赤錆の星
だいぶ投稿までに時間があいておりますので、前回と文面が大きく異なっている点があるかもしれません。
ご了承くださいませ。
「あぁ。帰りの宇宙船が楽しみ❤」
アギラは何処かうっとりした様子で宇宙船から優雅に降りた。
「僕は全然楽しみじゃない。あんな星のどこがいいのさ?」
アンヘラは憮然とした表情で宇宙船から素早く飛び降りた。
「語ろっか?1日頂戴。」
アンヘラはもはや無視して悠然と歩きだす。
「冷たいなぁ?アンヘラ。それにしても・・・。やっぱり火星人が強くたってねェ。こんな錆だらけの場所に住めないよねェ。」
アギラは辺りを見渡してクスクスと笑った。辺りは一面錆だらけだ。ちょっと着地しただけで気分が悪くなってくる。
「あぁ。だから火星は地下都市。物資が運べないため自給自足を基本とする、穏やかな田舎。・・・だったんだけど。そのマァルス社が来てからなんか変わったらしい。」
二人は瞬間移動を繰り返して難関不落と言われた地下都市への移動をしながら会話をする。
すると風景の一つに一般的な火星人と思われる、赤錆色の目と草を編んだと思われる民族衣装が目立つ男がすっとんきょうな声を上げた。
「あれ!?あぁ・・・・!!客人ッ!!まさかの自分で通るんですか?」
男が高速で瞬間移動をしようとするアンヘラの腕をつかんで引きとめた。すぐ払われた。
そんなアンヘラの代わりにアギラがニコニコと対応する。
「わっ!火星人だー。あ?何。俺たちの案内役ぅ?いいよ別に。道分かるしぃ?」
「そんな・・・お客様。あなた方は密偵なので、容姿を換えさせて頂かないと・・・。」
慌てる案内役に、アンヘラにっこりと愛想のいい笑顔を浮かべるとアギラを引っ張って瞬間移動をした。
アギラは、腕が痛いと思った。
「よかったのかァ?アンヘラ。火星人っぽくしなくて。」
アギラが苦手なため一人だけで瞬間移動を繰り返すアンヘラにアギラは楽しそうに聞く。
「する。お前はな。魔法かけてやるから。取りあえず用意してくれたらしい宿に行く。」
対してアンヘラは瞬間移動で疲れているため、簡潔に答える。いや、いつも簡潔だった。
「え?俺が。何でぇ。」
アンヘラは火星人は飛べないという事を完全に無視して飛びながら答える。
「可愛さが失われるから。こんなに綺麗な顔を・・・赤錆色の目にして何が楽しいっての?」
「あ・・・うん。同感だ。アンヘラはそのままが一番可愛いね。」
「分かってるじゃないか。という事で僕は宿で操るから。君は僕が言った通りにすればいい。」
アギラは、『可愛い。』と言った瞬間だけ顔を背けたことを見逃さなかった。そして優しく微笑むと
「分かったぁ♪」
と言った。もうアンヘラはアギラにかまわず瞬間移動をしていた。
「・・・アンヘラは俺の事どう思ってるんだろう。」
アギラはもう完全な火星人だった。赤錆色の目にこげ茶色の髪を火星独特の編み込み方でばっちり決めている。正直言って似合って無かった。
赤錆色の目にするぐらいでは華やかすぎるアギラの顔は凹凸の少ない火星人と似なかった。
でも他に何もできないので。しょうがなくそのままで。
「あ、じゃぁ・・・アヘラさん。どうぞココに。」
一応偽名を使っているが・・・アヘラって!アンヘラ率100%じゃんか!
ちなみに、火星人の格好しても細かい作法などはわからないので最初に社長室で待機して、簡単なあいさつの仕方だけ教えてもらった。(火星は無駄に作法が厳しく、入室の作法だけで15の動作があるらしい・・・!)
ちなみに近くで補佐してくれる役は、さっき振り切った案内人だ。少し不機嫌な顔をしている。当たり前か。
「ありがとー。けど、俺。あんまり何していいか分かんないんだけどー?」
「客人・・・。もっと、堂々としていてください。あなたは、市民代表として会社に苦情を言いに行く役なんですから。」
「初耳・・・。」
アギラの耳にアンヘラの冷たい声が響く。
《当たり前。言って無いし。ま、僕の指示に従えばいいんだ。》
その声に奥歯にはめられたセンサーが作動するように口だけ僅かに動かす。これだけで向うには音声として伝わっているだろう。銀河警察の英知だ。
「では、指示をどーぞ。」
《まず、誘惑しろ。社長は深く調べた結果、女だということが判明した。》
「俺にもわかる言葉で言って?」
冷や汗を感じる。いつもよりアンヘラの声が冷え込んでいるのが証拠だ・・・。これは、ヤバい!
《誘惑したら、ホテルとかに連れ込め。そして心中しろ。一緒に死ね。中枢を失った会社は、すぐに潰れる。》
「もっと分かんなくなったよー?」
見えてないだろうけどひきっつた笑顔で言葉を返す。・・・喋りづらいことが分かった。
《とりあえず、誘惑しろ。以上。そちらからの通信は受け付けないから了承しろ。》
「・・・俺、アンヘラに嫌われてんのかな・・・。」
アギラは、変身によって様変わりした赤錆色の目を細めながら、呟く。
「俺は、アンヘラが男とラブホ行くとか知ったら、発狂するだろーな。」
「すみません、客人。」
案内役の男が心底申し訳なさそうに妄言を吐いていたアギラを呼んだ。
「・・・なんだよ。」
「火星人は、とても耳が優れておりますゆえその程度の独り言は、聞こえるというか・・・・。」
「マジかよ!先言えよ!チョ、ヤベッハズ!俺恥ずかしい奴じゃん!ええ・・・聞こえんの?」
耳を真っ赤にさせて、飛び跳ねるアギラ(アヘラ)を見て案内人は気まずそうに、もう一つの真実を突きつける。
「はい、実は通信の内容も聞こえているというか・・・。」
「・・・。何その天然盗聴器的能力は。」
「火星では、普通ですよ・・・?」
「待て、近くに人いないよな?お前は内通者だからいいとして、他の奴に聞かれたらヤバいぞ!」
「大丈夫でございます。ここではいろいろヤバいことがなされているので、完全防音となっております。ですから、客人も安心して彼女(?)と会話して下さいませ。」
「要らんお世話だ。」
アギラはそっぽ向いて押し黙った。
「・・・しかし、客人。一応善意で言いますが。」
「余計な事言ったら俺は帰るからな。」
「社長は、13歳ですよ?」
ガチャ
妙なところで終わっていますので、そのまま次へどうぞ。