21話 伝授
翌朝 〝小次郎〟
朝、早くから怒鳴り声が聞こえる。
「違う!こうじゃ!こう!」
声の主は、与島太助であった。
なにやら、孫の卓に〝魚〟の捌き方を教えている。
卓は、「わかるって!」と反抗的な態度をとると、太助は、「早く、お前に〝小次郎〟を任せたいんじゃ!しっかりせい!」と励ました。
千倉漁港
〝ランボルギーニ・ミウラ〟が停まっている。
綾小路は、タバコ吸いながら海を見ている。
「徹夜はキツイ歳だな‥」と呟く。
ミウラの赤いボディは、朝日を浴びて、より輝きを増して綾小路の〝真犯人〟を捕まえると言う、静かな信念を象徴するかのようであった。
そのミウラのそばを、川井源太郎達が通る。
「なあ?この中に川井さんはいるかい?」と綾小路が問うと「アンタ、誰だ?」と川井は、どう見ても東京からきた遊び人に見える綾小路を怪訝に思い言葉を返す。
綾小路は、胸から警察手帳を出し「アンタが川井さん?スナック愛の常連だったみたいじゃない?ニュース見た?殺人現場らしいって?話を聞きたいから、署まできてくれないか?」と任意同行を求める。
川井は、「俺か⁈話す事なんて何もないぞ!たまに飲みに行っていただけだ!」と拒否する。
綾小路は、指を左右に振り、「いや、あながちウラがない訳じゃないんだけどね!アンタが加藤愛に好意を抱いていたのは、わかっている。だいぶ口説いていたそうじゃないか?」と体格の良い川井に一歩も引かない。
「さあ!乗りな!」「断る!」と押し問答が繰り広げられる。
そんな時、警察無線が鳴る!
〝綾小路警部!与島太助と言う老人が自首して来ました!息子を殺して埋めたと言っています!〟
「何!」綾小路は、慌てて、無線機を手にして、〝了解!〟と一言返し、川井に向かい「いずれまた、会うだろう!真実は一つだ!」と言い残し、
ミウラを発車させた。
川井達は、何も言わず顔を見合わせた。
千倉警察署
「酒田辰之助!釈放だ!」と警察官が留置している辰之助に話す。
「当然じゃ!」と言い、パンパンと衣服をはたいた。
警察官に連れられた酒田辰之助と与島太助がすれ違う。
与島太助には、〝手錠〟がかけられていた。
辰之助は、「お前‥何があったんじゃ?‥ワシはただ‥」とすれ違いざまに話かける。
与島太助は、「言わなくても、お前の気持ちは分かる‥言わなくても‥」と話すと、警察官が「余計な無駄話しは止めろ!」と否めた。
二人とも、最後の〝言葉〟かもしれないと言う予感がしていた。




