さく、咲く
生徒会選挙当日のお昼休み。
この後本番を迎える私さくら、は今教室で一人でお昼ご飯を食べようとしています。
緊張してなかなかご飯が喉を通らず本番に向けて最後のイメージトレーニングを始める。
昨日立ったステージからの景色を思い出し五百人の生徒を思い浮かべる。
深呼吸を忘れないで一度して心を落ち着かせる。
ドキドキして不安でいっぱい。
まずはかんたくんを探す。
いる場所はだいたいわかっているので彼の変な顔を見て少しでも緊張を和らげ、、、
うふふ
彼の顔を思い浮かべてついニヤッとしてしまった。
彼の変顔は、、ごめんなさいとっても面白いです。
人の顔を見て面白いと言うのは失礼ですが彼の顔を見るとそんな事言ってられません。
本当にごめんなさい、、
かんたくんはいま何をしているのかな、、
学校では補習会の時以外では会ったことがありません。
優しくて面白いからたくさんの友達に囲まれてご飯を食べているのかな??
奈津橘『さくー一緒にご飯食べよっ!!、、、なにニヤニヤしてるの??』
さくら『えっ!?』
彼女は不思議な表情で私の顔を覗き込んでくる。
さくら『し、してないよ、、』
奈津橘『してたよ!!教えて!!なに考えてたの!?』
さくら『お、教えない、、』
私は誤魔化すために彼女と目を合わせないように振る舞う。
かんたくんの変顔を思い浮かべていたなんて恥ずかしくて言えない、、汗汗
彼女は不満そうにほっぺを膨らませる。
隣の席の椅子を私の机の所に持ってくると迎え合うようにして座った。
奈津橘『もうちょっとで本番だね、さく大丈夫??』
さくら『うん、かんたくんとたくさん練習したから、大丈夫』
彼女に心配かけないように真剣な眼差しで言った。
奈津橘『うん!ほんとにありがとう』
私は肩をギュッと上げて笑顔を作る。
奈津橘『ご飯食べないの?お腹鳴ってマイクが音ひろったらすっごい恥ずかしいよ?』
そう言われてはっと恥ずかしくなる。
でも緊張してなかなか食欲が湧いてこない。
奈津橘『お願い!!そのお団子一つちょうだい!』
両手を合わせてお願いしてきたので
さくら『うん、どうぞ』
いつも通り彼女に一つあげる。
お家がうどん屋さんなので特製のお団子をお母さんと作ってこうしてお弁当に入れて持ってきている。
奈津橘ちゃんはこのお団子が好きでいつもおねだりしてきます。
箸で取ると口に運ばれていった。
奈津橘『うんま』
奈津橘ちゃんは目の前でお弁当を食べ始めた。
さくら『奈津橘ちゃんは緊張しない?』
奈津橘『ん??実はけっこうしてる』
そっか、、奈津橘ちゃんでもやっぱり緊張はするんだ、、
でも、ぜんぜんそんなふうには見えない。笑
彼女の弁当箱の中がどんどん空っぽになっていく。
私も少しずつお弁当を食べる。
奈津橘『生徒会選挙終わったら私の家でえんどう豆パーティしない?さく頑張ってくれたからパーっと宴会みたいに楽しもうよ!。かんたも誘おうかなと思ってるんだけどいいかな?』
さくら『えっ??えんどう豆パーティ??』
いきなりえんどう豆パーティという聞いたことない単語に目をぱちぱちさせた。
奈津橘『そっそ、勝っても負けてもやるからね、どうかな?』
さくら『う、うん、、楽しそうだね、、』
私がえんどう豆好きだからえんどう豆パーティなのだろうがパーティなんて参加したことないしどんなだろうか想像がつきません。
かんたくんも誘うみたい。
来てほしいなぁ、、
でも課題とかゲーム配信とかで忙しそうだから来てくれないよね、、、
そう思いながら私はお弁当の端っこにさやから取り出しておいたえんどう豆を一粒食べる。
この薄味で少し苦いところが私がえんどう豆が好きな理由です。
奈津橘『さくどんなスピーチしてくれるのか楽しみだなー!ねっ!ちょっとだけ今原稿みせて!』
さくら『ダメ!!』
私が断ったのでまた風船みたいにほっぺがぷくぅーと膨らんだ。
とっても可愛いです。
竹長『西城!この後頑張れよ!』
奈津橘『うん!ありがとう!』
同じクラスの男子生徒たちが奈津橘ちゃんに話しかける。
短髪で整っていて鼻がすらっと高くて爽やかクラスで人気者の竹長君。
私に気づくと小さく会釈をしたので返す。
竹長『緊張してドジるなよ!』
奈津橘『大丈夫だし!緊張なんかまったくしないから』
宮本『西城の政策通ったら俺髪の毛染めようかな』
奈津橘『いいじゃん!宮本金髪とか似合いそう』
宮本『ウィーっす』
ケラケラ笑って男子生徒たちが集まっている所に戻っていった。
奈津橘『やばいよ!さく!本番の時間が近づいてくるよ〜!!』
さくら『う、うん、、』
奈津橘ちゃんは緊張しているのにどこか楽しそうな様子。
すごいなと思います。
ガラガラ
教室のドアが開くと一人の男子生徒が奈津橘ちゃんの事を見つけると近づいてきた。
私一人だと私の席の周りに誰も来ないのに奈津橘ちゃんがいたらたくさん集まってくる。
彼女の魅力は私がスピーチしなくてももうみんな知っているみたい、、
奈津橘『げっ!平塚、、』
嫌そうに呟いた。
眼鏡をかけていて姿勢が良く服装の着こなしも美しい。
成績の優秀さが立ち振る舞いだけでも伝わってきます。
平塚『西城さんこの後お互い正々堂々頑張りましょう』
奈津橘『わかってるわよ』
平塚『まったく、、君が立候補しなければ選挙なんかしないで僕が生徒会長になれていたのに、余計な手間をかけさせてくれたものだ』
メガネの真ん中の所を人差し指で触る。
奈津橘『何それ?あんたが会長になったら身だしなみの自由とか政策してくれるの?』
平塚『まさか、君の変な政策にどうして付き合わなければいけないんだ』
奈津橘『じゃ私が勝たないといけないでしょ』
奈津橘ちゃんは腕を組んで立ち上がった。
彼とは身長差があって見上げている。
私は奈津橘ちゃんがヒートアップしないように様子を伺う。
二人の間にビリビリ電気がはしっているように見えます。、、
平塚『勝つのは僕だから、失礼』
踵を返すと教室を出ていく。
彼の背中に奈津橘ちゃんはベーっと下を出した。
子供っぽくて可愛い。
頑張ろう奈津橘ちゃん!!
奈津橘『わざわざそれを言うために私を探してたの?』
彼女は呆れた様子で私に話しかけてくる。
さくら『が、頑張ろう!!絶対に負けないよ!』
私は両腕を曲げて手に力を入れながら力強く言った。
奈津橘『さく〜〜!!』
そう言って机の横を通り私に抱きついてきた。
何事かと教室内で注目されてしまう。
私は彼女の頭を苦笑いしながら撫でてあげる。
満足すると彼女は迎えの椅子に座り机に突っ伏して顔をうずくめる。
平塚さんに挑発されて少し疲れたみたい。
ガラガラ
教室のドアが開く。
私は気になってドアの方を見る、、、
かんたくん!?
ドアの所で恥ずかしそうに突っ立っている彼の姿があった。
くしゃっとした髪型で優しくて明るくて面白くて可愛らしい彼。
かんた『えっと、、東雲さくらさんいますか、、』
彼と目が合う。
ドキッとして胸の奥が心が気持ちが高鳴って熱くなる。
ガラガラ!!
私は彼の近くに行きたくってたまらなくなり彼の元へ向かう。
気づいた教室の生徒たちが誰だろうとかなんで東雲さんを呼ぶのだろうかと不思議な視線を向ける。
廊下に出ると後ろのドアをガラガラと閉めた。
かんた『えっと、、緊張大丈夫かなって気になって様子見にきた、、』
さくら『う、うん、、大丈夫、、』
彼の側にいると心がドキドキする。
こんな気持ちは初めて。
かんた『そっか、なら良かった、、』
さくら『う、うん』
かんた『本番頑張って』
さくら『うん、頑張る』
奈津橘『さく!どこいくの??、、ってかんたじゃん!』
かんた『あパイセン』
彼はボソッと呟く。
奈津橘『もしかして私たちの応援しにきてくれたの??』
かんた『さくらさんの応援しに来たんだよ。どうせ奈津橘パイセン緊張なんかしないだろうしいびきかいて涎垂らして寝てると思ってた。』
奈津橘『はー?そんなわけないでしょ!私もけっこう緊張してるんだからね』
かんた『そうなの?』
奈津橘『そだよ』
かんた『ならついでにがんば』
奈津橘『ついでかい!!』
さくら『うふふ』
二人のやりとりに思わず笑ってしまいました。
流星『奈津橘パイセンいないんだけど、、いた!!』
奈津橘『流星じゃん!よっ』
流星『かんたが東雲さんのことが気になって仕方ないって言うからなら俺もついでに奈津橘パイセンの応援しとこうかなって探してた』
奈津橘『あんたもついでかい!!さく〜私ついでの女なの〜悲しいよ〜』
奈津橘ちゃんが悲しそうに私の手を握ってきたので苦笑いしながら頭を撫でる。
かんたくんの隣にいる人は友達なのかな?
爽やかな印象でスポーツが得意そう。
人見知りが発動してしまって彼と距離を置きたくなってしまう。、、、ううう、、、汗汗汗
かんた『パイセン冗談だよ!生徒会長なって楽しい学校作ってくれよ』
奈津橘『当たり前でしょ!』
流星『よろしくパイセン!』
奈津橘『うん!』
彼女は太陽みたいな明るくて元気いっぱいな笑顔をした。
かんた『それじゃ俺たち戻ります、さくらさん体育館右側前の列だよ』
私はうんと頷く。
彼の遠ざかって行く背中を見ている。
奈津橘『右側前とか言ってなかった?何かあるの??』
奈津橘ちゃんが気になっている様子で聞いてきたので
さくら『私の、大事な場所、、』
と小さな声で教えてあげました。
※
やべぇ〜緊張する〜なんで俺がこんなに緊張してるんだ!!笑
生徒会選挙の時間。
体育館に集められた俺たちかんたは、今座ってその時を待っている。
体育館中に賑やかな声が響いていて騒がしい。
俺は前の列だから後ろを振り返ってみる。
すぐ後ろには翔太がいてそのさらに後ろに、、たくさんの生徒たちの黒い頭がいっぱい、、、
やばすぎる。この学校の生徒数多すぎ!!
富山県内で一番大きな進学校の迫力はすごかった。
最初入学した時は圧倒された事を思い出す。
さくらさんこの人たちの前でスピーチするんだよね、、
緊張する〜さくらさん頑張って!!
心の中で何度も彼女の事を応援した。
翔太『おいかんた!なにもじもじしてるんだよ』
かんた『別に何でもないよ』
翔太『西城奈津橘見れるからってちんちん元気になってんじゃないの?』
かんた『うっせぇ!』
俺がつっこむとうれしそうにケラケラ笑っている。
『みなさんご静粛に、これより生徒会選挙を始めたいと思います。』
聞き取りやすい滑舌の良い放送部の女子生徒が進行を始めた。
騒がしい声たちが徐々に小さくなっていった。
そしてさくらさんが苦手なあの雰囲気が流れ始める。
やばいここにいる俺がこんなに緊張してるからステージ裏で待っている彼女はもっと緊張しているに違いない。
やばい泣きそう、、、
頑張れ〜〜〜、無事終わって下さい!!
『それでは立候補者の方はステージへお越しください』
ぱちぱちと拍手の中奈津橘パイセンと平塚大河がステージ裏からやってきた。
パイセンの顔を見ると唇を中にしまっていて少し緊張している様子だった。笑
その美しいく可愛い顔は後ろの翔太をたくさんの一高の生徒たちをメロメロにしていた。
翔太『めちゃ可愛え』
小声で呟く彼の声が聞こえた。
ステージ中央から少しズレた所に椅子が二つ並べられいて二人ともそこに腰を下ろした。
『ではまず平塚大河さんの推薦人からのスピーチをお願いします』
ぱちぱちと拍手がなり男子生徒が中央のマイクの置いてある台の前に立った。
五本『平塚大河の推薦人五本雅之です。みなさんの貴重なお時間を少しいただきます。知っている方も多いとは思いますが彼は入学してからこれまでずっと成績トップを走り続けています。その優秀な頭脳をこの学校の為に使っていただける、こんな嬉しい機会はありません。』
彼のスピーチはとても上手く興味がなくて聞こうとしなくても勝手に脳内から語りかけてくるようなそんなスピーチだった。
彼の人柄だったり勉強に対する意欲だったりをわかりやすく俺たちに伝えてくれる。
五本雅之の約五分のスピーチを終えると平塚大河と言う優秀な生徒の凄さがとても良く伝わった。
きっと平塚大河が生徒会長になったらこの学校の全体の成績が更に上がりそうだとそう思った。
彼が生徒会長でも全く問題はない。
拍手がなり五本雅之がステージ裏に戻って行った。
『それでは次の推薦人の方ステージにお越しください』
いよいよ彼女の番がやってきた。
俺は顔の至る所を動かして準備運動をした。
※
ステージ裏。
私さくらは、自分の番をステージ裏で待っています。
緊張でいったい何度深呼吸をしたのかもうわかりません。
奈津橘ちゃんの為に頑張る!!何度もそう自分に言い聞かせる。
そうしないと手と足が震えて立っていられない。
口の中が乾いて少し気持ち悪い。
上手く話す自信がなくなってきます。
できる!できる!できる!
たくさん練習してきた。
たくさん泣いた。
たくさん怖がった。
たくさん辛かった。
本番まで結局私は何一つ変われなかった。
泣き虫で恥ずかしいがり屋でこんな私がステージに立てるわけがない。
ずっとそう思っていました。
それは違うと教えてくれました。
泣き虫で恥ずかしいがり屋な私なんかとずっと友達でいてくれた彼女の為に今まで一緒に過ごしてきた彼女の魅力をみんなに伝えます。
大きな拍手が聞こえてくる。
次はいよいよ私の番。
綺麗な声が私の事を呼んでいる。
ステージ裏から中央のマイクの所に向かって移動する。
たくさんの生徒たちに拍手されているみたいですが音が全く聞こえない。
中央に立つとたくさんの生徒たちが私を見ている。
いつもマスク姿な事を知っている生徒たちがマスクをつけていない彼女を見てざわざわする。
『えっ?やば、かわいすぎじゃねぇ?』
スピーチを始めようと声を出そうとした時、、
目の前のあまりにもたくさんの生徒たちの光景で頭が真っ白になった。
あれ?最初何言うんだっけ、、、
えっと、、、
何も思い出せない、、
右側前、、
誰かが私の事を頭の中で呼んだ。
優しい男の子の声。
かんたくん??
彼の声に従って体育館の右側前の列に視線をさまよわせる。
そして直ぐに彼がそこにいる事に気がついた。
みんなじっと怖い視線で私の事を見ている中で一人だけ可笑しな顔で私の事を見ていた。
そのインパクトは凄まじくこの静かで嫌な雰囲気を吹っ飛ばす勢い。
目を大きく開けて口も大きく開けて舌が飛び出ていて左右に顔を動かしていてみんな真剣な表情してるのに一人だけそんな変な顔していて本当にだらぶちさんで
うふふ
みんなの視線がなんだか馬鹿馬鹿しく感じられた。笑
『今笑わなかったか?』
『笑顔可愛すぎだろ』
彼の顔を見て緊張が和らいだせいかこれまで練習してきたスピーチの内容が頭に流れてきた。
大丈夫!できる。
さくら『私東雲さくらは生徒会長に西城奈津橘を推薦したいです。彼女とは幼馴染でずっと大切な友人です。私が困った時はいつも側にいてくれてとっても優しいだらぶちさんです』
ざわざわざわざわ
みんなの私を見る視線が和らいだ。
ニコニコニヤニヤしながらみんな聞いている。
かんたくんの言った事が本当になっていた。
すごいかんたくん!!
『彼女と初めて話したのは幼稚園の時、私は一人で遊ぶ事が好きでその日も一人で泥団子を作って遊んでいたのですがとっても楽しくてついついたくさん作ってしまった事を今でも覚えています。私は泥団子を作る事が得意で今から綺麗に作る方法を教えます。あっ!ごめんなさい奈津橘ちゃんのスピーチの途中でした。』
ざわざわざわざわざわざわ
みんなニコニコニヤニヤあの嫌な雰囲気はどこにもなかった。
次何を話すのかみんな楽しそうに聞いてくれている。
かんたくんを見るとまださっきの変な顔をしている。笑
もうしなくて大丈夫だよ。
心の中でツッコミを入れてあげる
奈津橘『ちょっとさくのバカ〜!!』
隣から奈津橘ちゃんのツッコミが入ると体育館内が笑いに包まれた。
『たくさん泥団子を作って乾かしているのを眺めていると奈津橘ちゃんが他の子たちと遊ぶのに夢中になっていて私の作った泥団子を踏んづけて行きました。それに私は大泣きしてしまいます。幼き彼女は私に気づくと何度も謝ってくれました。それから彼女ともう一度作る事になったんですが最後まで一緒に作ってくれて小さい時から責任感の強い人でした。完成した時は私よりも喜んでいました。』
私はニコッと隣で聞いている奈津橘ちゃんを見ると彼女もニコッと返してくれた。
『それから彼女は私を見つけると話しかけてくれるようになってそれから気づくと私も彼女に気持ちを許して仲良くなっていました。
もう一つ彼女とのエピソードを聞いて下さい。
この高校に入ってからの話です。私はチアガール部に所属していたのですが練習についていけずに直ぐに辞めてしまったんです。自分の事が嫌になって学校の隅っこでうずくまって泣いていたら彼女が私の事を見つけてずっと隣で寄り添ってくれました。部活を辞める事を事前に言っていてそれを知っていたからきっと必死になって私の事を探してくれたんだと思います。他の人の気持ちに寄り添える優しさをしっかり彼女は持っています。
さっきも言いましたが責任感の強さ気持ちに寄り添える優しさ、これは生徒会長にとって一番大事な事だと私は思っています。それをしっかり持っている彼女は生徒会長に相応しいと思います。
彼女の作る学校生活を私は見てみたいです。
きっとそれは笑顔の絶えない明るくて楽しいものになると思います。
みなさんの大事な票を私の大好きな友達にお願いします!!
ご静聴ありがとうございます。
スピーチを終えると頭を下げて一礼した。
拍手の音が体育館内に響いてなかなか鳴り止まなかった。
かんたくんを見ると、、
うふふありがとう
ステージ裏に戻ると
ガタン!!
膝から崩れ落ちてしまう。
身体に力が入らない。
無事にスピーチを成功させる事ができた安堵で涙が止まらない。
ずっと重たい鎧みたいなものを着ていた気がするがそれが外れた。
自分を抱きしめるように腕を掴んだ。
うっ、、ゔゔゔ
苦しい、、安堵で心が軽くなったはずなのにそれだけ私は今嗚咽を漏らしながら泣いてしまっているんだ。
息がしづらい。
ゔ、、ゔゔハァハァ
緊張した、緊張した、緊張した、緊張した、
身体が震える。
後ろから温かい体温に包まれる。
奈津橘『バカ!これから私演説あるのに、これだとできないじゃない!だから事前に原稿見せてって言ったのに』
さくら『なづみぢゃん、、、』
後ろから奈津橘ちゃんに抱きしめられたまま暫く私の涙は止まらなかった。
※
涙が涙が止まらないよー!
よかった!無事スピーチは成功!安堵で肩の力が抜ける。
後ろの翔太にバレたらなに泣いてんだっていじられるから絶対バレたくない。
後半ほとんど泣いてしまって変顔しようとしなくても勝手になっていたと思う。
翔太『ヤベェ!東雲さん可愛すぎる!なぁ!かんた』
奈津橘パイセンがステージ裏に慌てて入って行ってしまい選挙会は一時中断になっていた。
体育館内がざわざわ話し声が響いている。
どうしたんだろうと心配した声が聞こえてきた。
翔太『なぁ?かんた!!』
翔太はさっきから後ろで東雲さん可愛い可愛いうるさい!笑
今振り返れないから泣いている事を悟られないようにおう!と言う。
翔太『おまえ泣いてない?東雲さんのスピーチに感動したんか!?おいおい』
かんた『泣いてないよ!』
ぎゅっと後ろから頭を掴まれて覗き込まれる。
しまった!やばい!!
翔太『ケッケッケ!やっぱ泣いてるじゃん!おーいみんな〜!!かんたない』
そこまでじゃ〜
俺は翔太の口を両手で塞ぐ。
翔太『ん!ん!ん!』
『みなさんお静かにお願いします』
進行役の綺麗なアナウンスがなり体育館内が静まっていく。
助かった、、
翔太を解放してあげてステージに向き直る。
奈津橘パイセンが戻ってきていて椅子に座っていた。
その彼女の目には泣いた後があった。
『それでは生徒会選挙を再開します。次は立候補者の演説です。平塚大河さんお願いします』
平塚『この度生徒会長に立候補しました、平塚大河です。僕の実施する主な政策はみなさんがより良くこの学校で勉強ができるようにしていくものです。まずはもうすぐやってくる夏休み、それに向けてこの学校で夏期講習を実施したいと考えています。海の見えるホテルなんかいいと思っています。そこでこの学校の生徒達で集まり泊まりながら勉強したり息抜きに友達と海で遊んだりしては楽しのではないかと考えています参加は自由です』
ヤベェ、、めっちゃ楽しそう、、平塚大河さんはお堅い勉強政策ばかり実施するものと勝手に思っていたのでこの政策はかなり楽しそうだと思った。
もしかしたらさくらさんの水着姿を見る事ができるかもしれないのか!?
いや待てよ参加自由って言っていたからそうなればさくらさんは参加しないだろう。
いやそもそもさくらさんは海でなんか遊ばないか、、、
『次は図書室の本を増やしよりみなさんが利用しやすいようにしていこうと考えています。そのために僕が考えたことは漫画を置く事を視野にいれています』
かんた『まじか!』
彼の漫画を置くと言ったことに体育館内がざわざわ話し声がした。
『近年学校では漫画は駄目みたいな概念があると思いますが正直それは間違っていると思います。何故なら成績優秀な僕が漫画が好きだからです』
ざわざわざわざわ
すごい説得力、、それになんだか親近感が湧いてきた。
『漫画を置くことで図書室の利用頻度が増えれば自然と他の本にも興味が湧いてくるのではないでしょうか、もしその本が普段読まない本なのであれば僕の政策は有意義なものになる』
すごい、、、奈津橘パイセンこの人は強敵だ!!
『僕の演説はこれで終わりです』
ぱちぱちぱちぱち
彼の素晴らしい演説にただ聞き惚れてしまった。
次は奈津橘パイセン!!頑張れ!!
『次の方演説をお願いします』
奈津橘『この度生徒会長に立候補しました西城奈津橘です。私が考えている政策は身だしなみの自由化です!みんなオシャレして学校生活過ごしたいよねー?』
ざわざわざわざわ
『『『したーい!』』』
女子生徒達の黄色い声援がこだました。
髪型おかしい眉毛に前髪かかってるから駄目!スカート膝が隠れてない!!なんだその変な飾り、バックにつけてくるな!』
生徒指導の先生の声音を真似て言った。
体育館内が笑いに包まれる。
『もう嫌!!身だしなみは個性なの!それってとっても大事な事だと私は思います。何でもかんでも統一すれば良いなんてそんな事よくないと思いませんか?社会に出てもきっと個性は武器になるの!それを今から学んでおく事はとっても大事。そしてそれを学べるのは身だしなみ。朝起きて今日はどんな髪型で登校しようかなとかスカート彼氏に可愛く見られたいから今日は短くしよっとかそんな事考えるだけでも朝が楽しくなると思うの。男子たちだってミニスカ見たいよね!?』
男子生徒『『『みたーい!!』』』
かんた『みたーい!!』
パイセンに乗せられて元気よく答えてしまった。
男子の声に若干引き気味の女子たちもちらほら。
失礼しました。
完全に流れはパイセンのペース。
この人もすごい。
『バッグのアクセサリーの付け方も立派な個性の出し方、私が会長になったらそんな自由を約束します。生徒指導の先生達覚悟しなさい!!』
パイセンは生徒指導の先生達に人差し指をさしながら言う。
さされた先生達はちょっと嬉しいそうに呆れた表情をした。
再び体育館内が笑いに包まれて彼女の演説は終わった。
二人ともとても面白い政策を考えてくれていた。
どっちが勝ってもおかしくなかった。
強いて言えば男子に人気な政策は平塚さんの方で女子に人気なのはパイセンの政策な気がした。
俺も正直迷ったがやっぱミニスカが見たいのでパイセンに票を入れるつもり。
やっぱミニスカには敵わないよ!!笑
こうして生徒会総選挙は大盛り上がりで幕を下ろしたのであった。
※
教室に戻るとさっきの選挙の話題で盛り上がっていた。
どっちに票を入れようか何故か俺の席に集まって話し合っている。
男子生徒『俺は平塚に入れようと思っているよ、図書室に漫画だぞ??こんなん図書室ばっか行くわ』
男子生徒『俺も夏期講習とかも聞いてたらめっちゃ楽しそうだったな』
男子生徒『いや絶対奈津橘様だろ?みろよこの学校の制服の地味な事。可愛い子がミニスカ履いてるのとか見たくないか??』
男子生徒『漫画でも見れるだろ?』
男子生徒『はぁ?生の方がいいに決まってるだろ?』
無事さくらさんがスピーチを成功して静かに余韻に浸っていたかったのになんでこんな暑苦しい男達の声に囲まれていなきゃいけないんだ。笑
翔太『東雲さん可愛かったなぁ、、野球部やめようかなぁ』
翔太はガチでさくらさんに恋をしてしまったみたいだった。
男子生徒『めっちゃ可愛かったな!スピーチもめっちゃ良かった。実は面白い人なのかな。』
男子生徒『あのギャップ萌えたまらん!!これはランキング変更だな!』
あのスピーチを考えたのはここにいる彼なのだがみんなはそれを知る術はない。
男子生徒『あの清楚な感じ将来アイドルとかマジで出来そう』
盛り上がりはいつの間にかさくらさんの可愛さになっていた。
翔太がノートを持ってきて俺の机に広げた。
一位に東雲さくらさんと書かれた新しいランキングが出来上がる。
男子生徒たちがさくらさんについて盛り上がっている。
流星『よかったな、東雲さんのスピーチ、冒頭のあれ絶対おまえのアイデアだろ?』
流星が俺にしか聞こえないように言ってくる。
かんた『まあね、、滑らなくてよかった、、もし滑ったら土下座して謝る予定だった』
流星『なんだそれ』笑
翔太『おまえら何コソコソ話してるんだ?』
流星『なんでもないよ』
翔太『そうだったかんた東雲さんのスピーチ聞いて号泣してたんだった』
かんた『おい!言うなぁ!!』
男子生徒『マジか〜!!』
ケラケラ笑われて顔が真っ赤になるぐらい恥ずかしかった。
担任の先生が入ってきて自分の席に戻るように促される。
投票用紙が配られて今日下校の時に玄関の前、体育館、職員室前に投票箱がありそこに入れてから下校するようにとのこと。
結果は来週の月曜日に直ぐに発表されるらしい。
先生の説明が終わり今日最後の授業の六時間目が始まる。
この後は赤点補習会に行かなければいかない。
さくらさんはもうすぐ課題が終わると言っていたから今日からは居ないだろう。
スピーチの練習も終わって本当に彼女との特別な時間が終わってしまったんだなと感じてしまう。
彼女が遠くに行ってしまうような気がした。
ハァと心の中でため息をつく。
しょんぼりしながら黒板の板書を始めたのであった。
※
投票用紙に西城奈津橘と書いて体育館にある投票箱に入れた俺は赤点補習会の為に多目的室を目指していた。
赤点補習会が始まって一週間以上経っていた。
最初は地獄への入り口だと思っていたが彼女の存在で天国に変わっていた。
向かう足取りも今みたいに重たくなくとっても軽くてここ最近は彼女と会えるこの時間のことばかり考えていたような気がする。
ガラガラ
静寂に包まれた多目的室。
いつもは美しい彼女が窓の外を眺めていてこんにちはと挨拶を交わすのだが今日からはできないらしい。
外から部活動が始まったらしく元気な掛け声が聞こえてきた。
ドドンドドンと体育館ではバスケ部がドリブルをする音が始まる。
席に着いて残りの課題を早く仕上げる為にまだ始まっていないが直ぐにとりかかる。
残っている課題はまず漢字練習。
中間テストで間違えたやつをノートに三行ずつ書いていく。
ほとんど間違えたからノートのページは漢字で埋め尽くされるだろう。
読書感想文。
これはさくらさんから教えてもらった魔女の旅を読もうと思っている。
明日から休みなので土日に読んでみよう。
貸してくれると言っていたが残念ながら叶わなそうだ。
俺から貸してくださいと教室に行くなんてできないや、、、
自分で買って読もう。
読んだ感想彼女に話したいなぁ。
あっ、、そういえば俺彼女の連絡先知らないんだ、、
これだと読んだことをどうやって教えたらいいんだろう、、、
教室に行って伝えるしかない。
嫌だよねきっとわざわざ読んだことを教室にまで行って言いに行くなんて。
彼女はまったりとゆっくり学校生活を過ごしたいんだから。
迷惑に決まっている。
他の課題は、、数学もあったな。
間違えた問題をノートに解き直さないといけない。
たくさん間違えたからノートは数字で埋め尽くされるだろう。
そういえばさくらさんは数学が苦手だったんだよな、、
彼女のことばかり考えてしまう、、、
はぁ、、、
広げたノートを眺めながらため息。
ガラガラガラガラ
先生が教室に入ってきたみたい。
ドアが開いた音がした。
、、、、、
ん??先生の声がしなくてドアの方を見る、、、
えっ!?どうして、、、
スクールバッグを掲げたままドアの所で恥ずかしそうに立っているさくらさんがいた。
マスクを外していて可愛い顔が窓からの夕日をうけて赤く染まっているのがよく見える。
俺は無意識に立ち上がり固まって彼女のことを見ていた。
ドアを閉めるとゆっくり俺のところに歩いてきて少し距離を空けて止まる。
さくら『えっと、、スピーチ、、ちゃんとできたかな、、、』
かんた『えっ、、いままでで一番良かった、です』
彼女は照れながら上目遣いで俺の事を見てくる。
やばいキュン死しそうです!!!
可愛い!!!あー〜ー〜
マスクを外した彼女の顔の可愛さはもう言葉には表せない。
さくら『本当に、、ありがとう、、かんたくんとここで出会ってなかったらきっと私はあのステージには立てなかったです』
かんた『いや俺は別に何もしてないよ、、』
彼女は小さく首を横に振った。
お互い黙ったまま時間が経過する。
先生早く来て!このまま二人でいたらマジでキュン死するから!!
彼女はまだ何か言いたい様子。
さくら『えっと、、その、、課題たくさんあって困っていたら、、お手伝い、、します、、』
、、、、へっ??
理解が追いつかなかった。
今さくらさん俺の課題手伝うって言った??
かんた『えっ?でも、、』
さくら『か、課題はほんとは自分でちゃんとやらないとダメだよ、、でも、、早く終わらせていっぱいゲームしたいかなって思って、、私のせいで遅れちゃったから、、め、迷惑だったら、、帰ります、、』
かんた『迷惑じゃない、、』
迷惑なわけがない。ずっと一緒にいたい!!
もし課題を手伝ってもらい一緒にいられるなら遠慮なく手伝ってもらう!!
かんた『漢字練習いいっすか??、、、』
サラッとお願いしてしまった、
美少女に宿題手伝わせるとかなんだんだこの展開わぁぁぁ笑
彼女はうんうんと相槌を打つといつもの席に座る。
俺は彼女に漢字ノートを渡す。
さくら『課題の内容は、何すれば良いかな?』
かんた『間違えた漢字をこのノートに三行ずつ書いていくんだけど、、』
と言って間違えた漢字の書いてある二十三点のテストを見せる。
さくら『わかりました、頑張ります、字は見つからないようになるべく真似して書くね』
なんてしっかりしているんだこの人は笑笑
今俺が言おうとしたことを先に言った。
小学生の時夏休みの宿題が間に合わずに母ちゃんに手伝ってもらった時のことを思い出した。
その時は字があまりにも違いすぎて先生にバレた。
先生が教室に入ってきた。
担当先生『あれ?東雲さん課題は終わったのではなかったですか?』
さくら『え、、えっと、、まだ残っていました、、ごめんなさい』
モジモジしながら先生に嘘をついた。笑
嘘のつき方が可愛くてたまらない。
先生『なら早く終わらせて下さい、あと終わっていないのはあなた達だけですよ?』
かんたさくら『『ごめんなさい』』
二人揃って謝った。
彼女が恥ずかしそうにチラチラ俺の事を見てくる。
先生が教卓を机がわりに使い仕事を始める。
俺も残りの課題を終わらせる為に数学の問題を解き直していく。
気になって隣を見ると俺の課題に取り組んでくれている彼女の姿。
髪を耳にかける仕草をして色っぽさにドキドキする。
約五十分経って先生から休憩を言われ教室を出ていく。
ふぅ、、疲れた、、
姿勢を崩して少し休憩に入る。
さくら『漢字練習もう少しで終わります』
隣から彼女に途中報告を受ける。
かんた『ほんとに!ありがとう』
すごい、あんなにたくさん間違えたのにもう終わりそうだなんて。
彼女の集中力を感心してしまう。
さくら『他にも何かある?』
かんた『あとは読書感想文』
それを聞いて彼女がはっと思い出したかのような表情をする。
さくら『ごめんなさい朝バタバタしちゃって本を持ってくるの忘れちゃった、、』
かんた『大丈夫だよ、本番前だったし仕方がないよ、明日本屋に行って買ってから土日に頑張って急いで読んでみるよ』
さくら『うん、わかった、ごめんね』
かんた『ありがとうね』
お礼を言ったら照れた様子の彼女。
さくら『一つ思いついたんだけど、その、、魔女の旅ゆっくり読んで欲しいから読書感想文私が書いてあげる』
かんた『いいの??』
さくら『うん!かんたくんはゆっくり読んで感想文を私に提出するの、一緒にお話ししたいから、、、、ダメかな??』
ダメかなのところ髪を触り照れながら斜め下に目線を向けて言ってきて可愛くて心臓が飛び出してしまいそうだ。
かんた『全然ダメじゃない!むしろめっちゃ良いアイデア』
さくら『作文用紙に書けば良いかな??』
かんた『うん、これに書けって言われてる』
と言って作文用紙を彼女に渡した。
ガラガラ
先生が休憩から戻ってきた。
さくらさんに課題を手伝ってもらっていることがバレたらお説教タイムどころかやり直しをさせられるだろう。
まぁバレないとは思うが注意はしておかないといけない。
担当先生『では再開して下さい』
先生の合図で課題を再開する。
このままいけば今日中に終わらせれそう!
さくらさんほんとありがとう!!
最後の力を振り絞り全力で数学の問題を解き直していく。
もう少しで!もう少しでこの課題地獄から抜け出せる!!
長かった、、本当に長かったよ、、期末テストはちゃんと取り組むよ。
六月は期末テストと体育祭があるんだったよな。
今月も一高生徒は予定がみっちりだ。
担当先生『あれ?東雲さんあなた数学が赤点でしたよね?どうして国語の解答用紙を広げているのですか?あなた国語の成績は学年トップですよね?』
ドキッ!!!!
やばい!!
見つかった?先生なんでそんな変な事に気がつくんだ、、、
さくらさんを見ると、、、やばいめっちゃオドオドしておられる。
さくら『えっと、、、これは、、、』
万事休すと言った状態。
さくら『数学の課題はさっき終わってしまって、、受験に向けてちゃんと勉強しておかなきゃいけないと思って、、自分で課題を見つけて取り組んでいました、、ここで勉強する方が集中できて良いんです。下校しなさいと言われたら、、、します。』
担当先生『そうでしたか、いやここで集中できるのならやっていきなさい。』
ほっと肩の力を抜く。
なんとか誤魔化してくれたみたい。
さくらさんを見ると彼女もほっとした様子で俺と目が合った。
優しく微笑すると再びペンを動かし始める。
天使みたいだぁ
彼女の背中に小さな羽が生えているように見えた。
補習終了まで集中して課題をやりそしてついに!!
担当先生『今日の補習会は終了ですお疲れ様でした』
俺はさくらさんを見ると彼女は小さく頷く。
かんた『先生!課題終わりましたぁぁ!』
担当先生『やっと終わりましたか!早く提出してきなさい』
かんた『はい!!』
担当先生『期末テストはここに来ないようにしっかり勉強しなさい』
かんた『はい、、おせわになりました、、、』
担当先生『東雲さんあなたもですよ』
さくら『ごめんなさい、、』
先生が教室から出て行った。
かんた『さくらさん!課題終わったよ!!』
さくら『うん!』
彼女は嬉しそうにぱちぱち手を叩いている。
手伝ってくれた課題を受け取り中を見る。
ぎっしり俺の字を真似て書いた漢字の文字がノートに
埋め尽くされていた。
俺のために一緒懸命頑張ってくれて嬉しくてたまらない。
かんた『手伝ってくれてほんとにありがとう!』
さくらさんは首を横に振る。
さくら『それを言うのは私の方です』
かんた『帰ったら今日寝ないでゲームしよっと!やっと解放されたぁぁ』
さくら『うふふ』
かんた『とは言っても課題あってもサボってゲームしてたんだけどね、、』
さくら『だらぶち』
かんた『職員室行って課題置いてくる、、、あの、、もし良かったら、、この後一緒に帰りませんか??』
さくら『はい、ここで待ってます』
俺は職員室にダッシュで向かう。
毎度お馴染みツルツル滑る床をさあーッと滑る。
このツルツルの床ともお別れなのかと思うとほんのちょっぴりだけ寂し。
また赤点取ったら滑りに来てやるよ。笑
駆け足で階段を降り遠い職員室を目指す。
課題を提出して今度は彼女が待つ多目的室に戻る。
遠いなぁ笑
広い校舎を移動してくたくた、、
息を切らしながらドアを開けると、、、
腕を枕にして眠っている彼女の姿があった。
起こさないように彼女に近づく。
窓側の方に顔が向いていてどんな顔をしているのか覗き込んでみる。
幼さが混じった優しくて綺麗な寝顔。
本番を終えて俺の課題も手伝ってくれて疲れが溜まっていたのだろう。
別に急いで帰ることもないし暫く自分の席に座って彼女が起きる事を待つ。
、、、
さくら『、、、ごめんなさい!』
待ってる俺に気づくと謝ってきた。
かんた『今日は疲れたよね、ほんとにおつかれさん』
さくら『、、ありがとう、、』
かんた『帰ろっか、、』
さくら『うん』
かんた『そういえば奈津橘パイセンは一緒に帰らないの?』
さくら『奈津橘ちゃんは私が今日ここにいることを知らないから他の人と帰ると思います』
かんた『そっか』
後でLINEで生徒会選挙おつかれと言っておこう。
、、、、
LINE、、、
さくらさんと連絡先を交換したいです、、、
この帰り道の時、連絡先を交換しよってお願いしよう、、
断られたら、、かなり落ち込むな俺。
さくら『かんたくん??』
かんた『えっ?あっごめん』
考え事をしていてなかなか動き出さない俺をドアの所で待ってくれていた。
校舎を出て帰路についた。
真っ赤な夕日が沈みゆく美しい空の下。
夕日の反対には壮大な立山連邦。
部活の生徒たちの声が聞こえるいつもと変わらない帰路。
隣には美しい美少女。
一つ変わったことは彼女の顔にマスクがなくなったことだった。
散ることない満開の綺麗な桜をずっと見ているみたいだ。
たったったっ
相変わらずお互い黙ったまま彼女のローファーと俺の靴の音だけが会話していた。
かんた『さくらさん、その、、、』
彼女は不思議そうに俺が何を言うのかを待っている。
かんた『、、、連絡先、交換、、したいです、、、』
言えたぁ〜めっちゃエネルギー使った、、
さくら『、、、はい、私も、交換したいです』
照れながらそう言った。
かんた『ほんとに!?良いの!?』
彼女が了承してくれたことが信じられずにそんな事を言ってしまう。
彼女ははにかむ笑顔をしてうんうんと頷いている。
お互い歩みを止め俺はリュックを彼女はスクールバッグからスマホを取り出す。
恥ずかしがりながらスマホを近づけて連絡先を交換した。
彼女の連絡先が俺のスマホに登録されていることが夢を見ているかのような気がして疑ってしまう。
俺はスマホを弄って隣にいる彼女にLINEでよろしくお願いしますと言った。
彼女から可愛い熊のキャラが親指を立てているスタンプがおくられてきた。笑
かんた『このスタンプ奈津橘パイセンもよくおくってくるやつだ』
さくら『クマのくせに生意気だって言うアニメのスタンプです』
かんた『なんだそのアニメ』笑
さくら『奈津橘ちゃんとお家で一緒に見たことがあってその時可愛くって好きになってしまって、、スタンプでよく使ってます』
好きになってと言う言葉にドキッとしてしまう。
さくらさんに好きと言われてほんとにクマのくせに生意気だなこのキャラ!笑
かんた『そんなアニメがあったんだ、、』
あまりアニメを見ない俺は初耳だった。
さくら『とっても面白いから観てみてください』
かんた『うん、、、、絶対見る、、、、』
彼女がアニメを紹介している可愛い姿に見惚れてなかなか口が回らない。
かんた『アニメ好きなんですか?』
さくら『アニメはそんなに詳しくはないです、たまに奈津橘ちゃんのお家で一緒に見る程度です。彼女の方が詳しいからアニメのことは奈津橘ちゃんに聞いた方がいいです、、』
かんた『そっ、そっか、、へーー』
たったったっ
少しアニメの話で盛り上がったが会話が途切れてお互い黙ったまま駅まで歩く。
だんだん駅が近づいてきてしまう。
このまま駅になんか着かないでずっと一緒に二人で歩いていたかった。
沈んでいく真っ赤な夕日に照らされて顔が赤くなっているが夕日がなくてもきっと真っ赤だろう。
※
家に帰って自室のベッドの上で寝転がってスマホを眺めている。
母ちゃんが仕事で遅くなってしまいその時は姉ちゃんが晩御飯の支度をしてくれるのだが姉ちゃんも受験で忙しくて晩御飯が遅れてしまっていた。
、、、
俺はさくらさんとLINEをしたくてなんておくろうか必死に考えていた。
今何してる??お話ししよっ!
絶対ダメだあ、、こんなんカップルのやりとりだ。
改めてLINE交換ありがとうございます。これからよろしくお願いします。
んー〜なんか硬いなぁ、、これも却下。
ダメだあ!!なんておくればいいかわからん!!
もっと恋愛について勉強しておけば良かった。
少女漫画とか読んで女の人の考えとか学ばないといけないなあ。
平塚会長に頼んだら図書室に少女漫画いっぱい置いてもらえるじゃん。
でもパイセンに投票してしまった!!
今俺に一番必要なことそれは少女漫画をいっぱい読んで恋愛の勉強することだったぁぁ!!
、、、
たっぷり時間を使ってさくらさんにおくるメッセージを考える。
そうだ!
魔女の旅についてのメッセージなら普通に違和感なくおくれるかも。
かんた『月曜日、魔女の旅よろしくね。早く読みたいよ!』
なんか良いかも!!
俺はさくらさんにメッセージをおくった。
すると、、
すぐに既読がついた。
さくら『はい!月曜日必ず持っていきます!』
返信はっや!!
彼女はLINEの返事とかなんか遅いとイメージしていた。笑
それを皮切りに緊張が和らぎメッセージをおくっていく。
以下二人のLINEのやり取りをお楽しみ下さい。
かんた『晩御飯まだなんだ、、腹減ったよー』
さくら『私は今日うどんでした』
かんた『良いな!美味しいそう!!さくらさん家のうどん食べてみたい』
さくら『食べに来てほしいです!』
かんた『行く!絶対行く!!明日行く!!』
さくら 東雲屋場所の地図
かんた『地図ありがとう!場所わかったから大丈夫!』
さくら『富山駅からバスで十分程です』
かんた『わかった!俺バス酔いやすいからちょっと不安、、、』
さくら『そうなんだ、、体調気をつけてね』
奈津橘『LINEありがとう〜めっちゃ疲れた〜私の演説良かったでしょ??』
かんた『良かった!』
かんた『ありがとう!酔い止めたくさん飲んで行く』
奈津橘『でしょでしょ!!達磨も良かったって言ってくれたの!でも平塚に勝てるかやっぱ不安、、 くまが不安がるスタンプ』
さくら『ちゃんと決められた量飲まないとダメ!』
かんた『はい!そうします!』
さくら『くまが親指を立てるスタンプ』
かんた『パイセンなら大丈夫だよ!もし負けたら一緒に図書室に漫画読みに行こう笑笑』
奈津橘『はー?絶対嫌!!縁起でもないこと言わないで!! くまが怒って目が赤くなっているスタンプ』
かんた『おすすめのメニューとかある?』
かんた『パイセンなら大丈夫だって!ルーズソックス履く練習でもしておいた方が良いよ、あれ履くの難しそうじゃない??』
奈津橘『笑笑』
さくら『おすすめは釜揚げうどんかな、一番お父さんのうどんの良さを味わってもらえると思います』
かんた『わかったならそれにする』
さくら『くまが喜んで両手を上げているスタンプ』
奈津橘『かんたも履いてみる??』
かんた『嫌だわ!俺のルーズソックス姿とか想像しただけでも気持ち悪い笑』
奈津橘『意外と女装似合いそうな顔してると思うよ!』
かんた『却下します!』
奈津橘『くまが肩を落として落ち込んでいるスタンプ』
奈津橘『この後空いてたらモンハンしよっ!』
かんた『もうすぐ晩御飯、彼氏としてなさい』
奈津橘『今配信中なの、、、』
かんた『そか』
うん奈津橘パイセンKY(空気読めない)だな!!笑
さくらさんと二人でLINEしていたかったのに邪魔が入った。笑
さくらさんに返信しないと汗汗
奈津橘『今度私の家でえんどう豆パーティしようと思うんだけど来ない?私とさくとかんたの三人だけだけど、、二人とも私の為に頑張ってくれたお礼も兼ねて、費用は私が出すから』
かんた『えんどう豆パーティ?なんじゃそれ笑』
めっちゃ楽しそう。
えんどう豆パーティなのはさくらさんが好きだからだろう笑
彼女も参加するみたいだ。絶対行く!!
かんた『行く!楽しそう!!』
奈津橘『オッケー、詳しくは後日に、部活の予定とかあるから〜』
かんた『わかった』
さくら『明日来るならその時本を渡します』
かんた『忙しくない?大丈夫?』
さくら『渡すだけなら大丈夫だよ』
かんた『わかった!なら明日お願いします』
奈津橘『改めてさくのスピーチ練習手伝ってくれてほんとにありがとう!!』
さくら『はい!ではまた明日。今日は疲れちゃったから早めに寝ます。私の為に頑張ってくれてほんとにありがとう!!』
二人にお礼を言われて嬉しい気持ちになる。
頑張って良かった!
姉『なにニヤニヤしてるの?』
かんた『姉ちゃんっ!!』
びっくりして上半身を起こす。
脚をクロスさせて腕を組んでドアに少し寄りかかる姉がいた。
LINEに夢中になって姉ちゃんがドアを開けていることに気づかなかった。
姉『晩御飯できたって言ってるのに反応ないからドア開けたのよ、楽しそうね』
かんた『べつになんでもいいだろ、、』
姉ちゃんは一瞬口の端を上げた。
姉『早く来て、冷めるから』
かんた『ほい〜』
この後晩御飯を食べて少し配信して奈津橘パイセンと他の二人のリスナーでモンハンを遊んでから今日一日を終えた。
※
月曜日、生徒会選挙の結果が発表される日。
体育館に集められた俺はそわそわしながら結果が発表されるのを待っている。
どちらが生徒会長になってもきっと良い学校生活を過ごせるだろうと思うがやっぱりさくらさんの事を思うと奈津橘パイセンに勝ってほしい。
ステージには立候補者二人が中央から少しズレたところで座っている。
平塚大河は堂々と胸を張って座っていて奈津橘パイセンはキョロキョロ落ち着かない様子。
その姿が可愛くてたまらない。
翔太『奈津橘先輩可愛い、、』
ボソッと後ろから呟く声が聞こえた。
わかるよその気持ち!
進行役の放送部の女子生徒が登壇してマイクのある中央に立った。
『それではみなさんお静かにお願いします。これより今回行われました生徒会選挙の結果を発表いたします。』
騒がしかった体育館が静かになっていく。
その時を固唾を飲んで待つ。
『それでは今期生徒会長に任命されたのは、、
西城奈津橘さんです』
よっしゃ!!!
彼女の名前が言われるとぱちぱち拍手と黄色い歓声で体育館が揺れる。
平塚大河は嘘だろっと呆気に取られている。その横で奈津橘パイセンがぴょんぴょん飛び跳ねて喜んでいる笑
生徒会長らしくない姿、でもそれが良い。
『それでは生徒会長からみなさんに一言お願いします』
彼女が中央マイクの前に立つ。
生徒たちが彼女が何を言うのかと勝手に静かになっていく。
奈津橘『みんなのおかげで生徒会長になることができました!みんなと楽しい学校を作っていくわよ〜よろしくねー』
生徒『『『おめでとう!!!!!』』』
柔らかくて暖かい体育館内の雰囲気。
これからの学校生活がワクワクしてくるようなそんな気持ちにさせられる。
暫く彼女を祝福する歓喜は鳴り止まない。
彼女はステージから飛び降りると生徒たち人混みに紛れてしまい姿が見えなくなってしまう。
きっとさくらさんの元に行ったのだろう。
二人が涙を流して抱きしめ合っている姿が目に浮かび俺の目頭が熱くなった。
第一章、運命の赤点補習会編 完