エピソード6
6
メシアが気づいた時、そのにマリアの姿はなかった。
先のない無限に進化を続ける機械となったマリアを、一瞬だがこの手に戻したのに、また消えてしまった。メシアは呆然としていた。
「オルト、そこにいるのか?」
気配でメシアは気づいた。
眼前には先の見えない建物が広がり、上を見ても、下を見ても、前後ろを見ても延々と続く本棚が、白い壁面が貴重の、金で装飾された空間が広がっていた。
「僕の物語がここにあるのか?」
メシアは無表情で問いかける。
すると2メートル程の光の球体が現れ、メシアの脳内に告げた。
「ここはすべて貴方の物語。終わりなどない」
預言者の言葉に、気づいてはいたが、こうして具体的に見せられると、自分の旅がまだ半ばであることを実感した。
「そしてこちらが他の物語」
そう言葉が響いた刹那、本棚はがらりと変わり、別の本が延々と並んでいた。
「ここに並ぶ書物の中身は現実。書物だけではない。データ、ディスク、冊子、他のすべての物語、音楽、テキストは君以外の現実なのだよ。あらゆる人物、あらゆる企業、団体が作り出した世界。あるいは生命体、非生命体が想像した可能性、非可能性がすべてそろい、増え続けけている」
そういうと1つの部屋が現れた。
壁が1つない部屋へメシアが歩み入ると、壁は閉ざされ、そこにはゲーム、漫画、コミックス、ディスク、フロッピーなどありとあらゆる媒体があった。
「君は今、全てを破壊できる状態にいる。例え、Ωという無限の到達点の存在が居ようと、その本のページを破って捨てれば、君はその存在よりも強者となる」
部屋の本棚から一冊の本を取り出し、表紙をめくると、凄まじい情報量がメシアの眼に流れ込んでくる。普通の人間ならば狂ってしまいほどの情報量だ。
ここに物語のすべての一端がある。そう感じたメシアは確かに、邪心をもってこの部屋に入り、本を破る、データを破壊する、ディスクを割るなど、破壊行為を行ったら最後、物語は消えてしまう。例えその物語の中で最強であったとしても、防ぐことはできないだろう。
「これが世界のすべて」
メシアがそう呟いた時、頭の中で預言者の声が響く。
「違う。そこの扉を開いてみなさい」
そこには気の木目のガラをした、細長いすりガラスの入った、古いデザインと引き戸があった。
メシア躊躇する気持ちもなく、取ってに手をかけ、扉をスライドさせた。
7へ続く




