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プロローグ


「よくも我が眷属たちを……だが貴様もここで終わりだ。本当の絶望と言うモノを教えてやろう!」


 古城の広間。玉座に座るドレス姿の女。腰まで伸びた血のように赤い髪。金色の瞳。透明感のある白い肌。そして唇から覗く鋭い牙。


 嗜虐的な笑みを浮かべる絶世の美人は、始祖ヴァンバイアのエリザベート・ブラッドスキュア。

 またの名を『不死の女王(ノーライフクイーン)』と呼ばれる最強のアンデットだ。


 エリザベートは玉座から立ち上がると。自分の血を凝縮して剣の形にする。

 始祖ヴァンバイアは体内に膨大な魔力を秘めているから。始祖ヴァンバイアが血で造る剣は、聖剣に匹敵する威力を持つと言われている。


 エリザベートが一気に加速して。音速を超える速度で襲い掛かる。

 俺が躱すと、血の剣が放つ魔力が地面を抉って。一瞬前まで俺がいた場所に、巨大なクレーターができる。


「ほう。今の攻撃を躱すとは……だが、いつまで持つか。見モノだな!」


 エリザベートは続けざまに攻撃を放つ。飛び散る斬撃だけで大地を抉る激しい攻撃の連続だ。


 俺が剣で受けると。エリザベートはさらに加速する。


「これも受けるか……貴様の力は人間風情にしておくには惜しいな。我が眷属となれば、永遠の命を与えてやるぞ」


「そんなものは欲しくないね」


「そうか……ならばここで死ね!」


 エリザベートの攻撃が、さらに激しさを増す。それでも俺は剣で受け続ける。

 だけど、ここに来て。エリザベートも、ようやく異常(・・)に気づいたようだ。


「貴様……先程から、一歩も動いていないではないか。それに私の攻撃を完璧に防いでいるだと……どういうことだ?」


 膨大な魔力を放つ血の剣を受け止めているのに。俺は服すら無傷だ。


「一歩もってのは語弊があるけど。下手に動き回ると、おまえは余計なモノまで壊すからな。だけどおまえの実力はもう解ったし。ここからは俺のターンだ」


 俺が放った剣を、エリザベートは血の剣で受ける。俺の攻撃くらいは、余裕で止められると思っていたみたいだけど。

 俺が少しだけ本気で(・・・・・・・)魔力を込めた一撃は、血の剣ごとエリザベートの身体を真っ二つにする。


「ば、馬鹿な……こんなことは、あり得ぬ……」


「単純な話だよ。俺の方が強いってことだ。まあ、おまえは始祖ヴァンバイアなんだから。こんな攻撃じゃ死なないだろう?」


 始祖ヴァンパイアの圧倒的な回復力で、一瞬で身体を再生すると。エリザベートから放漫さが消える。


「良いだろう……貴様と私のどちらが本当の強者か、確かめてやる!」


 エリザベートは執拗に攻撃を繰り返す。だけど何度やっても同じことだ。

 エリザベートの攻撃は、俺には一切効かずに。俺の剣はエリザベートの血の剣と身体を容易く切り裂く。


 エリザベートは何度も再生を繰り返すうちに、さすが魔力が尽きて来たようで。再生速度が遅くなる。こいつの魔力も無尽蔵って訳じゃないみたいだな。


「貴様が強いことは解った。侮ったことは詫びよう。だがな……『不死の女王(ノーライフクイーン)』である私が敗ける訳にはいかぬ!」


 それでもエリザベートは逃げるつもりも、諦めるつもりもないようで。これが始祖級ヴァンパイアのプライドって奴か。


 俺が次の一撃を入れると。エリザベートは何とか再生するけど。血の剣を作ることもできずに、もうほとんど動けない状態だった。


「このエリザベートを、ここまで追い詰めるとは……貴様は誇って良いぞ。さあ、一思いに殺せ……」


 俺はエリザベートを抱え上げると。強引に唇を奪う。


「な……貴様は何をするのだ?」


 エリザベートが唖然する。戸惑う金色の瞳に俺が映る。


「誇り高き『不死の女王(ノーライフクイーン)』か……エリザベート。おまえは良い女だな。俺はおまえが欲しくなったよ」


 俺はエリザベートを抱き締めて、もう一度唇を重ねると。


「嫌なら嫌って言えよ。おまえが拒絶しても、俺はおまえを殺すつもりはないからな」


 エリザベートの背中に指を這わせて、ゆっくりと服を脱がせる。


「き、貴様は何を考えて……わ、私はヴァンパイアだぞ……」


「だから何だよ? エリザベートが良い女だってことに、変わりはないだろう」


 俺はエリザベートを押し倒す。


「一応、言っておくけど。俺は人間じゃなくて、竜人(・・)だから。俺にはヴァンパイアの魅了は効かないし。俺の血を吸っても、眷属にすることはできないからな」


 俺はグレイ。竜人とは竜の姿になることで、強大な力を得る人外の種族で。

 竜の姿になれない(・・・・・・・・)俺は、出来損ないと言われて来たけど。どういう訳か、俺には人の姿でも普通の竜人より強い魔力と身体がある。


「ば、馬鹿なことを言うな……わ、私はそんなことを考えて……あっ……」


 エリザベートの声が可愛い。配下の眷属たちを殲滅したから。ここには、もう誰も邪魔する奴はいない。


 出来損ないと言われた俺が、戦い続ける理由。それは最強を目指すとか、他の奴を見返したいとかじゃなくて――


 エリザベートのような強い女(良い女)と出会うためだ。


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