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初恋

富山第一義塾高校に入学した俺、金田かんたは校門の所で口を間抜けに開けて立ち尽くしていた。

県内で一番大きくて生徒数も一番多いこの進学校。

岩波のど田舎の町で育った俺にとってはこの田舎の学校は都会と変わらない。

たくさんの生徒たちが談笑したり一人早足で黙々と歩いていたりして学校の玄関に吸い込まれていく。

『かんたー行くぞ?』

俺を呼ぶのはサッカーが上手いイケメンの小学校からの友達、永遠流星。

左手をポケット突っ込んで右手でスクールバッグを背中に持っている。

彼の元へ軽く走り玄関に向かう。

学校を囲う壁に沿って松の木が植えられいる。少し奥には綺麗な桜が咲いて俺たちを歓迎してくれる。

靴を履き替える。

新しい学校生活にワクワクや不安がたくさん、教科書と一緒にリュックに閉まって廊下を進む。

一学年五クラスの三十人、俺と流星は奇跡的に同じクラスで三組になった。

『校舎の中も広すぎる、、迷子なりそう、、』

だなと流星が呟く。

廊下にもたくさん生徒が行き交っているがまだ入学したばかりなのか話し声はあまりしない。

階段を上がり一年生は四階へ。流星と三組に入る。

最初は出席番号順に座ることになっていて俺は窓際の後ろの方、流星は隣が今の席。

後ろの方なのでみんなの様子が見える。まだ緊張している生徒が多くてみんな自分の席に座っている。

流星がニヤニヤ俺の顔を見てきたので右の口の端を上げて答える。

時間になると担任の先生がやってきてホームルームが始まった。

退屈な先生の話を所々頭に入れながらキョロキョロ窓の外を見たり可愛い子がいないか探す。

入学最初の授業はこれからの授業の進め方の説明や移動教室の場所の確認。一限目は音楽になっていて移動教室。

担任の先生から学校の地図が配られる。それに目を通してこの学校の広さに改めて驚く。

音楽室は三階にあってどうやら二年生の教室の前を通っていくルート別の階段から行くルートと様々。

『なぁかんた、音楽室はこの二年生の教室の前を通っていこうぜ』

小声で流星が話しかけてくる。

『良いけど、なんで、、?』

『可愛い子探すぞ、、』

『なるほど、、オッケー、、』

流星の提案に大賛成する。高校一年生の男子の思考はみんなの同じなのかもしれない。

ホームルームが終わると音楽の教科書を取り出して流星とダッシュで二年生の教室の前へ行く。

可愛い子を探しながら何食わぬ顔で先輩たちの廊下を歩く。

ざわざわ賑やかで窓の外を眺めながら何か話していたり男子達が追っかけて遊んでいたりしている。

、、、

奥から一人の女子生徒が少し俯きながら歩いてくる。サラサラの長い黒髪、前髪は眉毛のところでぱっつん、マスクを付けているのだが顔が小さくて顔のほとんどマスク状態。

目はぱっちり二重で涙袋が大きい。物静か、控えめな印象。

めっちゃ、、、可愛い、、、

俺の横をすれ違った。心がドキドキする。振り返って彼女の行く先をボーっと眺める。そのまま五組の教室に入って行った、、、

気づけば俺は彼女の事で頭がいっぱいになっていた。

『どうした?』

『へっ??』

間抜けな声を漏らす。流星は他の所を見ていて彼女に気づいていないみたいだった。

彼女は自分の存在を隠すように目立ちたくないようにと思っているように見えた。だから気づかなかったのだろう。

それにもし気づいていたらどうしたとは言わない、今の人めっちゃ可愛いっていうと思う、、、世の中の男子みんな可愛いって言うような人だと思う。

『可愛い子みつけた??』

『...いや...おらん(いない)富山弁』

流星に嘘をついた。別にいたと言っても良かったが今は一人で思いに更けていたいと思ってしまった。、、

浮かれた気持ちで廊下を進む。流星にあの子可愛いと教えられるが全く頭に入ってこない。そうだねーと言って軽く誤魔化す。

さっきの彼女の事しか考えたくなかった。初めての気持ち。

声を聞いてみたい、性格はどんな人なんだろう、さっきの感じだとやっぱ控えめなのかな、、、彼氏はもういるのかな、あんな可愛い人だから居るよね、きっと、、、ハァ

二年生の教室の前の廊下を進んだ先には音楽室ではなく今までとは全く違う感じたことのない別世界につながっていた。

俺は彼女に一目惚れしてしまった、、、

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