10話 発見
「うーん、歩くと結構あるね」〝隊長〟美代は、地図と宝の地図を見比べ思案した。
時間は、すでに午後1時を回っていた。
伊藤と酒田は、勝手に駅前をうろちょろしていた。
「そこの二人!勝手な行動しない!」と美代は、本気で隊長気取りであった。
美代と勝也は、駅前に一台だけ止まっていたタクシーの運転手に声をかける。
タクシーの運転手は、「6人はきついっぺよ!」と
全員を乗せることに、難色をしめしたが、美代が
「子供は、0.5で考えれば4人じゃない?いいでしょ?ねえ、お兄さん?」と甘い声をだし、交渉を成功させた。
タクシーの助手席に美代と妙香が乗り、後ろに勝也達4人が乗った。
夏の日差しは暑く、風にのって香る海の匂いが、
皆んなの気持ちを浮かれさせた。
「スゲエ!クーラーついてるよ、涼しい!」と勝也は、初めてクーラーのついた車に乗った事に感動した。
タクシーの運転手は、美代の見せた〝宝の地図〟でおおよその検討はつけた。
「多分、このあたりだっぺな?」と車を停めた。
「ありがとう」と美代は、伊藤博文の千円札を一枚だし、お釣りを受け取った。
6人は、小松寺から3キロ離れた野原にある松を直ぐに見つけた。
何故ならその辺りには、松が一本しかないのである。
「あそこだ!」と伊藤は、スコップを勝也から奪い走り出す!
美代は、「危ないから!足元ちゃんと見て!」と注意し、後ろから200メートルほどの距離を歩く。
妙香は、「キャ!」とカミキリムシに驚いた。
6人は、松の木の下まで来て、「さあ!掘るわよ!」と美代の号令で、伊藤、勝也、萩原、酒田が順番で掘り出す。
妙香は、駅前で仕入れた。コーラやプラッシーを掘り終えた勝也に栓を抜いて渡す。
日差しは、徐々に傾きつつあった。
掘った穴は、直径1メートルで、深さは1メートルになろうとしていた。
「やはり、簡単には見つから〜ず」と荻野は、泥だらけの顔でこぼし始めた。
夜までに、家に帰るには、タイムリミットと言うところであった。
勝也の番になり掘っていると、何やら〝布〟らしきものが、出てきた!
穴の中から勝也は「何かあるぞ!」と叫ぶ!
皆は、慌てて穴を覗き込む!
美代は、「ヤッター!本当?」と妙香とハイタッチしている。
伊藤は、「変わるよ!」とエンジンがかかり、倍速で掘り始める!
辺りは暗くなり始めていたが、妙香が用意した懐中電灯が役だった。
夜 7時
酒田の番になり、堀進める。
4人に疲れが見え始めたその時!
〝ゴツ!〟と酒田が手応えを感じる!
「皆んなあった!」と叫ぶとまた皆穴を覗く。
酒田が丁寧に、手でその周りの土を取り除く。
出てきたのは長さ50センチはある〝白骨〟であった。