猫、帰る?
使用人がダウンしちゃいましたので、自分でお茶を用意する。お茶請けがどこにあるか分からないので、飲み物だけですが。でもサタンさんにはお酒の方がいいのかな?
「うぷー」
「むい」
「ありゃ?」
お茶持って部屋まで戻ってみれば、二人がクマぬいぐるみを盾にサタンさんを警戒してた。何かの遊び? スフちゃんは縁側で、離れ以外にサタンさんの影響が及ばないように結界を張っているらしい。ご苦労様ですよ。
「はい、サタンさん。お茶ですけど……」
「おお、すまねぇなハルカ」
「お酒が何処にあるか分からないので、心苦しいのですが」
「ハルカの中で俺の認識ってどうなってんだよ?」
笑って誤魔化しておく。そんな認識なんて、ねぇ?
「なんの遊び?」
「ぷいっ」
「あーぶ」
仁王立ちするクマぬいぐるみの背に隠れたしゅーちゃんとしーちゃんが首を横に振る。否定? じゃあ遊びと違うってことかな?
「どうかしたんですか?」
「いや、たまには帰郷しねえか、って聞いたんだけどな。見事に拒絶されちまったぜ」
HAHAHAHAHA! とかアメコミみたいな笑い方しないでください。違和感……は無いけど、逆に怪しさ抜群ですよ。でも、そっか。帰郷かあ……。そうだよね、しゅーちゃんもしーちゃんも本来のお家があるもんね。
「ぷーぷー!」
「あーむぃー!」
「ってわっ!?」
感慨にふけってたら、翼を開いた二人に飛びつかれました。浴衣をしっかりと掴んで「いやいや」するみたいに首を振ってる。あははっ、これは故郷より好かれているところに嬉しさを感じていいのかなぁ?
「チッ、フラレちまったようだな。ずいぶんと懐かれたモンじゃねえか」
ドスの効いた声色で楽しそうな顔しないで下さい。どこぞの悪人みたいですから。まあ、強引に連れ戻しに来たって感じじゃないですねー。
「おっと、忘れてたぜ。ほれ、ハルカ」
前後の脈絡もなく、サタンさんがポイと何かを放り投げる。あたしが慌ててキャッチすると、それはカチューシャだった。右側に黒い翼、左側に白い翼を模したアクセサリーみたいなのがくっついてる。羽根は本物みたいにふわふわだね。
「なんですか、これ」
「ここではガン見は一聞にしかずと言うんだったか? つけてみろや」
「゛百聞は一見にしかず゛ですよ」
激しく間違ってますってば。特に気にせず、言われるがままに頭に着ける。
「ぷーぷぃ」
「半分おそろい? 半分ずつね…………、あれ?」
あたしの右側を指差したしゅーちゃんが何となくそう言ったような気が……。
「しーちゃんしーちゃん、これどう思う?」
「むーぷー」
「両方白ければ良いのに?」
おー。なに言ってるか判る。意訳って程度には分かるという感じだけど。 なんという素敵アイテムか。感動して二人をぎゅーっと抱き締める。あ、苦しい? あはは、ごめんね。
「どうだ?」
「すごく嬉しいです。ありがとうございます!」
「そうか、よし。じゃあスフインクスが居なくても大丈夫だな」
「……え?」
スフちゃんの食事は角砂糖山盛り。