26話 雪の夜
2年前 1978年 12月
与島新太郎は、粉雪の降る中ポケットに手を突っ込み〝スナック愛〟に向かった。
〝スナック愛〟の扉を開けると、「いらっしゃい!新太郎さん!」とママが声をかける。
新太郎は、「ママは、雪にも似合うんだね」とおべっかを言う。
「相変わらず、口がお達者ね、あっ!この男の子、昨日から働いてもらってる上山満雄君、宜しくね!」とパンチパーマの青年を紹介した。
新太郎は、「上山君ね、宜しく」と挨拶し上山も「宜しくお願いします!」と返した。
〝小次郎〟22時
〝小次郎〟の電話が鳴る。
卓が電話を取ると電話口から、騒ぎ声が聞こえる。
「あっ 卓君?お父さんがウチの新人と喧嘩しちゃって大変なの!止めに来て!やめなさいってば!」と電話が切れる。
卓は、慌ててジャンパーを着て飛び出した。
「わかったよ!いいんだなくそジジイ!」
卓がスナック愛に入ると奥から、〝拳銃〟を取り出した上山がいた!
「キャー」と言う愛の悲鳴中、上山は新太郎の胸を撃った!
卓は、「この野郎!」と体当たりし、拳銃を奪う!
「親父に何すんだ!」と銃口を上山に向ける!
「卓君!ダメ!」と叫ぶ愛の声を「パン!」と言う銃声がかき消した。
胸から血を流す新太郎を卓が抱きかかえる。
「卓‥俺はもうダメだ‥俺とコイツを埋めろ‥爺さんがよく行く松の下に‥爺さんには、知らせないでくれ‥美登里を呼んでくれ‥ママ‥川井に電話して埋める段取りをたのんでくれ‥卓‥しっかり生きろよ‥‥」と新太郎はそこまで話すと絶命した。
松の木の下に、まず新太郎を埋めそこから1メートル土を埋め、それから上山を埋めた。
粉雪が、卓、美登里と川井達5人を心も身体も凍らせた。