表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/14

第5話:竜人の使用人クリフ ※クリフ視点※


 僕はクリフ・カート。竜人の貴族エリアザード辺境伯家に仕える使用人だ。


 僕には父親がいなくて。母親はエリアザード家の使用人として、住み込みで働いていた。

 僕は子供の頃から母親の手伝いをしていたから。母親が身の回りの世話をしていたエリアザード家の四男、グレイオンとは自然と知り合いになった。


 だけど僕が10歳のとき。母親が病気で倒れて、そのまま亡くなった。

 当時の僕は子供だったから、母親の事情は良く解らないけど。僕には親戚と呼べる人がいないくて。母を亡くした僕は、天涯孤独になった。


 エリアザード家に、死んだ使用人の子供を養う義理がある筈もなく。僕が追い出されるところを、救ってくれたのがグレイオンだった。


 これは後になってから、他の使用人に聞いた話だけど。


「俺の世話をする使用人を雇う? 使用人なら、ここにいるでしょう」


 エリアザード辺境伯が新しい使用人を雇おうとしたとき。グレイオンがそう言って。僕は母親の代わりに、使用人として雇われることになったらしい。


 使用人になってからも。10歳の子供に過ぎず、仕事のできない僕は、周りの使用人たちに虐められた。


「なあ、おまえたち。俺の使用人に何をするつもりだよ?」


 グレイオンは、そんな僕を見掛ける度に助けてくれた。


「グレイオン様……ありがとうございます……」


 僕がお礼を言っても。


「何を勘違いしているんだよ? おまえが虐められて逃げ出したら、俺が自分で面倒な雑用をすることになるから。俺の都合で勝手にやっただけだ」


 グレイオンは決して、恩着せがましいことを言わない。


 それに使用人としての仕事だって。グレイオンは子供の頃から、僕が自分で仕事を見つけないといけないくらい、全然手が掛からなかった。


 だからと言って、僕は仕事をサボるつもりはないから。手が空いているときは、グレイオンが住んでいる城の離れの掃除や、庭の草むしりしたり。


 他の使用人たちの仕事を率先して手伝ったら。皆も次第に僕のことを認めてくれるようになって。虐められることがなくなったのも、グレイオンのお陰だと思う。


 だから僕はグレイオンには、本当に感謝しているけど。一つだけ困ったのは、たまにグレイオンの鍛錬に付き合うことだ。


 グレイオンも僕が弱いことは解っているから。当然、手加減してくれて。せいぜい半殺しにされる(・・・・・・・)程度だけど。今でも僕は生きているから、問題ないよね?


 そんなグレイオンが、エリアザード家を追い出されることになった。

 理由は解っている。グレイオンは竜人なのに、竜の姿になることができないから。


 そんなことで家を追い出されるなんて。無茶苦茶理不尽だと思う。

 だけど使用人の僕がとう思おうと、何をしようと。エリアザード辺境伯の決定が覆される筈もなく。


 グレイオンも追い出されることが解っていたから。1人で生きて行くための準備をずっと進めて来た。


 僕がグレイオンが戦うところを見たのは、二人の兄との模擬戦というか。嫌がらせをされているところくらいだけど。素人の僕でも、グレイオンが強いことは何となく解る。

 だからグレイオンなら、1人でも生きて行けると思うけど。


「グレイオン様が出て行くなら、僕も一緒に行くよ」


 僕がグレイオンについて行くことを決めたのは、一人で生きていく寂しさを知っているからだ。

 グレイオンが助けてくれなかったら、今の僕はないから。今度は僕がグレイオンを助ける番だ。


 そう思っていたんだけど――


 何故か、僕はグレイオンと一緒に辺境地帯に連れて来られて。


 僕たちを連れて来た竜人の騎士は、巨体な化物に食い殺された。


 だけど僕とグレイオンは、まだ生きている。グレイオンが巨大な化物を瞬殺したからだ。


 え……グレイオンって、こんなに強かったの?


「クリフ。死にたくなかったら、俺の傍から離れるなよ。辺境地帯にはヨルムンガンドみたいな化物が、たくさんいるからな」


「グ、グレイオン! ちょっと、待ってよ!」


 いったい何が起きたのか。全然、理解できないけど。


 僕はグレイオンについて行くしかなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ