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エピソード7

7


 マットレスの上に破れた敷布団。そこにシーツをしいている万年床の上に、太った男が寝そべっている。


 枕元には古いパソコンがあり、無言で男は寝そべりながら物語を書いていた。


 メシアはそこがユニバース2と呼ばれる現実の宇宙、物語の原点であることを、自然と理解した。


 目の前の太った男こそが、自分を形作ったということも、なんとなく理解していた。


「こうして目の前で見ると、君は大きいんだな。イメージとしては、ある映画の主人公に似せて書いているのだが」


 太った男はほくそ笑み、メシアを上から下に向かって見つめていた。


「僕を作ったということは、すべての創造主が君であるということを意味しているが、本当にそうなのか」


 品祖な恰好と膨れ上がった腹を見て、メシアは疑わしい目つきで男を見やった。


 事実はしかし変わることはない。メシアが見るもの、感じるもの、そのすべてがこの男によって生み出されているのだ。


「僕がすべてを破壊すれば、君も消えるのか」


 素朴な質問に、太った男は頷いた。


「もし君が私を刃物で刺し殺したとしよう。すると世界、物語は生まれなくなり、朽ち果てた世界だけが残ることになる。君もここから動くことができなくなるということだ」


 ひょうひょうと感情があるのかないのかわからない男を見つめ、メシアはすべての物語、音楽、映像コンテンツを破壊できる自分の力が本物なのか、目の前の男を見て、疑わしくなった。


「君の設定は最強。陳腐な言葉だが救世主である君は最強なんだ。それ以上にもなれる可能性があるが、それは私の力量というところだな」


 太った男は軽く口に笑みを浮かべた。


 すると部屋は突如として壁も天井も見えない巨大な空間となり、そこに多くのあらゆる種族が溢れ始めた。


「彼らは読者。君の物語を読んでいる、知っている者たちだ。過去、現在、未来。私は君を永劫の存在にしたいと願っている」


 読者たちはメシアを見ると、様々な表情があった。中には微笑みもあれば、怒りさえ感じる顔もある。


「この話は長いんだよ」


「これでSFって言ってるの?」


「設定が複雑すぎてわからないよ」


「壮大にすればいいってもんでもないだろう」


 読者の様々な意見がメシアの耳に刺さる。


 読者ばかりではない。中には編集者もいるようだ。


「君がいる物語は小説として破綻している。読者がついていけない。一冊の本とするには、長すぎる。それに設定が変わりすぎて、最初と違う」 


それでも優しい声が聞こえてきた。


「すべてをお願いします」


 読者の1人、黒人の女性がそういって、メシアの背中を押した。


「さぁ、話の時間は終わりだ。君は戦いの真っ最中だろ。帰って、すべてを守れ。君はまだまだ強く、巨大化できる」


 太った男がそういった刹那、メシアの意識は一瞬失われ、戻ったのはあの化け物と戦い続けているマリア率いる怪物たちだった。


8へ続く

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