ワイルド襲来
あれから、なんか間を置かず静流ちゃんが来て、一日一教科スパルタテスト方式があああぁ~!
国語と歴史なんか二時間教科書熟読のみでいきなりテストですよ、テスト……。え?『教科書を読めば答えは書いてある』? それは秀才の屁理屈って言うのよ!
あぅあぅ、泣くなうぐいす田村麻呂、白紙から始める遣唐使、人混み行列鳳凰堂、以後予算増える種子島、と。んなに沢山覚えられませんってば……。は? 物理と化学? なにそれ美味しいの?
しかもなんか採点した後に眉をひそめてふかぁ~い溜め息を吐くのは何っ!? 明かされてないけど、そんなに酷い点数なの?
一通り済ませると真っ白さ……。ふふふ、テストと言うものはこんな短期間で詰め込むものじゃないと思うよ、絶対。
「むーうー」
「ぷーくー」
「はいはい……」
机に突っ伏してダレていると、しーちゃんとしゅーちゃんが普段着の裾を引っ張って、構って攻撃を。迂闊に潰れてもいられないのだ。世のお母さんも大変だと身にしみる思いですよ。現在進行中で他人事ではないけどね!
両手を繋いで「せっせっせー」とかやってたら、ふと縁側までハイハイしていったしゅーちゃんが、じーっと空を見上げていた。
「しゅーちゃん」
「むぃ」
あたしが呼ぶのとしーちゃんが「お前の番だよー」みたいに翼でおいでおいでをする。……器用な翼だよね、いつ見ても。
「しゅうちゃーん」
「ぷ」
もう一度呼ぶと振り向いてくれるだけで、また空を見上げちゃった。空に何かあるのかな?
「にぃ?!」
しーちゃんを抱きかかえて縁側まで出ると、しゅーちゃんが見上げている方向は西。例の空が割れてエメラルドグリーンが広がる場所だ。同じくあたしの足元まで出て来たスフちゃんが、翼と毛を逆立っててぴょんと跳ねた。
「どうしたのスフちゃん?」
「こ、この波動は……」
「?」
「むぷ!」
一瞬空から視線を外し、しーちゃんが上げた声に視線を空に向けようとした瞬間、爆発的に目も開けてられないような轟風が吹き荒れました。
「きゃっ!?」
「「むぷいっ!!」」
二人がなんかしたらしくそよ風に変わったけど。びっくりしt……。
「…………れ?」
「よお坊ン、ハルカも元気そうじゃねぇか」
「ぷーぷぃっ!」
十二枚の真っ黒い翼を広げたサタンさんが立っていた。あの一瞬で点も見えないような空の向こうからここまで来たみたいね。どんなスピードですかっ!?
相っ変わらず全身黒レザーにメタルな人だなあ。ギター持たせたら、ただのミュージシャンにしか見えん。
「あぁん? 別にヘーキじゃねえか」
「ぷーぶー!」
「無事だったんだから固いこたァ言うなよ。なぁハルカ?」
「すみません。会話の主軸すら分かりません」
しゅーちゃんをひょいと抱き上げて、高い高いをしながら話してる。意味の分からない会話をあたしに振らないで下さい。お茶を頼もうと後ろを振り返ったら、渕華さんが目を回して倒れていた。……さっきの暴風の影響かな?
「じゃないっ! ちょっ、渕華さーん!」
慌てて駆け寄って助け起こすも、本人は「ふにゃふにゃ」言うくらいで反応がおかしい。
「あ、ワリィ。それ俺の影響だ」
「なにそれええええっ!?」
スフちゃんが言うには、サタンさんが持つ高密度の神力みたいなものが人体に悪影響を及ぼして、一時的に酒に酔ったような状態になっているそうだ。
「……つまり、急性アルコール中毒!?」
「害は無いとですえ」
「ちょっとサタンさん、その波動を収めてーっ!」
「だが断る!」
「そんな酷ぉい」
「いえ、あの状態でサタンの旦那は最小になっとるとですわ」
「普段どんだけの毒性よっ?!」
厨房覗いたら望さんも目を回していたんで、本家に隔離させておこう。あっちはひっくり返ってる人が居なかったので、使用人の人達に渕華さんと望さんを託すと、離れに接近禁止令を出しておいた。
年号云々はうろ覚えですが、間違っていても主人公の認識と言うことで訂正しません。歴史は赤点だった作者です。
鎌倉幕府が今は違うと言うので削除しました。