限定品苺ポッキー~ラインの向こう側~
最後に残ったのは…天然娘のりお。
急に降ってしまった雪でリョウの家にお泊りすることになったりおは?
さっき…リョウは私に触れたら私を壊してしまうって言ってくれた。
気遣いは嬉しいの。それだけ愛されてるって証拠だから。
でも…そんな彼となら壊されてもいいと思う女な自分もいるんだ。
「りお?宿題終わった?」
「うん、終わったよ」
「父さんが、もう少ししたら戻って来るって…で…」
「一粒位はあげなよ。今度は一緒に作ろうよ」
「りおがそう言うなら残しておくか」
リョウは結構独占欲が強い事が最近分かった。
でもそれはとても嬉しい。だって…私だけなんだもの。
裕貴さん帰ってくるんだ。その前に帰りたかったのにな。
私はちょっとだけ溜め息をついた。その時…
「りお!!外見て。早く」
リョウに促されて私はリビングの窓に立っている彼の側に行く。
「うわぁ…雪だ。リョウ…初めて一緒に雪を見るね」
彼を見上げている私はきっと子犬のようなんだろうな。
短い尻尾をブンブンと振ってご主人様に褒めてってアピールするような。
彼は私の頭をポンポンと撫でてくれた。実は大好きだったりする。
「そうだな。これからも…もっと初めてな事が増えるよ」
「そう?父さんが…戻ってくるときに雪が積もりそうなら泊まれって」
「それって…いいの?そう言えば…はるかさんは?」
「今日は泊まりで仕事。父さんが母さんの所に行こうと
してたらしいんだけど…東京の方が雪が凄いから足止め食らったんだって」
「じゃあ、私も…帰れなそう?」
私は不安になる。彼氏のうちにお泊まりって…マズイよね。
「どうしよう?リョウ」
「とりあえず、父さんに任せてみよう。りおは家に泊まったことあるだろ?」
そう言えば…あの時は台風の接近で停電して…はるかさんに足止めされたんだ。
「一応、家には父さんから連絡するだろうから気にしないで」
彼に肩を抱かれる。肩に触れる彼の温もりが心地良かった。
「ごめんね。りおちゃん。とりあえず今夜は泊って明日帰ろう」
「あの…裕貴さん。明日は学校休みなんです」
「なんだ。だったら休みの間…ずっといる?」
「父さん、何てこと言い出すんだよ」
リョウが顔を真っ赤にして怒りだす。気持ちは分かるよ。
リョウの決心を無下にするような煽り方は…可哀想だよ。
「お前が保守的な性格なのは分かる。でも…恋は一人だけじゃできないんだぞ」
「分かってるよ。だから…傷つけたくないんだよ」
「それを…決めるのは…りおちゃんだ。リョウじゃない」
「裕貴さん…私は…リョウを信じてるから。多分…私が子供だから…」
私がそう言うと、裕貴さんはクスリ笑う。
「女の子は…あっという間に女になるんだよ。真美ちゃんがそうだろ?」
私も知っている真美先輩は…どんどん綺麗になっている。
私もいずれは…そうなるのかな?でも…
「女の子がどう変わるかは男次第だ。リョウ…覚悟はあるか?」
「…分かってる。とにかく、夕飯にしよう」
彼が夕飯の支度を始めたので、私も手伝い始めた。
「良かったな。今夜はビーフシチューにしておいて」
昨日の夜中、あまりにも寒くて一晩かけて筋肉を煮込んだ成果があった訳だ。
「りおちゃん専用の包丁を買おうか…そろそろ…」
「えっ、そんな…そこまで…」
「子供は気にしない。俺達がしたくてやるんだから」
裕貴さんの強引さは、私が吸収した方がいいんだろうけど…難しい。
「さて、ご馳走様。りおちゃんは客間があるからね」
「ありがとうございます。裕貴さん」
ダイニングは再び二人きりになった。
「じゃあ、時間があるからレポート仕上げようか?」
「そうだね」
「俺…レポート用紙用意するからリビングで待っていて」
私はダイニングの食器を食洗機に入れてセットした。
リビングでレポートの確認をする。
こないだ実力テストがあったばかりなのに…。今度のレポートの成績加算が
かなりあるって真美先輩が言っていたっけ。
私もしっかりしなくちゃ。真美先輩と歩いている哲君のように。
「りお…眉間に皺。何考えてる?」
「いろいろ。リョウの足を引っ張らないようにね」
「そんなことないだろ?実力テストベスト10じゃねぇか」
「…トップの人に言われてもねぇ」
「それなら、俺に国語教えてくれよ。現代文も古文も満点だったろ?」
あらっ、気付いてる。っていうより、チェックしているんだ。
「うん…」
「知り合ってからと比べると成績上位の常連になった訳だし」
リョウは私が不安になっていることが何なのか…分かっているようだ。
「自信を持て。俺が好きなのは…まんまのりおだよ」
リョウが私を抱きしめる。
「リョウ…どうして?」
「リオが自信を持てるように。俺だって不安なんだよ」
抱きしめているリョウの手が微かにだけど震えている。
そっか。私だけじゃないんだ。なんか心につかえているものが取れた。
「リョウ?」
私は彼の名前を呼ぶ。
「うん?」
「愛してるわ」
そう言って、私は彼の頬にキスをした。
「りお?どうしたんだよ」
彼は焦って私を見つめる。そりゃ…私からってことは今までは皆無だから。
「あのね、さつきに煽られたの」
「さつきちゃん?何を言ったんだよ」
「いい加減にキスしなさいって。リョウが呆れて捨てられちゃうよって」
「夕飯前に話した本音は覚えてるよな」
彼はちょっと呆れた顔をして私を見る。
「でも…リョウになら…壊されてもいいの」
「りお」
「分かってる。それはリョウのポリシーじゃないのも。でも…今日は
バレンタインだから…この位は…ダメだった?」
「もう…バカだなぁ。人には人の。俺らは俺らのだよ」
「ごめん…リョウ。でね…これ…食べれる?」
私はかばんからバレンタイン限定のイチゴポッキーの箱を出した。
「ハートのポッキーだろ。開けて食べよう」
そう言って、リョウは箱を開けて袋も開ける。
「ほら…りお…あーんして?」
あれ?さつきは私にしろって言ってたけど…いいか。
ポキン。私は適度な長さで折ってしまった。
リョウはその残りを口に入れて、食べてしまった。
「間接キッス。本当はポッキーゲームしろって言われたんだろう」
あぁ…。バレてる。結局単純な作戦だってことだよね。
私はいたずらが失敗して怒られてる子犬のようにシュンとしてしまう。
「じゃあ、今度は逆な。」
彼が食べた残りのポッキーを私に食べさせる。私も…間接キス。
それだけなのに…妙に意識してしまって顔が真っ赤になってしまう。
「これでそんなに真っ赤なのに…キスしたらどうなる?」
私はボンと爆発した音を出したように更に赤くなる。
「もう少し、二人でくっついていることに慣れたらな?」
私はコクコクと首を動かす。今の私にはこれが限界だ。
「俺といるようになってからさ、りおが可愛いという奴が増えてさ
俺が懸命に害虫駆除してるんだからな」
「害虫…駆除?」
リョウが言う事がよく分からない。
「お昼一緒に食べるのってそれだったの?」
「そう、さつきちゃんに友達紹介してね。条件の合う男がいたのが
奇跡に近かったけど」
彼はそう言うとニヤッと笑った。この顔…私知らない。
「安心しな。りおにはそんな事はしないよ。それから…さっき
メールが来たけど…俺…春休みにデビューするんだ」
いきなり彼がデビューすると言う。ジャニーズ?ジュノンボーイ?
「…俺も…作家デビューするんだ」
「凄いじゃない。リョウ。名前はどうするの?」
彼は極上の微笑を私に向ける。今は…ちょっと危険な気がする。
「りお…。りおの名前貸して?一応、現役高校生覆面作家になるから」
「この事は…秘密?」
「当然。だから…困ってるんだ」
「文芸部のこと?」
彼は司書の先生を通して原稿を渡していた。
「何とかなるだろう。文芸部はファンタジーだから」
「ねぇ、どんな話なの?」
彼が小説を書いてるのは知っているけど…サイトを教えてもらった事もない。
私に読まれてるの恥ずかしいんだって。彼らしいでしょ?
「恋愛小説って初めて書いたんだ…だから…俺達をモチーフにした」
「やだ…それじゃあ、分かっちゃうよ」
「大丈夫。話の舞台はしっかり替えてあるし、俺達の性格も逆にしたから」
ニコニコ話をしている彼はもう止められない。
「今度の話は考えてるの?」
「そうだなぁ…現役高校生だから…あの人たちをモチーフにするか」
「それは…真美先輩?歩美先輩?竜也先輩?さつき?」
私は思い当たるだけ言ってみる。自分の恋には疎い人なのに他人の恋に
匂いには敏感な人だ。
「そうだなぁ…どれでもいいか。それより俺はりおとの話を続けたいな」
上手くごまかされたみたいだ。まぁ…それもいいか。
「やだ…私達はこれからも続いていくのよ。本が売れるといいね」
「そうだな。それよりも、財テクのほうが結果が出そうだよ」
「財テク?」
「うん、FXを少しな。そろそろ辞めるけど…」
「いくら溜まったの?」
「うんとね・・・」
彼の告白を聞かない方が良かったかもしれない。その額あれば…
彼一人なら十分暮らせるじゃない。
なんか…悔しいなぁ。でも…これが彼の愛し方なのかもしれない。
だったら…少しだけ甘えてようかな。
「私…今のままのリョウがいい。のんびり進もう?」
私の問いに彼は再び笑顔に戻る。
「そうだな。でも守ってやるのは俺だけだからな」
私は決意表明のつもりで彼に囁く。
I want to stay with you. ずっとリョウと一緒に歩いて行くわ。
結局…リョウの掌に転がされてるだけのようです。
でも…高校生作家デビューですか…。
羨ましいっすね。
もしかしたら…力技で持ち込みそうですね…リョウ…。




