僕らの物語〜シェル編/静寂の森〜
レン「コキアさんが攫われた場所、静寂の森という場所みたいですね」
シェル「静寂の森か、こいつはちとやっかいだな」
レン「知ってるんですか?」
シェル「ああ、静寂の森って言うと聞こえはいいが別名こうも呼ばれてる"自殺の聖地"」
レン「その森で自殺する人が多いって事ですか?」
シェル「いや、確かに自殺目的には変わりないんだけどな、木が人を吸収するんだ」
メリサ「木が人を??」
シェル「木に触れると一瞬で体ごと消える、
木の養分として吸収されるって話だ、
痛くも痒くもないらしい、
死を望む人が唯一苦しまずに死ね方法だってな」
メリサ「ちょっとしたホラーだね」
レン「しかし、それほどの強力な力を持つ場所ならば壊そうとする人もいそうなものですけどね」
シェル「それがある境界線があってな、そこから先へは死を望んでる人しか入れないんだと、
つまりぶっ壊してやろうなんて考えてる時点で中には入れない訳」
レン「なるほど」
シェル「それに苦しむ人を無理矢理生かそうとするのはエゴじゃないかって意見も多いみたいでな、
壊さなくていいと言う意見も多いらしい」
レン「確かに、人を生かすのはある意味でエゴですからね」
シェル「まぁ、俺も命だから大事だ、なんて綺麗事言うつもりはないが・・・フローナどうかしたか?」
その時、俯いて考え事をしているフローナにシェルが気付く。
フローナ「私も、死にたいって思った事があるから
その時に静寂の森があったら足を運んでたんだろうなって何だか感慨深くて・・・」
シェル「・・・フローナ、辛くても生きててくれてありがとな、
そのおかげで今こうやってフローナと楽しい旅できてるんだからな」
そう言ってシェルはフローナの頭をポンポンする。
フローナ「うん・・・」
メリサ「フローナちゃんはい、ティッシュ」
フローナ「ありがとうございますメリサさん、ずびっ、ちーん!」
メリサ「まぁでも隊長といたら死にたくはならないよねぇ」
レン「そうですね、我々は隊長の面倒見るので精一杯で死んでる暇ないですからね」
シェル「褒められちゃった!」
レン「褒めてません」
レン「とは言え・・・このままでは結界通れませんね」
メリサ「あ!一人だけ適任がいるじゃないか」
レン「それってまさか・・・」
フローナ「明水さん?」
明水。27歳。
少し前にフローナが貧血で倒れそうになっているところを助けてくれた人だ。
落ち着いた口調で心優しき僧侶だが
結界を解く刀を隠し持っている。
明水「え、静寂の森に?あの場所は危険ですよ!
いくら強いあなた方であっても・・・・」
シェル「それでも行かなきゃいけねーんだ、仲間が連れ去れちまってる以上はな」
明水「そうでしたか・・・分かりました、協力しましょう、ですがその前にミサンガつけて下さい」
シェル「ミサンガ?」
明水「はい、このミサンガは私の力を込めて作ったもの、あなた方を守ってくれますから」
シェル「ありがとう」
明水はすぐに隠し場所から刀を持ってきた。
そして静寂の森に行き、結界を切った。
ザッ!!
明水「早く、長くは持ちません」
シェル「おー!明水ありがとな!絶対戻って来るからそん時はまたよろしく!」
明水「はい、くれぐれもお気をつけて」
結界を開けた穴が閉まった後、明水は近くの木の下に胡座をかいた。
皆んなが帰ってくるまでここで祈り続けるつもりらしい。
こうして明水の力で静寂の森の中へ入ったシェル達は攫われたコキアを取り戻す為、更に森の奥へと進んだ。
結果の中に入ると異質な空気が漂っていた。
メリサ「何か辛気臭い森だね」
レン「まぁ、なんと言っても自殺の森ですからねぇ」
と、その時。
シェル「くんくん・・・コキアの匂いがする、こっちからだ」
匂いを嗅ぎ付けるや否やシェルが歩き出す。
メリサ「ちょっと、待っておくれよ隊長」
レン「我々も行きましょう」
メリサ「だね」
フローナも静かに頷く。
シェル「ちょっと待った、人がいる」
フローナ「あ、ほんとだ」
しばらく歩いているとそこには20代後半くらいの男性が一人、木の下に立っていた。
他の木よりも一回り大きな木で、その木の周りだけ草むらになっている。
辺りを見渡すと他にも似たような大きな木がいくつかあった。
男性は何やらブツブツと言った後、木に手を当てた。
すると・・・。
ピカッ!!
木が光ったとほとんど同時に男性の体も光り始め、あっという間に光に包まれてしまった。
そしてほんの数秒後、男性の体はすうっと消えてしまった。
レン「!!」
フローナ「わっ!?男の人消えちゃったよ!?」
メリサ「隊長が聞いた話本当だったんだね」
シェル「俺も初めて見たが・・・マジで消えちまいやがった・・・」
男性が消えると木の光も消える。
そこには木が静かに立っているだけだ。
レン「とりあえず先に進みます?」
シェル「いや、その必要は無くなった」
レン「え?」
シェル「出てきなよ」
ガサッ!!
近くの草むらと木の後ろから出てきたのはツインテールをしてワンピースを着た8歳くらいの小さな女の子だ。
フローナ「え」
メリサ「こ、子ども!?」
「お兄ちゃん達も死のうとしてる人達?」
メリサ「いや、僕らは死のうとはしてないよ」
フローナ「私達、仲間を助けに来たの」
シェル「君知らない?」
「あー、コキアって子?」
メリサ「え、何で名前を知ってるのさ・・・」
レン"隊長が気配に気付けたという事はこの子は生きているのか、
まぁ、幽霊の類だったら今頃騒ぎまくってるでしょうけど・・・
それにしても、生きててこの森にいるということはこの子も自殺志願者か?
だが、そんな風にはとても見えないな"
「ふーん、でもだめ、コキア君は私達の友達になったの、だから返してあげない」
シェル「俺らの大事な仲間なんだ、返してくれないかな?」
「だったら力ずくで取り返したら?お兄ちゃん、腕力得意でしょ?半妖さんみたいだし」
シェル「返す気はないみたいだね」
メリサ「あのねぇ、隊長はこれでも普通の人間の10倍は強いんだよ?」
レン"妙だな、半妖で大柄な隊長を見ても少しも動揺する気配がない、大人でさえたじろぐというのに何故こんな相手を挑発するようなことを?・・・とても戦えるような力を持っているようには見えないが・・・"
シェル「・・・お前ら下がってろ」
メリサ「え?隊長、まさか本気で行く気!?」
フローナ「シェル、無茶しないでね」
メリサ「え?何でフローナちゃん隊長の心配を・・・?」
ダダダッ!!
シェルが女の子に向かって走り出した。
全速力ではないものの、これだけ大柄な男が自分目掛けて走って来たら腰を抜かしてしまいそうなものだが、
女の子は少しも怯む様子もなく突っ立ったままだ。
タンッ!!
シェルが女の子に向かって飛んだ。
あと数センチで肩に手が届く、瞬間。
「ニッ」
シェル「!?」
シェルの体がいきなり衝撃を食らったかのように後ろに吹き飛ばされ、木に激突してしまった。
バンッ!!ドサッ・・・。
シェル「ぐっ、ゲホゲホ!!」
シェルが膝をつく。
レン「隊長!!・・・あの隊長が膝をつくなんて・・・」
メリサ「ちょっ、隊長嘘だろ?そんな子どもに何負けてんのさ!」
フローナ「今、あの子手使ってなかった」
レン「ええ・・・あの子、ただの子どもじゃありませんね」
シェル"何だ?あの子に触れる直前、黒いモヤみたいなものが周りに見えた、
そう思った時には体が吹き飛ばされてた・・・これってもしかして・・・"
シェル「念か」
「ピンポーン!当たり〜!さっすが半妖のお兄ちゃんだね」
メリサ「信じられない、あの隊長がこんなあっさり・・・」
「この森ではね、死にたいという想いだけが力を持つ場所なの、だから半妖のお兄ちゃん達みたいに今を楽しんでる人達はここでは無力なんだよ」
フローナ「ってことは君も死にたくてここに来たの?」
「うん、そうだよ」
シェル「一つ聞いていい?」
「なーに?」
シェル「死にたいと思ってここに来たならどうして木の力を使わないでいるの?
仮に死にたくないって思ってて止まってるとしたら
これだけの力は出ないはずだし」
「ふーん、半妖のお兄ちゃん、おバカな感じの人かと思ってたけど意外と頭いいんだね」
シェル「あのねぇ・・・」
「まぁでも教えてあげる、"私達"はね、この森に住んでるの」
シェル「私達ってコキアのことか?」
「違うよ」
シェル「なるほど、つまり、君と似たような子が何人かいるわけだ」
「そうよ」
レン「隊長、どうするんです?力で勝てないのなら一度戻って明水さんに相談を・・・」
シェル「いや、一度出たら次また入れるか確証はない、今どうにかするしかないよ」
「ふーん、半妖のお兄ちゃんって本当に頭いいんだね、
でも、どんな技を使ったって私には勝てな・・・」
その時。
ザッ!!
「!?」
シェルが女の子に向かっていきなり土下座をした。
シェル「コキアは俺らの大事な仲間なんだ!
だから返して下さい!」
レン「・・・」
仲間は静かに二人のやり取りを見守る。
「わ、分かったわよ・・・」
シェル「本当!?ありがとう!!」
シェルが膝を付いたまま頭を上げるまとニカッと笑った。
「!!」
額は擦り傷が出来て血がタラ〜っと流れている。
メリサ「隊長!!血!!」
シェル「あー、大丈夫大丈夫」
メリサ「大丈夫じゃないだろ、全く」
メリサが軟膏を額に塗ると大きな絆創膏をペシッとシェルのおでこに貼った。
シェル「ありがと」
メリサに手当てをしてもらい、お礼を言った後も依然としてシェルは膝を付いたままだ。
「コキア君は返してあげる、でも、一つだけ条件があるの」
シェル「何?」
「その代わり半妖のお兄ちゃんはここに残って私達と一緒に暮らして」
レン「な・・・」
メリサ「なんて無茶な・・・」
フローナ「シェル・・・」
シェル「ごめん、それはできない!!」
バアアン!!
「どうして?コキア君は返すって言ってるんだよ?」
シェル「だって、俺がいなかったら皆んなを守れないからさ」
「キュンッ・・・で、でも、この人達だって結構強いでしょ?だから大丈夫だよ!」
シェル「それがさ、意外とそうでもないんだよ、仲間より強い奴はいるよ、今の君みたいにね」
「それは、ここが静寂の森だからでしょ?こんなのレアだって」
シェル「この先もそういう場所が出てこないとは言い切れないよ、俺も仲間達も世界の全てを見たわけじゃないからね」
「ぐっ・・・」
シェル「君もそうなんじゃない?」
「ぐぬぬ〜・・・」
レン「もうちょっとで落ちますね」
メリサ「だね」
フローナ「何がですか?」
メリサ「見ててごらん」
フローナ「は、はい・・・」
シェル「ね?だからコキアと俺らをこの森から出させてよ、君にしか頼めないんだ」
(くぅ〜ん)
「わ、分かったわよ!!分かったからその目で見ないで!!死んだ、死んだラムネにそっくりなんだからぁ!!」
レン&フローナ「!?」
メリサ「え、死んだラムネ?」
シェル「死んだラムネって?」
「飼ってたわんちゃんよ、ゴールデンレトリバーで体がおっきな男の子!とっても可愛いかったの!!」
メリサ「まさかの飼い犬!!」
レン「分からないでもない・・・」
フローナ「見てみたかったけど・・」
シェル「飼ってたってことは・・・」
「うん、死んじゃったの」
シェル「お母さんとお父さんは?」
「いない、パパとママ、私が5歳の時に車の事故で死んじゃって孤児院で育ったから」
シェル「そっか・・・それは辛かったね・・じゃあラムネの後を追いたくてここに?」
「うん、孤児院の子達は優しい子が多かったけど学校の子たちに虐められてそれで・・・今までは孤児院にラムネがいたから我慢できたの、でも今はそれができない、
だからね、孤児院で死にたいって言った子と学校で飛び降りようとしてた子と一緒にこの森で死のうって話になったの」
シェル「そっか・・・俺も虐められた経験あるから君の気持ちは分かるよ」
「え、本当に・・・?来夢だけじゃなくて半妖のお兄ちゃんも虐められてたの?」
シェル「来夢って名前なんだ、やっと名前聞けたね」
来夢「キュンッ・・・」
シェル「俺はシェル、よろしくね」
来夢「う、うん、よろしく・・・」
シェル「俺も君と同じくらいの歳にね、
学校の人達だけじゃなくて近所の人達からも半妖がいるって騒がれて、
殴られたり川に突き落とされたり、教科書燃やされるし花瓶でぶん殴られるし、参っちゃうよねぇ!あはは!」
しーん・・・。
来夢「お、お兄ちゃん、そんなに酷かったの?・・・だ、大丈夫?」
来夢はしどろもどろになりながらシェルに話しかける。
シェル「へーき、正直、あんま痛くなかったから、
人間の力じゃ武器使っても衝撃はたかが知れてるし」
来夢「へぇ・・・半妖さんって凄いんだね・・確かに
さっきあれだけ吹き飛ばされたのに怪我一つしてないし
おでこの擦り傷ももう血止まってるみたい」
シェル「そうそう、怪我もすぐ治るんだ、だからヘーキヘーキ・・・あだっ!!」
その時、レンが後ろからシェルの頭に強めのチョップをする。
レン「そういう問題じゃないんですよ」
(ズゴゴゴッ)
シェル「あらやだレンちゃん凄い殺気」
レン「全く、あなたがそうやってヘラヘラ笑ってるから周りの人達が調子に乗るんですよ、ちゃんと怒るなりやり返すなりすれば良いでしょう」
シェル「ごめんなさい」
来夢「ふっ、あはは、シェル君って変な人〜!」
シェル「うん、よく言われる」
来夢「ごめんね、膝痛いでしょ?もう立っていいから」
シェル「ありがと」
そう言ってシェルはようやく立ち上がった。
来夢「じゃあ、コキア君のところに案内するね!」
シェル「ありがとう」
来夢が先頭を切って歩いていくとコキアが木の下に座っているのが見えた。
コキアの周りに来夢と同い年くらいの子どもが4人立っている。
男の子が2人、女の子が2人だ。
シェル「コキア!だいじょ・・・」
コキア「もぐもぐ・・・」
シェル「何まったりしてんだ君はー!!」
コキア「あ、隊長、皆さんも・・・だってこの子達、桃いっぱいくれるんですよ、
静寂の森にしか成らない特別な桃らしいです、めちゃくちゃ美味しくて」
シェル「おーおー、それは良かったな、ってちがーう!!」
(ちゃぶ台返し)
フローナ「うーん、デジャヴ」
シェル「君ねぇ、もっとこう寂しがるとか逃げ出そうとするとかないわけ?」
コキア「一度出ようとしましたが出られなかったので諦めました、あと桃くれたので」
シェル「コキアにとって俺らって桃以下なのか?・・・
まぁとにかく!俺らと一緒に帰るぞ」
女の子A「ダメだよ!!」
男の子A「コキア君は俺たちの友達なんだ!」
男の子B「そうだそうだ!僕たちの友達だ!」
女の子B「コキア君は渡さないわよ!」
4人の子ども達がキャーキャーと騒ぐ。
レン「やはり一筋縄ではいきませんね・・・」
メリサ「ま、こうなる気はしてたけどね」
フローナ「シェル、どうするの?」
シェル「う〜ん、困ったな」
シェルが腕を組んで考える素振りをする。
来夢「待って皆んな!あのね!!」
来夢が説明すると皆んなはあっさり・・・。
男の子A「うん、分かった」
男の子B「分かった」
女の子A「来夢ちゃんがそう言うんなら」
女の子B「そうよね、私も来夢ちゃんにさんせーい!」
レン「あれ、意外とあっさり?」
メリサ「きっと来夢ちゃん、皆んなに慕われてるんだろうね」
フローナ「なんだか皆んな楽しそう」
シェル達が静寂の森に入ってから半日後。
5人は子ども達に別れを告げ、森の向こうで待つ明水の元へと向かった。
レン「隊長、良かったんですか?あの子達をあのままにしておいて」
メリサ「僕は連れて来た方がいいと思うけどね」
シェル「ここにいたいって言うのを無理矢理連れてけないだろ、
あの子達にはあの子達なりの事情があるんだろうし、
必ずしも周りの奴らと同じことが正解じゃないさ」
フローナ「うん、それは本当よく分かるよ」
シェル「それにあの子達、ここにいられて幸せだって言ったんだ、
外の世界でさえ幸せだと思える人生歩めるかは奇跡みたいなものだからさ、
幸せだって言うんなら部外者の俺らが口出すもんでもないしな」
フローナ「さすがシェルだね、あの子達の気持ちを尊重してる」
レン「というか、あの子達を無理矢理外の世界へ連れて行こうとしてもまた念で吹き飛ばされるだけですしね」
シェル「グサッ!!レン、俺結構さっきのこたえてるんだからな・・・あんな小さな女の子に吹き飛ばされてさ」
レン「あれ、こたえてたんですか?その割にヘラヘラ笑ってたじゃないですか」
シェル「ヘラヘラなんてしてないもん!ちゃーんと真面目に交渉してたもん!」
レン「はいはい、偉い偉い、確かラムネでしたっけ?
良かったですね来夢さん達の飼い犬に似てて」
シェル「更にグサッ!!・・・俺ってそんなに犬に似てる?」
レン「ええ、そっくりですよ」
シェル「犬、犬かぁ・・・ま、おかげでコキア取り戻せたし良しとするか!」
コキア「あの、隊長」
コキアがシェルの裾をくいくいっと摘む。
シェル「んー?どしたコキア」
コキア「迎えに来てくれてありがとうございます、
皆さんも・・・僕信じてました、隊長達ならきっと助けに来てくれるって」
一同「「キュンッ!!」」
シェルがぎゅっとコキアを抱き締める。
シェル「コキア、お前って奴は〜!お前って奴は〜!」
メリサ「うんうん、コキア君が戻って来て良かったよ」
フローナ「本当、良かった」
レン「心配しましたよ」
コキア「心配かけてすみません・・・ぐぅ・・・」
シェル「って寝たぁ!!」
シェルは腕の中で眠ってしまったコキアをおんぶの形に変える。
レン「行きますか」
シェル「ああ」
シェル達が静寂の森の中に入り半日後。
次の日の朝。
シェル「はーまじでやばかっな」
レン「腕力も技も効かなかったですからね・・・」
フローナ「明水さん、ずっと待っててくれたんだ・・・」
レン「そのようですね、感謝しなければ」
明水「あ、皆さん、よくぞご無事で、今開けますからね」
明水が立ち上がり、刀で結界を斬った。
ザッ!!
シェル「ふー、やっと戻って来これたな」
メリサ「ほんと窮屈だったね、息しづらいし」
シェル「薄暗いしジメジメしてたしな」
明水「とにかく、また会えて良かったですよ
静寂の森に入って無事だった人なんて見たことありませんでしたから」
シェル「それは俺も知ってたけど、仲間が攫われちゃー行かないわけにはいかないよ」
明水「ええ、そのお気持ちは否定するつもりはありません、
自力で突っ込まずに私を頼ってくれたこと実は結構嬉しかったんですよ」
シェル「明水って本当いい奴だな・・・」
フローナ「うんうん」
明水「お仲間さんは大丈夫なんですか?」
コキアはシェルに抱えられたままだ。
シェル「大丈夫、眠ってるだけだから」
明水「そうですか、それなら良かった・・・それにしても全然起きる気配ないですね」
シェル「コキアは一度寝たらなかなか起きて来ないからなぁ」
レン「まぁ、お腹が空いたり敵が現れたりすれば起きますけどね」
明水「なんと・・・」
シェル「つーか、明水も休んだ方が良さそうだな」
メリサ「そうさね、ずっと座ったまま夜から朝まで祈り続けてたんだ、相当疲れてるはずだよ」
明水「いえいえ、普段修行を重ねていますからこれくらいは平気ですよ」
フローナ「さすが明水さん」
明水「また何かありましたら声を掛けて下さい、
何かないのが一番なのですが」
シェル「次は茶菓子食べに寄るよ」
レン「なんと図々しい・・・」
明水「構いませんよ、あなた方に会える日を楽しみにしてます、行ってらっしゃいませ」
そう言って明水は深く頭を下げた。
シェル「ほんと明水さんっていい人だよな」
フローナ「本当、優し過ぎるくらいだよ」
シェル「大人の余裕があるってゆーかなんてゆーか」
レン「隊長とは正反対ですね」
シェル「グサッ・・・レン、今のわざとでしょ」
レン「さて、どうでしょうね」
後日談。
シェル「そう言えばさ・・・ずっと気になってたんだけど、何でコキアは静寂の森の中に入れたんだ?」
コキア「さぁ、たまたま迷った先があの森でしたから」
シェル「たまたまって言ったってあそこは死にたい奴しか入れな・・・はっ」
コキア「?」
シェルがガシッとコキアの両肩を掴んだ。
シェル「悩みあるなら聞くから何でも言えよな!」
メリサ「そうだよ!静寂の森産地の桃はないけどさ!
レン君が沢山桃の美味しい料理作ってくれるから!」
レン「ええ、コキアさんの為ならばそれはもう作りまくりましょう!」
レンがくいっとメガネを人差し指で上げる。
フローナ「私!ジュースくらいなら作れるよ!!」
コキア「あの、そんな心配しなくても大丈夫ですよ、
僕、死にたいと思ってませんから」
シェル「ほ、本当か?」
コキア「はい、何で入れたかは謎なんですけどね」
メリサ「そう言えば明水さん、あの森に入れるのは死にたい人か幽霊かのどっちかだって言ってたような・・・」
コキア「え、僕って死んでるんですか?」
シェル「そんなわけないだろ!俺が気配感知できるんだから」
フローナ「そうだよ!影だってちゃんとあるし!」
コキア「ああ、そう言えばあの子達影なかったですもんね」
一同「「え?」」
シェル「ふらっ・・・」
パタッ!
フローナ「わぁシェル!!大丈夫!?」
メリサ「今背筋凍ったよ!!」
レン「俺もですよ・・・」
フローナ「ん〜でも、やっぱりあの子達幽霊だったんだ」
フローナが人差し指を口元に当てながら言う。
メリサ「え、フローナちゃん、あの子達が幽霊だって気付いてたのかい?」
フローナ「影はドタバタしてて気付かなかったですけど、何となく昔幽霊見た時と空気が似てたので」
メリサ「サラッと怖いこと言わないでおくれよ」
レン「あれ?でも、それならどうして隊長が気配を感知できたんでしょうか?」
フローナ「う〜ん、でも、静寂の森があるくらいだから
この世にはまだまだ知らないことが沢山あるのかも、
全部見たわけじゃないし」
メリサ「隊長もさっき自分でそう言ってたしね」
シェルはまだカチンコチンに固まっている。
レン「完全にフリーズしてますね」
フローナ「しばらくこのままかも」
メリサ「だね」
コキア「?」(隊長が何故固まってるのか理解できない)