悪魔に見初められた星
「なんだこれはッ!アギラァ!お前まがいいなりにも俺の跡取り息子でしょーが!」
「だってぇ。土に帰るかなァ?って思ったんだもん♪てか。純・跡取り息子だぞ」
アギラは悪びれる様子もなくひいお爺ちゃんにあたるファントム総合体長に舌を見せる。
「アンヘラ・・・お前が着いていながら何でこんな事に。」
「済みません。あまりにも『エンジェル』『エンジェル』五月蠅かったので見捨てて行ってしまって。明らかに采配ミスです。済みませんでした。我々で回収に行きます。」
「えぇ~~。行くのォ?今なら絶対臭いよ・・・。」
アンヘラの周りの空気が剣呑なものになる。気付かないアギラも天才だと思うのは私だけか?
「最悪。」
「うん。僕もそう思う。けど、お前のせいだとも思う。」
アンヘラはファントムの前とは違って素の自分を出している。
「俺たちが今臭い事か?それとも火星向きの宇宙船に乗ってることか?」
「両方。」
そう、アンヘラとアギラ『天使と悪魔』は火星向きの宇宙船に乗っているのだ。
「なんで僕が火星なんていう、田舎都市に出向かなきゃなんないんだ。」
「だってぇ。一応これ罰でしてね。田舎都市なんだけど。それをいいことに悪徳会社がノットてるらしいんだよね。火星を。」
「だから?」
剣呑な言い方には臭くなった死体の処理をさっきまでしていたからか。アギラが、活動報告にこう記している。『アンヘラの口が常にへの字!!』――まったくもって必要のない記述だ。
そしてキャビンを出ると
「地球が、地球が見えるよ・・・アンヘラ・・・俺、もう死んでいい・・・いや、死ぬのはちょっと嫌かな。」
「・・・どっちだよ。地球?あの青い星か?」
「うん、あの青く気高い星だよ。白とのコントラストが美しい。」
指さす先には確かに綺麗な青い星が光っていた。しかし、別に青い星なんぞ珍しくも何にもない。
「ふん、青なんぞ文化が発達していない証だな。」
「あぁ。空気も綺麗なんだろうな。あそこに行けたのなら俺は身を投じるよ。」
アギラの陶酔ぶりにそろそろおかしいとアンヘラは気付いた。アンヘラほどでは無いが、アギラも別に田舎が好気とか言う訳では無いはずだ。
「おい、どうした。空気なんぞ、銀河警察の方が二酸化炭素を空気中の3%にする事に成功したのだから綺麗だぞ。」
「人工的な綺麗なんぞ掃いて捨てるほど有るだろう?自然な綺麗がいいンダヨ。」
キラキラと青い星を見つめる姿は病的でもある。
「僕。悪徳商会について詳しく調べる。から、1人で地球でも見つめとけば?僕は付き添わないよ。」
「有難う!!」
「あぁ。もう・・・綺麗だな。地球は。壊したいぐらいだ。」
悪魔の笑みは何処までも妖艶だった。
社名:マァルス・・・ふざけてんなぁ。火星に会社作って名前は火星かよ。
社長:universo・Uranus・・・え?女?や、意味は『天王星』だから男にもいるか。しかし、『宇宙・天王星』とはねェ。
専務:comète・・・え。急に名字なし?!こりゃぁ妖しいな。
主な事業:火星の都市化・・・え?終わりかよ。
主な裏事業:人身売買、他社潰し・・・うん。それが聞きたかった。
「とりあえず。爆破すりゃいいよねー。社長を。」
天使の笑みは何処までも美しかった。
地球ってそんなに美しいんでしょーか?
アンヘラの異常までの田舎嫌いは良いとこ育ちが関係してます。
実はアギラの方が良いとこ育ちですが。