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異世界へ①

「遥様、こちらが約3日分の着替えになりますね」


 渕華さんがスーツケースを差し出してくれた。


 いやー、何がいれてあるかという説明を受けながら、物が収められていく過程を見てたんだけどね。ほんとにこれ着替え以外の小物やら、赤ん坊2人分のタオルや替えのオムツも入ってるの?


 渕華さんの片付け能力凄いわ。


 ……帰りに同じような収納が真似できるのかなぁ?

 とは言え、着替えやその他が足りなくなったらスフちゃんが取りに行ってくれるんだよね。




 今回異世界へ行くことになりました。


 主な理由のひとつは、離れを大幅に改装したいとのこと。

 元々は1人(使用人付き)で住むものだったので赤ん坊にも危なくないように、段差を減らしたりするとさーちゃんが言ってました。


 あともうひとつはあたしの体調が未だに安定しない事にあるんだよね。あちらの世界へ行って様子を見る意味合いもあるんだとか。


 本音は是非とも行ってみたいと思ってました!


「しーちゃん、あっちってどんな所?」

「うーうー」

「大きくて広い?」

「うぷぅ!」

「緑いっぱい? それは亀裂を見る限りそうなんでしょうね……」


 しーちゃんは両手だけじゃなくて翼まで大きく広げて。しゅーちゃんは手と翼で丸を描くように解説してくれる。

 二人の説明は抽象的すぎる上に大雑把なので分かり難いなぁ。確かに亀裂から見える向こうの空はエメラルドグリーンなんだけれど。



 日本から見る場合には西の亀裂とか、異世界の扉とかニュースで言われてます。でもこれ実際に何処にあるのかと言うと、日本よりやや離れた南西の海上。高さ8500メートル上空にあるそうです。


 亀裂開口部は地表へ向けて開いているんだそうです。でも宇宙側から人工衛星なり、軌道上の宇宙ステーションから見るとそこには海しか見えないんだそうですよ。


 討論番組で教授だとか科学者の人だとかが、二次元の影のようなものなんだとか言ってました。よくわからない上にしーちゃんたちの前だったので、すぐチャンネル変えちゃったけど。


 亀裂は当初から今に至るまでガラスを叩き割ったような鋭利なギザギザが残る形なのね。


「ハルカさまァが力の使い方を極めぇれば広げることも可能かと思いますえ」


 あれ以上広げるにはしゅーちゃんやしーちゃん並みの力が要るとか。

 ……それってつまり赤ん坊二人が最初にぶち破ったんじゃないのかな?


「どう思う、スフちゃん?」

「ひぇ、あわわわわわ」


 スフちゃんに聞いたらあたしのみならず、二人の視線も集中した。震え上がってさらに青くなるスフちゃん。


「は、はるぅかささま、こ、こういうことをは、わわたしににはこたええぇられませんんよっててぇにに」


 尻尾まで高速メトロノームかと思うくらいに震えてるから、これ以上は勘弁してあげよう。



 で、行くには迎えと護衛が来るというので荷物片手に庭で待っていたら、まず黒い翼の生えた薄紫色のまんじゅうがやって来ました。


「え、えーと確か……シュメール、なんとかさん」

「シュネメスティラントロゥ、ですわ。ハルカ様」

「うん、なんかごめんなさい」


「ぶぷう!」

「い、いいえ神子様。わ、私はただ訂正しただけですわっ!?」


 名前を間違えるなんてひどい話だよね。反省してしっかりと覚えろあたし。


 直ぐに謝ったらしゅーちゃんが翼をぶわっさーと広げて怒ってますポーズを取った。さらに潰れたような形で(たぶん)平伏するシュネメスティラントロゥさん。


 いやいやいや、今のはあたしに非があるから! しゅーちゃんは怒らなくていいんだから!

 しかし、どこに怒る要素があったんだろう?


「し、シュ、ネメス、ティラント、ローさんは護衛ですか? それとも迎え?」


 このおまんじゅうの上に乗るとか、ちょっと好奇心そそられるものがあるような、ないような。


 じー、とあたしの視線が自分の頭頂部に向いてるのが分かったシュネメスティラントロゥ(これであってるはず)さんがバッと後ずさった。


「い、いいえっ! 迎えは別に来ます!」


「あぅー!」


 姿勢を正した(ように見える)シュネメスティラントロゥさんが叫ぶように答えた直後、頭の上に乗っていたしーちゃんが大きく翼を広げて、あたしを覆う。


 ドバアァ―――ン!!


 よく判らず「え?」と呟いたのと、目の前にあった母屋の池が爆発したのがほぼ同時でした。


「これはまさか……」


 池が爆発する現象なんて、あたしの知る限りではただひとつだけ。


 しょわーと霧雨が降ってきてから気が付いて、慌てて離れの屋根の下へ駆け込んだ。静かにあたしたちを見送るつもりのような渕華さんと望さんが首を傾げる。


「遥様?」

「どうかなさいました?」

「もう! しーちゃん濡れちゃってない?」


 頭の上から翼を小さく畳んだしーちゃんを下ろす。


「うぷぅ」

「あれ、濡れてない?」


 わずかな水滴が前髪についてるくらいで、しーちゃんの体は濡れてない。


 なんとなくな気がして上を見上げれば、しーちゃんが居たところより更に高い位置に創樹が浮いていました。

 透明なドーム状の傘を広げて。


「うーうー」

「え、あたしが思ったら広げてた?」


 咄嗟の判断で動く創樹に唖然としますね。これもうアイテム生み出したりする機能だけのものじゃないでしょう。


「それぇだけハルカ様と深い繋がりが築けているぅんですえ」


 あたしの胸から離れたしゅーちゃんに尻尾掴まれたスフちゃんが嬉しそうに言う。


「スフインクス、あんたも愉快な立ち位置になってるのね……」

「シュネメスティラントロゥ、お前もハルカ様のぉ御側に控えてみれぇば実感するはずえ」


 なんかものスゴい感情のこもった固い口調で会話する子猫とおまんじゅう。


 スフちゃんは今の生活に不満があるんだろーか? 帰って来たらその辺りを踏まえて徹底的に話し合いをしよう。



「ぷーぷっ!」

「なーっ!」

「もう、そんなに急がなくてもいいじゃない」


 しゅーちゃんとしーちゃんがあたしの両腕にしがみついて翼を大きく広げると、浮遊感を感じさせないであたしの体がふわりと浮かぶ。


「あ! お待ちィ下さい!」

「神子様方!?」


 シュネメスティラントロゥさんとスフちゃんが慌ててあたしの影となるように頭上へ飛び出す。


 向かう先は柚木果狩邸の上空を覆ってなお余りある大きさの白いクジラ。オルトロスさんの背中だね。

これだけ書くのに4ヶ月もかかってしまいました。

やっと執筆を再開しますが、次がいつになるかは未定です。

待って下さった方、本当に申し訳ございません!

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