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聖剣士物語(仮)  作者: レイファ
序章 レベン村の子供達
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#5 序章 5話

 露店等が立ち並ぶ区画を抜けた先の一際大きな建物の前で、ジュリアスとレヴィンはその建物を見上げていた。それはヘザーの街の教会であった。


 「でけ〜〜〜〜〜!」

 「う、うん。三階建ての建物?初めて見た……」

 「あぁ、たしかにデカいよな。とりあえず、早く中に入ろうぜ」


 教会の中に入って進むとカウンターがあり、1人の厳格そうな雰囲気の中年シスターが立っていた。


 「聖オルディオス教会ヘザーの街支部へようこそ。朝の礼拝はもう終わっていますが、何かご用ですか?」

 

 マリウスがシスターにレベン村のモーリス神父の遣いでグラフェス司教に届け物を持って来た事を告げると、ジュリアスはモーリスから預かった封筒を見せる。

 シスターは受け取った封筒の蝋印を念入りに確認すると、封筒をジュリアスに返す。


「たしかに、レベン村支部の蝋印ですね」


 中年シスターは机の上にある小ぶりなベルを鳴らすと、別の若いシスターが早足でやって来た。


「お呼びでしょうか?」

「シスターアニス。こちらはレベン村支部、モーリス司祭の使いで来た子達です。

 この子達をグラフェス司教の部屋に案内して下さい」

「かしこまりました。さ、あなた達。私について来て下さい」


 マリウス達はシスターアニスの後について教会内を進む。

 レベン村には2階建ての建物はないため、レヴインとジュリアスは階段から階下を何度も見下ろしていた。


 しばらく進み3階奥、両開きのドアの前に到着する。

 アニスは軽く身だしなみを整えてからノックをする。


「お入りなさい」


 やや高めの男性の声を受けてアニスがドアを開け、マリウス達に微笑みつつ手で入室を促す。

 マリウス達が入室した後、アニスは入室せずに一礼する。


「グラフェス司教。レベン村支部、モーリス司祭の使いでいらした子達をお通ししました」

「ご苦労様でした。シスターアニス、戻って頂いて結構です」

「はい。失礼致します」


 マリウス達はアニスに会釈すると、アニスはドアを閉め去っていった。

 マリウス達は振り返ると、左右の壁際に兵士が一人にづつ控えていた。その奥に濃い茶髪で細身の老人が座っていた。



「よく来ました。私が司教のグラフェスです。キミ達の名前は?」


 ジュリアスとレヴインは前に出る。


「ジュリアスです」

「レヴィンです」

「マリウスです。僕は2人の付き添いです」


 ジュリアスとレヴィンをチラッと見た後、マリウスを観察するかの様にじっと見る。


「な、何ですか?」

「いえ、何でもありません。3人ともよく来ました。モーリス神父の使いで来たのでしたね?」


グラフェスの問いに、レヴィンは懐からモーリスから預かった手紙を取り出し、グラフェスの机に置いた。


「モーリス神父から、手紙をグラフェス司教に届けるように言われました」

「僕はこの鍵を持って行くように言われました」


 レヴィンとジュリアスが机の上に手紙と鍵を置くと、グラフェスは手紙を手に取り裏返し、蝋印を確認すると封を切り手紙を読み始める。


 手紙を読み終えたグラフェスが鍵に手をかざすと、鍵に淡い光りが灯るとスーッと光りが消えた。


「「なっ!?」」

「な、何!?今の?」

「ほっほっほっ。今は魔法という物です」

「魔法……」

「初めて見ました」

「オレも……」


 レヴィン達は鍵をまじまじと観察して、何となく鍵がキレイになった気がした。


「これで鍵を使える様になりました。地下にこの鍵を使う扉があり、その奥に“精霊の瞳”と言う祭器が扉の先を進んだどこかにあります。

 物は中央に大きな宝石が付いた冠の様な感じの物で、中央に宝石が持って来て下さい」

「「わかりました」」

「……ん?どこかにって、どういう事ですか?」


 ジュリアスとレヴィンの後ろでじっとしていたマリウスが身を乗り出す。


「精霊の瞳はいくつもの守りが施されています。それらがどういう物は言えませんが、私達では地下の扉の先には行けないので、中がどうなってるのか知らないのです」

「えっ!?」

「何それ!?」

「ま、魔法……ですか?」

「精霊神の御技ですね」


 言葉を失くす3人を安心させる様に、グラフェスは優しく言葉を続ける。


「過去に取りに行った子達の話しによると、毎回中の様子は違う事、頭を使う場面があったりするみたいですが、危険は無い様なので、がんばって取って来て下さい」


 そう言って鍵をジュリアスに渡し、机に置いてあるベルを鳴らして修道士がやって来ると、ジュリアス達を地下に案内するよう指示をする。


 ジュリアス達は釈然としないまま修道士に連れられ1階に降りる。

 修道士はカウンターにいる中年シスターに何やら話し、しばらくして奥の部屋に通される。

 中年シスターの指示で荷物と着ていたレザーアーマーを脱ぎ棚に置く。


 軽装になったジュリアス達3人と修道士は横並びになり、修道士に言われるままお辞儀の様に頭を下げると、中年シスターが4人に頭に壺に入った水をかけていく。その水は氷の様に冷たかった。


「っ……」

「ひゃっ!?」

「うわっ!?」

「冷たっ!?」

「これは聖水です。頭を拭いたら、顔と手も洗うのです」


 4人は頭を拭き手と足を洗うと、中年シスターから荷物袋を受け取った。


「こ、この靴にこんなに感謝した事ないぜ」

「(コクコク)」

「ホントだ……っくしゅん‼」


 ジュリアス達は身震いしながら靴の暖かさをありがたがった。その後、ジュリアス達は目隠しをされ50回以上体を回された。そして、縦一列に並ばされ、中年シスターの手で前の者の肩を持たされ歩き出す。

 少し歩いては右に左に何度も曲がり、ジュリアス達は教会のどの辺りを歩いているか完全にわからなくなる。


 しばらく歩くと、中年シスターの声かけで階段の登り下りも加わり、そんな状態が10分以上も経った頃、ようやく止まって中年シスターから目隠しを外して良いと言われた。


「ぎもぢわるい……」

「うぅ……」

「ぼ、僕も……」


 ジュリアス達は深呼吸をしたりしながら周囲を確認すると、通路の造りは1階や3階と同じ様だが空気がひんやりしていて地下の様に思えた。


 中年シスターが目の前の扉の鍵を開錠し扉を開けると、部屋の奥に更に扉があった。

 その部屋はどこか厳かな雰囲気をしており、ジュリアスがマリウスとレヴィンを見ると2人もその雰囲気を感じてる様だった。


「鍵を持ってるのは誰です?」

「僕です」

「ではこちらへ。鍵を開け、中に入ってみて下さい」

「は、はい」


 中年シスターに促されてジュリアスはモーリス神父から預かった鍵を鍵穴に差した。

 すると扉の内側でガシャガシャ音がした後、ひとりでに扉が左右に開き、引き戸の様に壁の中に入っていった。

 ジュリアスは息を呑み、レヴィンとマリウスは扉の上下左右を覗き込む。


 ジュリアスは恐る恐る足扉の内側に入った。

 それを見た中年シスターはシスターは頷いた。


「それでは、3人も中にお入りなさい」

「では、私から……ぐっ!?」


 そう促されて修道士が入ろうとすると、見えない何かにぶつかった。

 修道士が恐る恐る手を伸ばすと、扉が閉まっていた場所で何かにぶつかり、ぶつかる何かを押そうとすると、バチっという音と共に修道士は倒れた。


「トーマス!?」

「「あんちゃん⁉」」

「お兄さん!?」


全員が修道士トーマスに駆け寄る。トーマスはすぐに体を起こすと、体を確認する。


「トーマス、大丈夫ですか?」

「あ、はい。バチっと音がしたかと思ったら、熱さとも冷たさとも違う……初めて感じる痛みがありましたが、だ、大丈夫です」

「そうですか……」


 トーマスが立ち上がると、全員が開いた扉を見つめる。

 レヴィンとマリウスは恐る恐る扉付近に何かないか見渡す。


「伝承の通りみたいですね」


 中年シスターの呟きに他の全員が振り返る。


「この扉は結界が施されていて、大人と悪心に染まった子供を拒むと言われています。

 トーマスは15歳と一番若い修道士でしたが、もっとはっきり子供と言える年齢でないとダメみたいですね。では、次はあなた達が1人づつ試して下さい」

「「え…」」


 ジュリアス達は互いに目配せして固まっていたが、マリウスがスッと右拳を前に出した。

それを見たレヴィンとマリウスが真顔になった次の瞬間、2人は真剣にジャンケンを始める。そして、6回のあいこの末、レヴィンが負けた。


「あ"ぁ〜〜〜っ!?」

「レヴィンくん。ほら……」


 チョキの手のままの右手を掴んで悔しがるレヴィンに、マリウスが声をかける。

 レヴィンがマリウスを見ると、マリウスは顎で扉に向かう様に動作で促す。


 レヴィンは諦めて開いている扉の前に立つと、そ〜っと右手の人差し指を前に出し、目をつぶって恐る恐るトーマスが弾かれたラインに指を入れた。


……


…………………


 チラッと目を開けるとトーマスが弾かれた所を超えているが何ともない。

 レヴィンは再び目をつぶってそのまま右手を伸ばし切るも弾かれる事はなく、ゆっくり目を開けると扉があった場所が淡く緑に光った。

 レヴィンは反射的に手を引っ込め、右手の表と裏を何度も見て何ともない事を確認すると、今度は足を踏み出し弾かれる事なく扉を潜った。


「お、お〜!入れた〜!」

「よくやりました。さ.あなたも入ってみなさい」


 中年シスターに促されマリウスは、レヴィンとジュリアスが問題なく入ったのを見て普通に扉を潜ろうとする。

 すると、扉が光りマリウスの足が止まる。


「あ"っ⁉」

「マリウス!?」

「どうしたのです!」


 中年シスターの問いかけに、マリウスはカクカクとした動きでゆっくり振り返る。


「な、何か……ピリピリ?パ、パチパチ?した感じがが……して、ゆっくり体が押し戻される様な、か、感じがします」

「ま、マリウスはオレらより3つ上だからな〜……ギリアウトなんじゃない?」


 オロオロする中年シスター達をよそに、自分は通り抜けられたからとレヴィンは余裕を見せる。


「クソっ。こ〜の〜〜〜……」


 マリウスは歯を食いしばり、強引に見えない壁を通り抜けようとする。

 マリウスの体は本当にゆっくりと前に進む。そして移動距離としては一歩程度にも関わらず15分以上苦戦してようやく見えない壁を通り抜けられ、ずっこけた。


「はぁ……はぁ……やっと抜けれた……」

「マ、マリウス。大丈夫?」

「あぁ」


 マリウスは立ち上がり周囲を見渡すと、明かりがなく真っ暗だが広い空間の様に感じた。


「いいですか、3人の荷物袋には松明と火打ち石が入っています。一本だけ火を点ける様にして、残りの松明で戻れなくなりそうになったら迷わずに戻って来るのですよ」

「「「わかりました」」」

「……って、レヴィンとジュリアスは火打ち石使えんのか?」

「…………」


 バツが悪そうにするレヴィンとジュリアスに、マリウスは火打ち石の使い方を教えつつ松明に火を点けた。

 改めて周囲を見渡すと、教会内の他の部屋より天井が高く、床なども木ではなかった。


 松明を持つマリウスを先頭に、3人は直線状の通路を奥へと進むと階段があり降りた。

 階段を降りた先のフロアの空気はひんやりとしてるものの、どこか暖かな感じがした。


 マリウスが先頭となり、ジュリアスとレヴィンが後に続く。

 少しして、右手側の壁を触りながら進んでいたジュリアスが何かに気付く。


「ん?……ねぇ、マリウス。ちょっとここ照らして?」

「お?わかった」


 マリウスが壁を照らすと、見にくくはあるが壁に文字が彫られていた。


「え〜っと、『正しき道を進むべし』って、えっと……」


 3人は困惑した。何故ならば、文字が刻まれた辺り先は何もなさそうな、だだっ広い部屋が広がっていたからだ。

 壁に刻まれた文字の意味を考えるも、目の前にはだだっ広い空間があるだけなため、3人はとりあえず先に進む。


 しばらく歩くと入口の向い側の壁に辿り着き、周りの壁には何もなく、そこから壁伝いに歩いて見るも何も見つからなかった。

 そして、今度は床に何か無いか気にしながら、何もないフロアを歩き回る。


 延々と歩き回ったがやはり何も見つからず、3人は疲れて床にへたり込んだ。


「な〜んも無いじゃん……」

「どうなってるんだろう?」

「もしかして部屋が違ったりして?」


 レヴィンの一言に、マリウスとジュリアスは入口を見る。


「う〜ん……あんな仕掛けしてあったんだから、違うって事はないんじゃないかな?」

「そ、そうたぜ。結界だっけ?あんな物まで仕込んで無いもないなんて、フェイントにしては大袈裟過ぎだよな?」

「そ、そうだよ。きっと何か見逃して……あ!?」


 寝っ転がっていたジュリアスがスッと立ち上がると同時に、松明が消えて真っ暗になった。

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