13話 舟盛り
6人を乗せたワゴン車は、民宿〝小次郎〟に着いた。
女将の与島美登里は、車を停めると、6人に「ここがウチの民宿よ!息子にお風呂の用意させてるから、お入り!一個しかお風呂ないから、女の子からだね!さあ部屋はこっちだよ!」と敷地内に3棟建っている内の一つを指差した。
その建物は、新しくもなく、さして古くもなく、
外階段から2階を案内された。
勝也は、スコップを下に置こうとすると、主人の与島太助が「何か掘っていたのか?」と杖をつきながら、鋭い眼光で睨む。
勝也は、「いや‥その‥」と返答に困ってると、
隊長 美代が「里見家の埋蔵金探しですよ!ハハハ
やっぱりないんですかね?〝埋蔵金〟」と無理な明るさを作った。
太助は、「そんなものは、ただの言い伝えじゃ!
探しても無駄じゃ!」と不機嫌になり、台所のある主屋に向かった。
〝小次郎〟別棟 2階
部屋は、20畳ほどの広さがあり、男女一緒に寝る事となるようであった。
伊藤は、荷物を置き「疲れた〜」と畳にひっくり返る。
萩原は、丁寧に皆の靴を並べている。
酒田は、「腹減った〜」と伊藤と同じく、ひっくり返った。
美代は、「妙香ちゃん、お風呂行こうか?」と妙香を誘い、風呂に向かった。
風呂は、また別棟となっていて、そのそばにいくと、1人の高校生らしき、少年を見かけた。
少年は「お風呂できてるよ!あっお姉さん美人!
名前は?」と〝たけのこ族〟を思い起こさせる、ヤンチャな風貌で、声をかけて来た。
美代は、〝軽いノリ〟があまり気にいらなかったが、「美代よ!オタクは?」と聞き返した。
「俺は与島卓だよ、ヨロシク!
覗かないから、安心して入って!」と笑い出した。
「宜しくね!卓君!」と言って風呂に向かった。
勝也と伊藤は、敷地内を歩いて、主屋の台所を覗き込むと魚を捌く為に、太助が包丁を研いでいた。
覗き込む二人を太助は、見つけると睨みつけ、
「待っておれ、急いで魚を用意する!」と言って、
再び包丁を研いだ。
「わかりました!」と二人は怖くなり逃げ出した。
男子4人も風呂に入り、穴掘りで泥だらけになった体を洗い流した。
先に洗い終わった、萩原と酒田は、風呂桶に浸かり、「♪いい湯だな!あはは〜」とドリフの歌を歌い出した。勝也と伊藤も合唱に加わった。
男子4人が風呂を終え、部屋に戻ると、テーブルには、豪華な舟盛りが用意されていた。
酒田は、「すっげ〜お刺身!」とはしゃぎ出し、
よだれが出て来ていた。
ややしばらくして、息子の与島卓が、お米の入ったお櫃と汁物を持ってきた。
美代は、「すごい美味しそう!ありがとうございます」と礼を言って、続けて「卓くん、お父さんは?」と聞いた。
卓は一瞬真顔になった。
怖いくらい‥
直ぐに、明るい卓にもどり、「親父は、行方不明さ!多分、飲み屋の女と蒸発したよ!」そう言って
お櫃から、お米をよそりだした。
6人は、顔を見合わせ、埋められていた〝骨〟の事を思い出した。