はじまり
初投稿です。小説を書くのは初めてのことなので、稚拙な描写などがあるかもしれません。温かい目で見てくれたら幸いです。よろしくお願いします。
~ゆいん~
むかしむかし このせかいにはまおうがいました
まおうはそのちからでせかいをしはいしようとしました
まおうのちからはとてもつよくて、みんながこわがりました
「だれかあのまおうをたおして!」とみんながいいました
そこにせいなるつるぎをもったゆうしゃがあらわれました
ゆうしゃはなまえを『ゆいん』といいました
ゆいんはなかまたちといっしょにまおうをたおしました
そして せかいはへいわになりました
みんながよろこびました
しかし ゆいんはとてもかなしんでいました
なぜなら たいせつななかまがまおうにやられてしまったからです
ゆいんはそのなかまのことがだいすきでした
ゆいんはけんじゃのもとにいきました
「なかまにもういちどあいたい」とゆいんはけんじゃにねがいました
「ならばねむりなさい」とけんじゃはいいました
さらに「おきたらこのせかいをたびしなさい」とけんじゃはいいました
そうしてゆいんはながいねむりにつきました
ゆいんはいまもこのせかいのどこかでねむっているといいます
~おしまい~
◇ ◇ ◇
「んぅぁぁぁぁ..........」
その少年が最初に感じたのは、少しの肌寒さと湿気。
寝返りを打ち、それらに不快感を覚えながら目を開けた。
「ぅぉあッ………」
目を開ければ、最初に見えたのは太陽。
少年は突然入ってくる強い光に一瞬、怯んだ。
そしてもう一度、次は太陽を直視しないように上半身を起こし、ゆっくりと目を開けた。
次に見えたのは、暗闇と岩肌。
少年はここが洞窟であることを理解した。
もう一度上を見上げると、太陽と青空が見える。
少年が眠っていた場所にだけ地上から穴が開いており、まるで少年にスポットライトが当てられているようだった。
「え?」
少年は思わず声を漏らす。
「いや、どこだよここ……」
少年の顔には困惑の色が浮かんだ。
「っし…とりあえず深呼吸だ…落ち着け俺……」
そう自分に言い聞かせ、大きく息を吸って吐く。
そしてふと、視線を落としたときに少年は異常に気が付く。
「なッ……」
地上からの明かりによってそれはよく見えた。
赤黒いものが少年の眠っていた場所を中心に広がっていた。
少年は一瞬でそれが血であることに気づく。
(あ、ここ絶対ヤバいとこだ)
少年が急いで立ち上がろうとしたところで、何かが手に当たった。
そこら辺に転がっている石とは違う何か。
何が触れたのかを確認しようと目をそれに見やった。
そして少年はもう一つの異常を目にする。
「おいおい…マジかよ……」
そこにあったのは刀。
鞘から柄まで漆黒に染まっており、少年はそれを不気味に感じた。
「なんで…」
思わず少年は刀を手に取った。
それと同時に、少年は刀が置かれていた場所の傍に何か文字が書かれていることに気づいた。
それは血で書かれており、だれがどう見ても正常でない状態の人間が書いたと分かる程に乱雑だった。
「文字か…?いやでも、こんな文字見たことないぞ…」
少年は刀を置いてその文字をまじまじと見つめた。
そして、あることに気づく。
(なぜだろう…こんな文字見たことないハズなのに、不思議と読める気がする……)
そして少年は声に出してその文字を読んだ。
「『ユハ・ソノト』…?」
少年は首を首をかしげる。
(どういう意味だ…?誰かの名前とかか?)
少年がその言葉について思考を巡らせようとしたとき、あることに気づく。
「あれ…俺の名前ってなんだっけ…というか自分の顔も思い出せない………」
少年の額に冷や汗が滲む。
どうにかして思い出そうともう一度深呼吸をし、目を閉じて己の脳みそをフル回転させた。
しかし、何分経とうがその答えは出てこない。
その代わりに、一つの可能性に行き着く。
(『ユハ・ソノト』ってもしかして、俺が記憶を失う前の名前だったりするのか?)
先ほど見つけた『ユハ・ソノト』という血文字についてだった。
(俺が書いたという確証はどこにもないけど、ここには俺しかいないことを考えると…その可能性は十分にあり得るな…)
そして、少年は結論を出した。
(よし!とりあえず、この言葉を仮の名前として使おう。俺の名前は今からユハ・ソノトだ)
次にユハは刀に目を見やった。
(それじゃあもしかして、この刀も俺の物だったのか?)
ユハはもう一度刀を手に取った。
(意外と軽いんだな、刀って)
そう思いながら鞘から刀を抜いた。
案の定とでもいうべきか、刃の部分も漆黒に染まっていた。
(全部黒って…センス悪っ)
そう心の中で思いながら刃を鞘に納めた。
(この刀も俺の物ってことで…いいんだよな…。とりあえず、ここに置いていくのもダメな気がするから持って行こう。それでもし、持ち主がいるようだったら返そう。)
そう結論付けながら、もう一度まじまじと刀を見つめていたとき、ユハはあることに気づいた。
(これ…同じ黒色で見づらいけど、鞘に文字が彫られてる…?)
ユハはその部分をよく見て、その言葉を口にした。
「『童雲』…この刀の銘か…」
そう呟いた後、『童雲』を左手に持ち、立ち上がった。
「さてと…」
目の前には暗闇がある。
(とりあえず、ここを出よう。自分の顔も確認したいところだし)
ユハはまだ見ていなかった方向を確認した。
左右は壁になっていて進めない。
後ろを見ると、かなり奥の方に光が見える。
そこで、今自分がいる洞窟が一本道になっていることに気づいた。
(出口はあっちだな)
そしてユハはその光を目指す。
光までの暗い暗い一本道を歩く。
そうして段々と光の向こう側が見えてくる。
やがて、ユハはその洞窟の出口へとにたどり着いた。
そして一歩、外の世界へと踏み出した。