアギラの様子を見て社長はクスクスと嘲笑した。

「本当に何も知らんのじゃなぁ。目上の者が腰に手を当てたら簡単に挨拶。これ位は、幼稚園児でもできるぞ!そして頭を下げるというのはうちの星では『謝罪』という意味しかないしの!目を見据えるのは「決闘を始めるぞ」という意味が含まれておる。妾は急に戦うのかと思って吃驚したわい。」

「ああ・・・それで身を引くような動作をしたのか。」

《どういうこと・・・?》

アギラは呟いた。アンヘラは見えてないので何の事か全くわからないのだろう。まだ挽回できないか、と思案していた。そして急いでアギラに指示を出す。

《アギラ。今から非礼を詫びろ。混乱してまして。って言いなさい!》

「もう、駄目だよ。」

アギラは静かに答えた。それでも社長は独白を続ける。

「そして、妾は考えたんじゃ。どこかに目を見据えることが礼儀である星があったかなってな。そしたら、めちゃくちゃ著名な星があるではないか?・・・銀河警察じゃ。」

《アギラ!せめてなんか言いなさい!》

アギラはむしろ落ち着いた瞳で社長を見つめていた。

「済まんの。わざわざこんな田舎まで来てもらって。妾の会社のせいじゃろう?あとちょっとじゃ。あとちょっとじゃから。それまで、牢屋に入っておいてくれんかの?」

社長は少し悲しそうな顔をして壁を見つめていた。今なら分かる。それが礼儀なのだろう。アギラはきちんと社長を見据えて言葉を発した。

「社長様。最後に一つ聞いて宜しいですか?」

「うむ。」

「火星はお好きですか?」

「生まれ育った星を嫌うわけ無かろうて。」

「それを聞いて安心しました。ええと、そうですね。素晴らしい牢屋生活を堪能しようかと思います。」

素晴らしい笑顔で頷いたアギラは初めて出されていたお茶に手を付けた。

ぬるかった。


《どうしよう。アギラが捕まっちゃった!ああ、こんな辺ぴな星でばれちゃうなんて!アギラの馬鹿!》

「独り言かなー?アンヘラ?」

《違う!馬鹿バカ!どうするの!?とりあえず、ファントム様に連絡する!》

「やっぱり一人で完結してるな?」

ココは牢屋。と言ってもそんな暗い感じでは無く、部屋の窓には鉄格子がついていて扉には頑丈な鍵がいっぱいついているだけで、普通の部屋である。

でもやはり鉄格子が閉塞感を与えていて、あんまり気持ちのいい感じではない。

《連絡したら「それもまた試練」だけ言って切られて!もうファントムさん冷たすぎ!あ、レイウッドお爺ちゃんなら助けてくれるかも!連絡する!》

「落ち着いて。アンヘラ。」

《ああでも!さっきファントム様に連絡したから電源が切れそうだ!ごめん、切れる~!》

「大丈夫だよ。アンヘラ。俺なら愛の力で通信できるよ?」

《ブチッ!》

静かになる部屋。しかし静寂は嫌いだというようにアギラは呟く。

「今、わざと切ったな?」

でも、答えるモノはいない。寂しそうにアギラは目を細める。

沈黙は続く。沈黙は続く。


「状況を整理しよう。アギラは捕まった。僕の存在はまだばれていない。ファントム様は無視。レイウッドお爺ちゃんも多分取り合ってくれないだろうし。どうしよう。」

アンヘラは元々借りていたホテルでアギラと連絡を取っていた。でも田舎の星だし。という事でアギラが付けていたみたいなソーラー充電でずっと仕える上に奥歯を動かすだけで会話が出来たりする物は用意してない。なので、充電切れを起こしてしまったのだ。

それを今更ながら後悔し始めるアンヘラ。それに食料なども調達しないといけない。もともと魔法をかけたアギラに行って貰おうと思っていたので、今から自分に魔法をかけなおさなくてはならない。

「面倒だ・・・。」

そうも言ってられないので自分で自分を変身させるアンヘラ。

「アギラはご飯食べれてるかな。牢屋にいるんだから、硬いパンとかかも。アギラ・・・。」

いつもツンとした表情のアンヘラは誰にも、もちろんアギラにも見せない、恋しそうな表情をして赤錆だらけの街へ繰り出した。


「ギャハハッハハハハハッ!ギャハァ!ギャハハハハハ!止まらぬ!誰か、妾のっギャハハハハ!笑いをッ!ギャハハハハッ!止めろ!ギャハハハ!」

「ご自分でお止下さいませ。社長。」

「冷たいのぅ。comète(コメェトゥ)?お主は、よくやってくれたぞ。上手かった!というほど何もしてないがの?」

コメェトゥと呼ばれた案内人はさっきの善人そうな様子とは違い薄笑いを顔に浮かべてアギラが座っていた席に偉そうに座っていた。

「しかし、面白いぐらいに上手く行ったのぅ。」

ようやく笑いの止まった社長は静かにお茶を飲みながら旧知の友に話しかけるような様子で話しかける。

「本当ですね。社長。まさかこうもあっさり銀河警察の者が捕まるとは思いませんでした。」

対して薄笑いを浮かべたコメェトゥは業務的な様子で言葉を返す。

「やはり偽の情報流すのが一番大変だったのぉ!むしろ火星の者共は満足して、素晴らしい生活を送っているというのに、嫌がっているように銀河警察に流すのは!」

お菓子を豪快に食べながら社長は勢いよく喋り続ける。

「ちょっとでも火星の状態を見られれば嘘だとばれますからね。」

コメェトゥもお茶を飲みながら業務的に応じる。

「銀河警察が馬鹿で良かったぞ!流した偽情報そのままに苦情を出してくれやがったからな!」

「ええ本当に。」

微笑むコメェトゥはアギラが2人組だったことを思い出して、言いかけて、止めた。

「言わない方が絶対面白い・・・この2人という不確定要素が可愛い社長に影響を与えるかなぁ・・・?」

代わりに火星人には聞こえるが、一般人には聞こえないような声で呟いた。

楽しそうに、ひたすら楽しそうに。

社長の声は13歳なのでそこまで高くないです。実は。でも平均と比べれば高い方です。

アギラ君もそんなに年離れてないので、ラブホに言っても多分「早熟のカップルね」しか思われないと思います。

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