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初めての外出③

 なんか見ているこっちが気の毒そうになる程落ち込んだ須藤さんが「再度検討してまいります……」と会談を切り上げ、帰ってしまいました。


 なんかすみません、ホント。


「まさか『観光』も『貿易』も『大使館』も分からないなんて……。始族と終族には隔たりや国境なんてないのでしょうか?」

「う~?」


 さーちゃんがしゅーちゃんに困惑した顔で質問する。しゅーちゃんの答えは「こっきょうってなぁに?」だったりするんだけど。


 これは相互理解のために、一度はあっちの世界へ行ってみるしかないのかなぁ。


「それはともかく。会談どころか、相手が帰っちゃったんだけど……」

「でしたら仕方ありませんね」


 めっちゃ清々しい微笑みのさーちゃんである。最初っからこの展開を頭に入れていたに違いない。五十年も経つと腹黒さも深まるんだなぁ……。


「姉さん、何か?」

「いやいや、なんでもないよ」


「うぷっ!」

「あっ、こら、しゅーちゃん!」

「む~」


 ばさーっと黒い翼を広げたしゅーちゃんがくるみ着から抜け出し、空中に躍り出る。そしてそのままあたしの頭の上へ着陸。


 しーちゃんはくるみ着を纏ったまま、白い翼を室内いっぱいに広げて大きな欠伸をする。あたしの胸の中をひとり占領してご満悦なのか、いつもの安眠場所に顔をうずめて速攻寝てしまった。翼はしゅるしゅるとたたまれ、くるみ着から突き出るくらいに小さくなったけども。


 二人とも同時につぶやいたのが「たいくつ~」だし。


「あらら。まあ、もったほうかな?」


 やはりトーテームポール状態になるのは避けられなかったかー。もはや覚悟を決めるしかなさそうね。


 あたしの右斜め前に創樹が出現する。しゅーちゃんのくるみ着がふわりと浮き上がり、空中で綺麗にたたまれると、あたしのバッグに収まった。

 その様子を見て、さーちゃんが呆れたように呟く。


「もうそんな器用な真似を……」

「うん、ちょっとコツが掴めてきた。何かを生み出す以外にも、もうひとつの手みたいに使えるんだよね」


 色々やってる時、しーちゃんに『つながる』と言われたのを意識してみた結果こうなったんだけど。


 目を瞑って創樹に意識を向けると、なんとなく糸のように繋がってる感覚があるのよね。そこから手繰り寄せるような気持ちでいると、口にしなくても創樹で出来ることが見えてくるというか。言葉にしにくいけどそんな感じ。


「では姉さん。私は少々理事の方に顔を出してきますので、あまり騒ぎを起こさないで下さいね」

「えっ!? 一緒に回れないの?」

「え、ええまあ、色々ありまして……」

「いっしょ……に、まわれ、ないの……?」

「そ、そんな泣きそうな顔をなさらないで下さいっ!」


 意気消沈した顔で俯き、残念そうに呟く。「そーすれば先代様も一撃です!」と実演込みで力説したのは渕華さんだ。


 なるほどー。さーちゃんもあたしの演技にたじたじだわ。今後も何かあった時はこうやってみよう。


「とりあえず、こちらの用事が終わりましたら合流しますから」

「……うん」

「ね、姉さん。や、約束ですからね!」


 しょんぼりと遠い目をして答えると、さーちゃんはSPの一人(潤ちゃんの息子さん)にあたしを頼むと足早に部屋を出て行った。


「ぷっ!」

「んー? 大丈夫だよ、しゅーちゃん。困ったことはないから」


 しゅーちゃんにのほほんと返答し、足元のスフちゃんをちょいちょいと手招きすると、あたしの肩に飛び乗ってきた。


 この行為、最初は「恐れおおい」ってスフちゃんが拒否してたんだ。けど、しーちゃんが「ダメ、めいれい」と説得(と言う名の強制)してくれたのです。スフちゃんにも『この乳母にして、この神子有り』と諦めているみたいだけど。



「久しぶりの外出で室内ばかりじゃつまらないし。ちょっとは羽を伸ばさないとね」

「ぷー?」

「しゅーちゃんは飛ばなくていいから!」


 そうしてあたしたちは別邸を後にしました。



話が進まないですねえ。

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