勉強をしよう
うーん、ようやっと本題に入れるわ。今回わざわざ静流ちゃんに来て貰った理由は勉強のため。あたし自身勉強はそんな好きじゃないんだけど、五十年後の勉強方法とか興味あるじゃない? そんな訳で頼んだんだけど、静流ちゃんも習い事とかあるので、あたしの所へ頻繁に顔を出す訳にもいかないし。
しかし、五十年経っても勉強方法は変わらないのね。教科書とノート、やはり書いて覚えろと言うことかー。
でも教科書が薄い……。紙っていうか、セロファンみたいなペラッペラで極薄な紙? 昔より重さも厚さも半分だー。
あたしの最終学歴は高等部二年頭なので、何処まで習ったか分かり易い数学を教えて貰うことに。ノートは前もって望さんが用意してくれました。しーちゃんとしゅーちゃんも欲しがったので、同じモノを。
ちなみに最初は、書くものが欲しいのかとあたしも望さんも渕華さんも思ってたんですよ。スケッチブックとクレヨンをあげたら、ペイッと放り投げられました。それでべそをかきはじめたんで、まったく同じノートを渡したら喜んでくれました。こ、こえええ……。
あたしがノート広げて静流ちゃんと勉強始めても、一度こちらを見に来てノートとあたしの顔を交互に見たら、また遊びに戻っちゃった。同じ物を欲しがったからといっても、書きものをするためじゃないらしいです。何に使うのか疑問が残りますね。
教わりながら色々聞いたんだけど、静流ちゃんの学校は中高一貫になってて、前後学期に変わっているそうな。だから静流ちゃんは今五年生であると。
「とりあえず、もう少し進んだら前期の中間テストでもやりましょう」
「ええー、もう?」
「私も一応、お婆様に報告の義務がありますので。いつか通る道と諦めて下さい」
又姪がスパルタでごわす。神様たぁすけてえええええっ!
「うぅー、むいっ!」
ぐわしっ!
「…………………」
「…………………」
「………………は、遥、さん」
「…………うん、なぁに?」
「……私、どうなるんでしょうか……」
「ええと……」
ありのままに今起こった事を話すわ。あたしが心の叫びをあげた途端に、しーちゃん操る茶色っぽいクマぬいぐるみが両手で静流ちゃんの頭を後ろからがっちり掴みました。
「こ、こらーしーちゃん。静流ちゃんはあたしの先生なんだから邪魔をしちゃだめだよー」
注意したらぽかっと離しましたが、いったいどーしたのやら……。
「むーむっ!」
「助けを求められた気がするーっちゅう、言うとりますえ」
「はい?」
すかさず間に入ったスフちゃんが通訳してくれた。当人は何故か黒っぽいクマぬいぐるみに抱えられている。プロレスごっこじゃなかったの?
「はっ!? もしかしてあたしの心の叫びを察知、し……て……」
「はぁ~るぅ~かぁ~さぁ~んんん」
怖いっ! 怖いよ、静流ちゃん! 目を三角にするなんて、常人には無理だから!
「何を叫んだんですかぁ?」
「や、静流ちゃんがね、スパルタっぽくてね、そいで、つい、あうたーごっとにヘルプミー、……と」
「…………」
「…………」
ち、沈黙が痛いっ!?
「分かりました」
「あ、分かってくれた?」
「中間テストをすっ飛ばしまして、前期末テストをやりましょう!」
「ええええええええっ!?」
「スパルタなら当然ですよね!」
「うわあああん! ごめんなさい静流ちゃん、ちょっ、勘弁して!」
「大丈夫ですよ」
「ゑ?」
「ほんの三十ページぐらいですから」
「上げて落とすっ?!」
くち……、じゃなくて、心の叫びは災いの元。しーちゃんの馬鹿ああああああっ!
「むー?」(←聞こえていない)
高校二年って何習ったのか、もう記憶にない……。