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変わりました

「俺は終族(しゅうぞく)の代表でサタンと言う。宜しく頼まァ」

「私は始族(しぞく)の代表でルシフェルと申します。以後宜しくお願いします」

柚木果狩遥(ゆずきかがりはるか)です、宜しくお願い致します」



 赤毛でワイルドなお兄さんはサタンと名乗り、優しそうだけどちょっと堅物っぽいお兄さんはルシフェルと名乗った。赤ん坊を抱えているので不作法になっちゃうけど、あたしも自己紹介で軽く頭を下げた。沙霧はあたしを連れて来ただけで、別室に下がるそうだ。なんでも色々外に漏れるとマズい話とかがあるらしい。


「先ずはウチの()ンが世話になったな。礼は言っておくぜ」

「始族からもお礼を申し上げます。我等が神子が手を掛けさせてしまったようで申し訳ありません」


 もんの凄い対照的な二人だなあ、この人達。サタンさんは喋っていても熱燗傾けているし、ルシフェルさんはお膳を出されているにも関わらず見向きもしてない。それにしても迎えってお兄さん達だけなのか?


「あのー? この子達って御両親はいらっしゃらないのですか?」


 二人は目を丸くしてから、納得するように苦笑した。サタンさんが頭をガリガリ掻きながら説明してくれる。


「ああ、わりぃわりぃ。そうかこっちの人間には馴染みねぇよな。坊ン達はな、厳密には親とかはいねえんだわ」

「神子様達は我等始族とサタン等終族の象徴とも言えるべき存在です。その寿命は永遠に続き、絶えるなどと言う事は有り得ません。只、時折古い肉体を捨て、新しい心身となって生まれ変わるのです」


「ええと、じゃあこの子達、赤ん坊だけど成人なんですかー」

「見た目だけはな。中身は数億紀元以上の知識や経験が詰まった至上の存在だぜ。ちょっとでも育て方間違えると、こんな星なんざァ……ボンッ! と往くぜ」

「ええええっ!?」

「中身はそうだとしても心身、性格や心の在り方等は無に返されてしまいますから。また我等で一から育て上げる必要があります。その相談をしている最中に下部の方で(いさか)いになり、全体的な戦闘に勃発したのはお恥ずかしいとしか言えません」

「じゃあ次元の壁抜いたって言うのは、教育方針の行き違い?」

「そうなりますね」

「すまん」


 涼しい顔で流すルシフェルさんと顔の前で手を立てて謝るサタンさん。義理堅いのかそうでないのか微妙な所。だからと言って、教育方針の行き違いから戦争で壁をぶち抜くって、安普請のアパートか! 言い方がすっげー軽すぎる……。


 不意に腕の中の赤ん坊がふわりと浮かび上がって、サタンさんとルシフェルさんの方へ空中を移動する。二人の腕に収まった赤ん坊を診ているようなんだけど、サタンさん? 足持ってひっくり返すのはどうかと思います。びっくりしたあたしは、つい攫うようにサタンさんから赤ん坊を引ったくってしまう。


「何してるんです! 可哀想じゃないですか!」

「いやこれがふつーの扱い方で、毎度の事だぜ。なあ?」

「そんな育て方をしてるから、終族の神子は毎回毎回粗野になるんですよ。偶には育児係を替えたら如何ですか」

「おー、そう来るか。しかしなあ、ウチの連中にはお前等ントコみたいな繊細な奴らなんかおらんしなあ……」


 お酒をぐいーっと呑みながら彷徨うサタンさんの目が私で停止する。……超絶に嫌な予感がするんだけど。


「そか、だったら嬢ちゃん。アンタが育ててみねぇか?」

「うそおおぉおおっ!」


 うわやっぱりこっち来た! 一族の未来を左右する子供を一介の女子学生に任せるなんて正気かっ!?


「何を考えているんですかサタン! 今後も我等の行く末を左右するんですよ!」


 そだそだ、もっと言ってやって下さい、ルシフェルさん。


「何言ってんだルシフェル。偶には俺達の常識から離れた育て方をして貰えりゃあ、俺らの未来もまた違った明るいものになるってえ寸法よぉ」

「……成る程、そう言った捉え方もありますね」


 うわー、論破されてどうするんですか。もっと食い下がったらどうなんですっ!?


「それに、普通の人間が此処まで神子に接していて何の影響も受けないと言うのは不自然です」

「そうだなァ、さっきからそこが気になってたんだが。嬢ちゃん、アンタ何モンだ?」

「ええと、たぶんふつーの人間かと思います、けど……。ん?」




 腕の中で赤ん坊が身じろぎしたので見下ろしたあたしの視線と、ぱっちり開いた黒瞳とがぴったり合う。無言無表情でキョトンとしていた終族の赤ん坊はにっこりと笑うと、背中の黒翼を広げてぶわっと風を巻き上げながら、あたしの腕の中から飛び上がった。


「おう、起きたか坊ン」

「此方も目覚めたようですね」


 ルシフェルさんの腕からも金髪の赤ん坊が浮かび上がって滞空する。二人の頭上で合流した赤ん坊は、うー、とか、あぶー、とか言いながら手を叩きあたしを指差す。いや、なんか会話みたいに見えているんだけど。ルシフェルさんの顔色が劇的に青ざめているんだけど。


「ぶっ……ぶわはははははははっ! す、すげーぜ坊ン! あっはははははははははっ、ひーひー、ぶわははははははは、は、腹痛ェッ、うわはははははははっ……」


 いきなりサタンさんが笑い出した。畳に転がって息も絶え絶えになって尚、笑いが収まらないサタンさん。何がそんなに可笑しいんだろう? 逆に全身真っ白から真っ青に変色したルシフェルさん。服まで変わるのか、器用ですね。


 赤ん坊二人はあたしの方に飛んでくると、終族の子が頭の上に乗っかって、始族の子が膝の上にポテンと落ちてくる。着物の帯を掴むと「あーうー」と笑顔をあたしに向けてきた。


「ん? 流石に言葉は通じないなあ。あ、こら! キミは頭の上を這い回らないで! (かんざし)とかあるから危ないでしょ」


 あ、そうだ。名前あるのかな? 呼び名とかスンゴイ長かったりするのかな。あと服もないと裸じゃあ可哀想だよね。


「あの、この子達のな、……まえ……」


 顔を上げたら目と鼻の先にお二人の顔が! うわー近い近い! 離れて、はーなーれーてえー!


「とりあえずハルカっつったか? 最初に謝っておく、スマン」

「はいぃィ?」

「謝って済む問題ではありませんが、神子達が懐いているのでしたら育児係としては、申し分のない人材でしょう」


 あたしの肩に両側からポンと手を置いて。なんとなく、昔の主治医の人が「最善を尽くします」と言ったシュチエーションそっくりだ。え? ここあたし諦めるしかない場面?


「え、えーと、は、話が見えません……」


「なんでも坊ン達がお前さんを目覚めさせるのに神の種酒(ソーマ)を飲ませたらしくてな」

「我等始族や終族よりも貴女の方が神子達に近い存在になっています」

「そ、そーまって何ですか?」


 あたしの疑問に二人のお兄さんが顔を見合わせて頷く。答えてくれたのはニンマリとした笑みを浮かべたサタンさんだった。


「手っ取り早く言っちまえば、……ハルカ、お前さんは不老不死になった」












「えええええええええええええええええええええっッ!!!」



 とりあえず書きたい所までは書く事が出来たので、メインの活動に移ります。

 また気が向いたらこちらは更新します。


 ※1紀元=1億年程

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