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聖剣士物語(仮)  作者: レイファ
第1章 ヴァリストン聖剣学院の授業
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#35 第一章 22話

 特別とされる入り口からカズン鉱山に入ったジュリアス、レヴィン、リサの3人は、リサの発案で心理力を頼りに進んだ先で、顔だけの物体に遭遇した。


 その物体は、3人と同様に驚きの声を挙げたかと思えば高笑いをし出した事に腹を立てたレヴィンのチョップで地面に落下すると、今度は顔全体がウネウネと動き出し、て徐々に形を変えて行った。


 そして、ウネウネとした動きが収まった頃、人形程の大きさの土の塊になっていた。


「ウネウネと気持ち悪かったけど、止まった……な」

「う、うん。何か小さな土の塊って感じだね」


 ジュリアスはそっと土の塊を指先で軽く突くと、カッと目を見開いた。


「うわぁ〜〜!!」

「ジュリ!?」


 ジュリアスが仰け反り、レヴィンは直ぐにジュリアスの脇の下に手を回し、ジュリアスの体を引っ張ろうとするも、土を突いた指が微動だにしない。

 レヴィンはジュリアスの側面に回り、土を突いた方のジュリアス手を両手で引っ張るもびくともしない。


 レヴィンすかさず立ち上がり、ジュリアスが指で突く土の塊を蹴り込むと、今度はレヴィンの体も蹴り抜く事なく硬直した。


「ぐ、ぐぅ……な、何だよ……これ?」

「プ、心理力(プラナ)が……」


 リサは驚きの表情のまま、微動だにする事ができなかった。

 そして、しばらくするとジュリアスとレヴィンの体葉硬直が解け、2人はその場にへたり込み土の塊に視線を向けると、人型っぽい形の土の固まりは、2つの平べったい楕円の上に大小の球体が組み合わさった人型の物体となって直立していた。

 その頭部にはネコのヒゲの様なスリットがあり、腹部には半円形に少し出っ張りがあった。


「な、何だこれ……?」

「な、何だろう……。

 心理力を勢い良く吸われた感じがしたけど、心理力の……効果?」

「そんなの、オレにもわかんねぇよ。

 それより大丈夫か?」

「う、うん。心理力を吸われたからか、疲れた様な変な感じはするけど大丈夫そう」

「オレもだよ」


 球体が組み合わさった物の頭部に、目の様に2つの丸い光りが灯ると、周囲を確認するかの様にキョロキョロと動き出した。


「う、動いた!?」

「ホントだ。

 え?リサ……どうした?」


 リサはジュリアス達を通り過ぎ、球体の前に進み出ると跪いた。


「ドワーフに連なる者の1人、リサにございます」

「ど、どうしたんてすか?」

「誰も……いないよな?」


 レヴィンは立ち上がりながらリサの向こうを見るも球体状の物体以外に何も無かった。


「まさか……それに挨拶したのか?」

「それって言うな。こちらは土の精霊様だ。

 失礼な振る舞いはするな」

「土の……」

「……精霊?」


 キョロキョロとしていた土の精霊の動きが止まり、顔が3人の方向に向いた。


〘ドワーフと……人の子か?〙

「はい。そうです」

「「!?」」


 土の精霊に口は無いが、3人の頭の中には柔らかい口調で声が聞こえ、ジュリアスとレヴィンは驚き戸惑った。


〘我は……土の精霊王の眷属。

 キミ達……はココで何をしているんだい?〙

修練鍛冶師(マイスター)の試練を受けるべーー」

「オレ達は剣を作ってもらうために、材料の霊晶石を取りに来たんだ……痛った!?」

「失礼な振る舞いはするなって言ったでしょ!」

「痛ったいなぁ……。

 聞かれた事に答えただけじゃん」


 土の精霊の視線がジュリアスとレヴィンに向けられた。


〘キミ……達からもらった……心理力の……辛うじて喋れ…………てた〙

「な、何か起こったのですか?」

〘ぐ……。……が……霊晶石を……。……。

 我は……封じた〙

「精霊様!?」


 よろめく土の精霊をリサが慌てて支えた。


〘もらった心理力……まなく尽き……る。

 霊晶石を……得るには倒さないと……。

 行くかい?〙


ジュリアスとレヴィンは互いを見ると軽く頷来答えた。


「「行きます」」

〘じゃあ……残った力で封に……〙


 3人の頭から土の精霊の声の余韻の様な感覚が消えると同時に土の精霊の球体は砂となって崩れ落ちた。


「精霊様!?」

「今度は何だ!?」

「「「うわぁ!?」」」


 地面に落ちた砂は茶色く光ると地面伝いに3人を囲むと、3人が立っていた場所が落下したのだった。


「おっとと……」

「フワッと止まって痛くはないけど……」

「うん。何か、変な感じだったね……」


 落下した足場は階下に落ちる手前で減速して、3人は倒れない様に踏ん張った後、灯りが無くても周囲が見える事に気付いた。


「そう言えば、明るい!?」

「鉱石が光ってる?」


 ジュリアスとレヴィンは、地面を中心に周囲の心理力を意識的に吸収していた影響で、今いるフロア内の心理力が通路の奥に流れているのを感じていた。


「……」

「……」


 ジュリアスとレヴィンは自分の体や周囲を興味深そうにキョロキョロと見回した。


「ねぇ、どうしたの?……」


 リサは2人が自分には見えない何かを、興味深そうに見ているような様子に戸惑った。


「ジュリ……わかるか?」

「うん。回りの心理力が奥の方に流れてのが、上手く言えないけど、見えるっていうか、視界に感じるって言うか……。

 これって、先生が言っていた『風の流れを見る』って事じゃない?」

「ちょ、ちょっと!2人共しっかして!!」


 リサは2人が異様に興奮している様に見えて、2人の腕を掴みつつ叫び、ジュリアスとレヴィンはハッとしてリサの顔を見た。


「リサさん……」

「どうしちゃったの?気をしっかり持って」

「あ、あぁ、いや。心理力の事で授業でわからなかった事が、何か急にわかって来て、テンション上がっただけ……」


 2人が落ち着いた様に見えて、リサは2人の腕を離すと深呼吸を1つした。


「いい?さっきの精霊様は意思疎通ができたから、中位以上の存在よ。

 その精霊様が顕現できなくなるくらい力を失くしてたから、この先には厄介なのがいるはずよ」

「まさか……」

「魔物!?」

「それはわからないけど、精霊様は封に穴を開けただけみたいだから、出口はあそこしか無いかもしれないわよ」


 リサはスッと頭上を指差すのに釣られて、ジュリアスとレヴィンは上を見ると、3m以上に穴が開いているのが見えた。


「あぁ……」

「み、みんなで肩に乗って縦に並んでも、届きそうもないね……」


「「「……」」」


 3人の間に沈黙が流れた。


「も、戻れないなら進むしかないね」

「そうね」

「鉱山に入る前より心理力の事がわかって来たから、この先にいるのが魔物でも何とかなるかもな」


 ジュリアスとレヴィンは鉄剣を、リサは背負っていたリサの兄弟子よりも柄も鎚も細い大鎚を構え、心理力が流れて行く方へと進んだ。


 進んで行くに連れて周囲に穴が増えて行き、次第に広範囲を削り込んで空間が広くなっていく感じに変わって行き、リサだけはそんな壁を見ながら進んでいた。


「どんなのがいるかわからないけど、下手に暴れまって通路が崩れる様な事にならない事を祈るばかりだわ」

「嫌な事言うなよ〜」

「どっか行ってくれてたりは……しないんだろうなぁ」


 そんな事を話しながら曲がり角を曲がり切った先に、手前へ出っ張った湾曲の壁がいくつか並んでいるだけで、何も無い行き止まりだった。


「横道は無かったけど、何も無いわね……」

「そうみたいですね」


 湾曲した壁は3人の胸くらいの高さから足元くらいまで出斜めに出っ張っていて、ジュリアスはその出っ張っりに腰を下ろした。

 それを見たレヴィンも、側面の方に転がっていた岩に腰を下ろした。


「横道は無かったし、来た場所からは上に行けないし、どうしたものかしら……」

「あ、そうだ……」


 ジュリアスは革袋から水が入った竹筒を取り出し、残っていた水を飲み干した。

 リサも岩に腰を下ろして一息ついてふと周囲を見ると、ジュリアスの背後の壁面に紫色のモヤの様な物が現れていた。


「ジュリアス、後ろ!離れて!」

「!?」


 リサの声に反応して壁から飛び退くと、ジュリアスの背後では、湾曲した壁が動き出した。

 レヴィンの急いで立ち上がると剣を抜いて、ジュリアスに駆け寄った。


「何だよアレ?」


 湾曲した壁は巨大な脚の様に動き、まるで6本脚の蜘蛛の様なフォルムで、馬車の荷台と同じか少し大きかった。しかし、見た目に対して足音が小さく、重量が有るのか無いのよく判らない物体だった。


「魔物か?」

「でも、村で見た魔物と感じる物が全然違うよ?」

「確証は無いけど、たぶんアーティファクトの類だと思う。

 あそこ!中央の出っ張っり。

 あれそこから脚に嫌な感じの魔力?を帯びた黒いモヤが流れてるわ」 


 各脚をよく見ると脚の前に浮かぶ紫色のモヤの下に、透明な石の様な物が見え、石からは薄っすら心理力を感じられた。


「なぁ、あの脚のモヤの下の透明なヤツって、霊晶石じゃないか?」

「そうか……も。

 でも、だとしたら倒さないと」

「気を付けなさい。

 たぶん、あの紫色のモヤは精霊様で、流れてる黒いモヤにやられてるんだと思う。

 上で会った精霊様は……中位以上なのは間違いないけど、それでも顕現できない程力を……失ってたんだから……」

「わかったよ」

「はい!」


 リサの表情はみるみる青くなり、それに気付いたジュリアスとレヴィンはリサを後ろに下がらせ、剣を構えた。


 アーティファクトは脚を小刻みに動かして方向転換をすると、脚を上げる事無く滑る様にジュリアスとレヴィンに迫って来た。

 その挙動に驚き動き出すのが遅れるも、ジュリアスはギリギリでかわし、レヴィンはかわしながら脚を薙いで甲高い音が響いた。


「堅ってぇ〜」

「やぁ!!」


 突進をかわしたジュリアスもすぐに斬りかかるが、金属同士がぶつかる音がするだけで、ダメージを与えるられていなかった。


「クソ、授業の時より心理力の事わかってきたってのに……」

「逃げ場がないんだからやるしかないよ、レヴィン」

「わかってるって」


 その後もジュリアスとレヴィンは何度も斬りかかるも結果は変わらず。

 アーティファクトは直進は速いが旋回は遅いため絶えず動き回らずに済んではいたが、決定打が無いためジリ貧であった。


「うっ!?」


 ついにジュリアスの回避が遅れ、アーティファクトの脚がジュリアスの肩を掠め、ジュリアスは強力な一撃で体が回転し、地面を転がった。


 ジュリアスが体を起こし上を向けば、ジュリアスの視界には旋回し振り上げられたアーティファクトの脚が写っていた。


「あ……」

「逃げろジュリ!!」


 アーティファクトの向こうからのレヴィンの叫び声に反応し始めるも、ジュリアスの体勢が崩れていたためアーティファクトの方が早かった。


ズズーン


 アーティファクトの脚が振り下ろされ、大きな音が轟く。


「ジュ、ジュリ……」


 アーティファクトが再び旋回を始め、 振り下ろされた脚が動くと、潰されずいるジュリアスの姿があり、その後ろにはレヴィンの位置からもわかるくらい顔面蒼白となったリサの姿があり、リサがジュリアスの体を引っ張ったのだった。


「おぉ~!!ナイス リサ!」


 ジュリアスは立ち上がると直ぐにリサを立たせて、ジュリアスもリサが顔面蒼白である事に気付いた。


「リサさん。ありがとうございます。

 通路の陰まで下がりましょう」


 ジュリアスは足元のおぼつかないリサを引っ張る様に通路の陰へと連れ行く。

 通路の陰に入るなり、リサはその場にへたり込んだ。


「リサさん。無理させてすみません。

もう大丈夫ですから。

……?

リサさん?」


 ジュリアスは、リサか間一髪の所で自分を助け、リサ自身も危う潰される所だった事から落ち着かないでいるのかと思ったが、リサの様子がおかしい事気付いた。


「リサさん!大丈夫ですか?

 リサさん!

 どこかケガしたんですか?」


 ジュリアスの問いかけに少し遅れてリサは頭を横に振った。

 ジュリアスは自分の水筒をに見るも水が残って無く、リサの皮袋からリサの水筒を取り出すと少し水が残っており、ジュリアスはリサに水を飲ませたが、リサの体は震えていた。


「リサさん?大丈夫ですか?」

「あ、あの、アーティファ……闇の……力……が……」


 リサの一言に、ジュリアスは無意識的に心理力を込めてアーティファクトの方を探ると、アーティファクト嫌な感じの力がアーティファクトに捕らわれている精霊に流れている様に感じた。


「おい、ジュリ!大丈夫か?

戦えるならこっち来て!1人じゃキツイ!」


 レヴィンの声に周囲を探る事に集中していたジュリアスはハッとすると、剣を握り直しながら通路の陰から飛び出した。

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