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散歩道・本家②



 本屋敷に続く渡り廊下。ここは下に、下生えの熊笹に隠れて小川が流れています。これは本屋敷庭にある池からなんだけど、このまま裏を回ってまた表門まで出て、麓まで続く階段脇を流れて行ってるの。


 小さい時は御婆様に教えて貰った笹舟を浮かべて、さーちゃんとどっちの笹舟が早く表門まで辿り着くか、って遊んでたね。静流ちゃんの代はそういう遊びはしなかったのかな? また会った時に聞いてみよう。


「ぷぃぷ?」

「うん、ちょっと懐かしくてね」


 ちょろちょろ流れている小川の流れを見てたら、しゅーちゃんに心配されちゃった。頭に乗ったしーちゃんが、同じように下を覗き込んでいる。落ちる……ことはないだろうけど、危うい感じにも見えるから止めさせよう。


「二人共もう少し大きくなったら、ここでの遊びを教えてあげるね」

「「う?」」

「泳ぐんでっしゃろか?」


 スフちゃんも一緒になって首を傾げた。ぷっ、と望さんが噴き出して肩を震わせてる。あたしの部屋なら大っぴらに笑えるんだけど、本家の人たちって礼儀作法五月蠅いからねー。「使用人が慎ましく出来なくてどうしますか」とか怒られるの。


 昔はよく見たけど、今はどうだろうね?


 渡り廊下を終えて本屋敷の表側から左回りに行こうか、裏から右回りに行こうか迷う。裏庭はたしか、あたしの記憶のままだと枯れ山水になってたけど……。


「望さん望さん」

「はい、どうしました?」

「裏庭ってまだ枯れ山水がありますか?」

「はい、御婆様の話によると、庭のレイアウトは五十年前と大して違いはないそうです」


 裏庭の枯れ山水は結構好きだったので、先にそっちから回ろうか。なにやら先導役になって前に出たスフちゃんに「左ね」と告げてから進む。



 数歩も行かない内に、前からお膳を重ねて持った使用人の女性が廊下の角を曲がってきた。あたしたちを見るなり盛大に顔を引きつらせて外側の端に寄り、自分の左側に重ねたお膳を置くと、床に擦り付けるように頭を下げる。


 いやいやいや、ちょっと待ってナニソノ反応?! 傷付くわ~。って言うか、そーゆー礼は当主とか先代様とか用でしょう。前はちょっと寄って会釈するくらいだったのにどうなってんの?


「望さん?」

「はい」

「本家であたしの扱いってどうなってるんです?」

「実に今のようなかと……」

「ぷい」

「むぁ」


 「偉いの」じゃありません。

 偉くないから、始族とか終族とかじゃないからここは。本家直系とすれば偉いかもだけど、本家に対して何の貢献もしてないよね、あたしは……。




 本家の屋敷は平安時代の貴族のお屋敷みたいなのをイメージしてもらえれば。


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