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異世界へ④

 オルトロスさんの背で赤ん坊二人のご飯が終わるころになって、スフちゃんが戻ってきた。


 ご飯を食べてる間も始族や終族の人たちが、代わる代わるやってきてはあたしたちに挨拶をしていきましたね。

 シュネメスティラントロゥさんがいうには、挨拶を返さなくても構わないんだそうです。


 だがしかし、柚木果狩家の一員として厳しい教育を受けてきたあたしにとって、挨拶をされたら挨拶を返す。というのは基本中の基本。条件反射として体に叩き込まれているのです。


 おかげであんまり自分の食事を味わっている暇がなかったなあ。


「でもなんか何人かの人たちが悲鳴をあげて逃げてったんだけど……」

「あれはまあ、仕方ありませんね」


 シュネメスティラントロゥさんがいうには、神子からの直接声を掛けられることは大仏にお参りに行ったら返答があるくらいに驚天動地なことだとか。


「は? 大仏!?」

「いいですね、大仏。私もいつか階位を上げ、あのような胴体を持ちたいものです」

「……はあ……」


 薄紫色のまんじゅうが頭の大仏は勘弁して貰いたいかな。

 終族の人にも大仏は観光名所として知られているのだろうか? 皆さん空が繋がってからいったい何をなさっているんでしょうね。



「ハァルカ様?」

「ああうん、ごめんなさいねスフちゃん」


 ちょこんとお座り姿勢のままあたしの言葉を待っていてくれたスフちゃんの頭を撫でる。


 同時に「ボクもボクも」と頭を差し出してくる赤ん坊二人の頭も撫でる。ほわほわ~となる二人の表情に、あたしが感極まって抱き締めるまでが一連の流れです。


 あたしが赤ん坊とじゃれあってる時にはもうオルトロスさんがスフちゃんの指示で動き始めていた。



 周りの風景……、全周囲360度エメラルドグリーンなので分かり難いけど、大小様々なサイコロ大陸が前から後ろへ流れていってる。


 中にはオルトロスさんでも横切るのに数分掛かるくらいの大きいのもあったりするし。


 でもそんな風景に目を奪われている暇はないのです、あたしには。


 隙あらば飛び立っていこうとするしゅーちゃんをとっ捕まえて「メッ」したり。

 隙あらばスフちゃんをもみくちゃにしようとするしーちゃんを「メッ」したり。


 やっぱり目が離せないのです。



 そのつど、シュネメスティラントロゥさんが汗だらだらで戦慄してるんだけど。別に躾だからねこれ。バチが当たるとかはないから!


 とにかく赤ん坊のイタズラを四回ほど止めた頃になって、オルトロスさんがスピードを落とし、ひとつのサイコロ大陸に体を横付けにしてくれました。


 おおー、ここが新天地……。


「って、デカッ!? 広っ!?」


 美麗な景色写真集みたいに山脈がそびえ立ち、裾野に森が広がり、その風景が逆さに映るどこまでも澄んだ湖まで備えた大陸がが。


 それでいて端から端まで視覚で捉えきれないくらい広い所。

 しかもサイコロ大陸のたった一面でしかないんだよね、これ。まあ、空がエメラルドグリーンなために湖自体もエメラルドグリーンに染まってる部分もあるけれども。


 オルトロスさんの背中からおっかなびっくり大地に足をつけて大きく伸びをする。

 もちろん赤ん坊も真似をする訳で。


「ぷぅ~~」

「う~~」


 翼も大きく広げてるけど、あれって神力のかたまりでしょ。意味あるのかな……。


「人工建築物なんてないし、空気は清々しいし、排ガスの匂いもないいい所だね」

「「「関心するところソコですか!?」ぇ」」


「え、風景にも感銘を受けてい……、んん?」


 なんか三つの声に突っ込まれて疑問に思いました。スフちゃんとシュネメスティラントロゥさんと、あとは誰?


 気付けばシュネメスティラントロゥさんの背後にもうひとり立っていました。


 格好はトランプのキングのような王様スタイルにカボチャパンツ。

 背丈はあたしより低く、顔は可愛いらしい金髪美少年。背中にあるのは始族の白い翼とサファイア色ロココ調の蝶の羽根。


 シュネメスティラントロゥさんの背後から半分だけ身体を出し、ガタガタ震えながら怯えた目でこちらを見ている。


 あたしなんかしましたっけ?


「ああ、ハルカ様~。こちらァこの島の管理をやってェるコーデルディアでェ」

「ははははじじじめめめままままし◎たたたた◇℃ば§らららら♪♂みみみ%┫※〒≧」


 なにを言ってるのかさっぱり分かりません。


「あー、コーデルディアは極度の怖がりでしてねー。けして悪気があるわけではないのですよ」


 シュネメスティラントロゥさんがヤレヤレと翼をすくめた。



「あ~う~!」

「ひぃっ!?」


 しかしそれが我慢ならなかったのか、しーちゃんが「ちゃんと喋れー!」的に叫んだ。


 そしたらコーデルディアくんは小さな悲鳴をあげてパッタリ倒れてしまいました。


 静まり返る場。


 おもむろに近付いたスフちゃんがコーデルディアくんの頬を前足でたしたしと突く。



「気絶しましたぇ」

「えええええーっ!?」


 『シュネメスティラントロゥさんがいうには』

 ……これはひどい文字数稼ぎ。



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