異世界へ⑦
延々と、スフちゃんと「やった!」「やってない!」論争を続けているコーデルディアくん。なんか途中で議題変わってない?
シュネメスティラントロゥさんが2人の間に「いい加減にしなさい。神子様方の前よ!」と割って入るまで続きました。
なんでこんな時だけ好戦的なのよ、スフちゃん。やっぱり地球生活はストレスたまってるのかな?
我に返ったコーデルディアくんは、ただでさえ顔色の悪い表情をまっ白くしながら震え始めました。
「あ、あわわわわ……。ぼ、僕は、僕はななななんてこ、こことををををっ!?」
「?」
「すみませんっ‼ ごめんなさいっ‼ すみませんっ‼ ……ごめんなさいっ‼ ……すみませんっ‼ …………ごめんなさいっ‼ ………………ごめんなさいっ‼」
「ああっ!? ちょォっ、コォデルディアァ!?」
なんかあっけにとられて見送るしか出来なかったわ……。
コーデルディアくんってば、頭を下げたらその場から消えて数十メートル向こうに現れ。また頭を下げたら消えて現れを繰り返し、あっという間に見渡せる範囲内から姿を消してしまいました。
謝罪だけが聞こえて来て、本人がいないとかちょっとホラーっぽいわ。
「すみまァせんハルカ様。少々ォ口論に夢中にィなりすぎましたえ」
ペコペコと頭を下げるスフちゃんに「いいよいいよ」と手を振って、気にしてない旨を伝えておく。
「ごめんねスフちゃん」
「はえ?」
疑問符を浮かべるスフちゃんの頭を撫でた。
しーちゃんやしゅーちゃんも真似して、スフちゃんの体を撫でる。
「「ぷう」」
「は、はえっ!?」
意味も分からず撫でられていることに驚いたのか、スフちゃんがすっとんきょうな悲鳴をあげた。
「地球での生活にストレス感じてたんだよね」
「いえ、ハルカ様? 何かァ勘違いを……」
「いーからいーから撫でられてて」
撫でるついでにブラシも投入するよー。
何故か逃げたそうにしているスフちゃんの尻尾をしゅーちゃんが掴む。
ナイスよしゅーちゃん!
そうして毛がつやつやになる頃には、すっかり目を細めて気持ちよさそうなスフちゃんが出来上がりました。
「ふにゃ……にゃむ……」
「スフインクスがすっかり骨抜きにっ!? 何をしたんですかハルカ様?」
「ブラシで毛並みを整えただけなんだけど……」
あとはこのブラシのせいなのか。
シュネメスティラントロゥさんがスフちゃんの状態を見てドン引きしている。
このブラシ、さーちゃんに頼んだんだけど、ビロード布に包まれて桐箱に入った状態であたしの手元に届けられたんだよね。
幾らしたのか聞くのが怖い。見た目は装飾もない無骨なブラシなんだけどね。
いったいブラシに幾ら掛けたんですかさーちゃん!
某通販サイトで検索したら1万円超えるブラシがごろごろと……。