異世界へ⑥
コーデルディアくんの過去が暴れん坊だと聞いたんだけど、今のおどおどとしてる姿からはイコールで結べないなあ。
あたしが首を傾げるのを見たスフちゃんが、「こんなァですえ」と空中に映像を浮かべてくれた。
そこには服装は王様風カボチャパンツのまま、表情だけガラリと180度変わったコーデルディアくんが現れた。
「うわぁ……」
なんていうか雰囲気だけなら別人でした。
目は好戦的な三白眼だし、牙を剥き出しにして野獣のように笑っているし。
極め付けは始族や終族をボコボコにして積み重ねた山の上に仁王立ち。
王錫を山の上に突き立てて、マントを翻している。
成る程、確かに乱暴者に相応しい姿だわ。むしろ孤高の王って感じかも。
「わ、わっ‼ わわわわああああっっ!?」
その映像を見て、誰よりも慌てたのはコーデルディアくん自身だった。
あたしたちとの間にあった100メートル程の距離を一瞬でゼロにし、映像に両手を突っ込んで振り回す。
黒板に描かれたチョークを消すように、過去の自分の映像が掻き消えてしまう。素早い。
「なっなにするんですかっ‼ 人の黒歴史を晒すなんて酷いですよっスフインクス‼」
「私ィは事実を白日のもとォにしただけェですえ」
「せめて僕に許可はとって下さいと言ってるんですっ‼」
「神子様ァ方の要求にィは逆らえないィ我が身が恨ァめしい……」
「神子様方関係ないですよねっ!?」
前足を頬に当て、さめざめとうそ泣きをするスフちゃん。
それに詰め寄るコーデルディアくん、漫才のようだわ。
「普通に喋ってるし……」
さっきのしどろもどろは何だったのかっていう態度じゃないかしら。
神子という立場だから普通に接してくれないんだったら、少し悲しいかな。
「まあコーデルディアはルシフェル殿とのまとめ役争いに負けてから引きこもりになったんですよ」
シュネメスティラントロゥさんがそこに至った経緯を簡単に説明してくれた。ルシフェルさんは温和な見た目と違って強者だったのか。
「ほぼ、口車に乗せられて空回りしたコーデルディアが間抜けだったんですが」
違ったらしい。
なんでも知将に言いくるめられた脳筋のような有り様だったとか。
話を聞くだけだと黒いよルシフェルさん!?
「ぷう」
「うぅー」
あたしの腕の中でしーちゃんたちも頷いていた。やっぱり黒いんだあの人。
にしてもルシフェルさんに匹敵する強者だったコーデルディアくんが、なんであそこまで小心者なのかが謎なんだけど?
「そこはこの数百年、色々あったのですよ」
「……そうなんだ」
数百年と言われると首を突っ込む気にもならないね。こちらはまだ20年も生きていない小娘だしね。
再開します。
設定の一部と進行のネタを昨年の末に亡くなった身内に頼っていました。
ちょっと思い出してしまうので避けていたんですけれど、何時までも引きずっていても何も変わらないと思いました。相変わらずの亀更新ですが、頑張ります。