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聖剣士物語(仮)  作者: レイファ
第1章 ヴァリストン聖剣学院の授業
33/33

#33 第一章 20話

 ジュリアスとレヴィンは偶然出会った鍛冶師のリサと共に、カズン炭鉱行きの馬車の中で取手にしがみついていた。

 馬車は途中からとんでもない速さで進み出し、座席に吹き込んで来る風が突風と化していた。


 他の馬車より衝撃吸収の工夫がされている様で、ジュリアスとレヴィンが王都に来る時に乗り継いだどの場所よりも圧倒的に揺れを感じず、それは今のスピードになっても変わらなかったが、ジュリアスとレヴィンにはその事を考えてる余裕は無かった。


「うわぁ……………ぐっ!?」


 浮遊感を感じて少しして衝撃を受け驚くも、ジュリアス達は馬車が道の段差でジャンプしたんだと理解した。

 なおも、馬車はスピードを落とさず突き進んで行った。



 ロメスミーザを出てどれくらい経ったかわからなくなった頃、ジュリアスは目を開け前を見ると、馬車の前に子鹿が2頭飛び出して来た。

 そして、子鹿達は馬車に気付くと恐怖からか、体を強張らせてその場から動けないでいた。


「ぶつかる!?」

「へ!?うわぁ!?」

「キャ〜〜〜!?」

「あぁ〜!?」


 ジュリアスの叫び声に反応してレヴィンやリサ、他の乗客も声をあげた。


「アス!ラーダ!

 イナーシャルドリフト!!」


 御者が叫び声と共に手綱を振ると、2頭の馬は同時に踏ん張って腰を振る。そして、その動きに追従するかの様に荷台が浮き上がり、2頭の腰の振りの方向に流れる。

 荷台が着地すると同時に2頭の馬を飛び出す様に上体を腰の振りとは逆に振りながら急発進した。

 この一連の動作で馬車は鋭角的に方向転換を行い、間一髪で小鹿達をかわした。

 そして、大きくカーブを描いて再度方向転換し、元の進行方向に戻り尚も駆け抜けて行った。

 この動きに付いていけない者は嘔吐をしたが、ジュリアス達は吐く事なく取手を離す事もなく前を見据えていた。


 どれくらい経ったのか……。

 休む事なく走り続けていた馬車がようやくスピードを落とし始めた。

 それに伴い、座席に吹き込む風も弱まり、ジュリアス、レヴィン、リサの3人は目を開けた。


「ん?え!?」

「え!?」


 前後を見ると日が落ちかけていて、周囲の雰囲気もガラリと変わって、鉱山っぽい景色になっていた。

 そして、街の入り口を抜けてすぐの所で馬車は停車した。


「おつかれ!カズン鉱山の麓に着いたぜ!」

「ウソ!?普通、3日はかかる距離のはずよ」


 リサの驚きの声に、御者はニヤリと口角を上げて座席のある荷台側に座り直した。


「ふふ。たしかに、ただの馬車ならお嬢さんの言う通だ。

 だか、オレの愛馬であるアスとラーダはバトルホース。

 加えて、手綱を握るのは2頭をしっかり鍛えたオレ様だ」


 御者は親指で自分を指しながら得意気に言った。


「それだけじゃない。荷台も普通じゃないでしょ」


 リサは御者を横目で見つつ馬車を降りると、中腰になって荷台の車輪を見回し、ジュリアスとレヴィンも馬車を降りるとリサの様子を伺った。


「わかったわ。荷台の秘密は、この渦巻き状の鋼材ね」

「ヒュ〜」


 御者は一瞬驚いた表情を見せたが、口笛を吹いておどけ見せる。しかし、視線は鋭くなっていた。


「やるなぁ。鍛冶師に頼まれて何人かに見せた事があるが、一発で……しかも短時間で見抜くとはなぁ」

「私はそう遠くない内に修練鍛冶師(マイスター)になるのよ。

 これくらい当然よ」

「ほう、修練鍛冶師ね……。

 あんた名前は?」

「人の名前を聞きたいなら、先に名乗るのが礼儀じゃないしから?」


 リサは無愛想な表情のまま答え、それを見た御者は芝居染みた動きをしながら口を開く。


「これはこれは、失礼しました。

 私は商人ギルド、定期馬車部門に所属する、ブリード・リヒターと申す者。

 鍛冶師殿、お名前をお教え頂けますかな?」

「鍛冶師ギルド所属、上級鍛冶師のリサよ」

「では、リサ殿。それと少年達。

 他に何か気になった事があったら聞かせてくれないか?」


 考え込むジュリアスとレヴィンとは対照的に、リサは短い溜息をつくと仕方ないった感じに口を開いた。


「各座席に背負子の様に肩口を抑える物を付けなさい。

 できれば、ベルトの様に腰を固定する物も欲しいわね。

 そうすれば、乗客の負担はだいぶ減るはずよ」

「あぁ〜、たしかに!

 吹き込んで来る風も凄かったし、振り落とされてもおかしくなかったもんな〜」

「……ふむ」


 ジュリアスは荷台を引いていた馬を見ていた。

 2頭の瞳・鬣・蹄は濃い青で、体は白かった。そして、額からは金色の角が伸びていた。


「あれ?この角がある馬って、ユニコーンなんじゃ……」

「金髪の少年。よく見てみな」


 ジュリアスはブリードに言われて改めて角を見てみると、額から前方に伸びてるユニコーンと違い、額から頭頂の方に伸びていた。


「わかったか?向きが違うだろ。

 向きだけしゃなく角の力も違ってて、風を左右に切り裂いて後方に流す事で、直進性とスピードを高めるのさ」

「「へ〜」」


 ジュリアスとレヴィンは感心したが、リサは数回眉間を揉んだ。


「それね。あなたは気付いてないかもしれないけど、速度を上げると荷台に突風が吹き込んで来てたの。

 そう、2頭が切り裂いた風のせいだったのにね……」

「そうなのか?走行風はあるとは思っていたが、そんな……」

「いくら2頭が速いと言っても、走行風のレベルを超えてるのよ。

 今日だって吹き飛ばされてる人いてもおかしくなかったわ」


 ジュリアスとレヴィンもリサの意見に無言で何度もコクコク頷くのを見て、ブリードは戸惑いを隠せなかった。


「そ、そんな。アスとラーダの抜群のスピードが徒になったのか……。

 どうしたら……」


 ジュリアスとレヴィンはリサがどう返すのか期待してリサを見るも、リサも考え込んでいた。


 全員が考え込み沈黙が流れる。


「あ、いや、済まない。

 良いヒントを頂いた。後は自分で……」

「あっ!?」


 ブリードが会話を切り上げ様とすると、レヴィンは声を挙げた。


「角の力って変えれないの?

 2頭が左右に風を切り開くのを、片方だけにできればいけんじゃない?」

「でも、レヴィン。コントロールできるとしても、それをどうやって馬に教えて、タイミング良く使わせるの?」

「あ……そ、そうだよなぁ〜」

「角の力がどう働くかわからないけど、2頭の間隔を狭くすれば解決するかもしれないわ」


 ジュリアス達はバッとリサに注目した。


「あくまでも魔法的な考えでの可能性ってだけよ。

 同じ力なら、その範囲が重なり合えば、2頭で1つの力として作用すれば、2頭の中央から左右に風を流せるかもしれないわ」

「おぉ〜、そしたら、荷台に吹き込む風をカットできじゃねぇか!

 凄いな。リサ殿に少年達、他に何か思思い付いたら聞かせてくれ!」


 リサ、ジュリアス、レヴィンの3人は馬車を見て再度考えた。しばらくして、ジュリアスがブリードに振り返った。


「あの、お客さんを乗せないで、見てもらうのはどうでしょ?」

「うん?客を乗せない?

 ど、どういう事だ?」

「騎士の御前試合みたいに、工夫を凝らした馬車で競走して、速さと技術を見てもらったらどうかな〜って思ったんです。

 色んな町に馬車はあるし、ブリードさんの馬車みたいに町ごとに工夫したら、面白いと思ったんです……けど、ダメですよね」


 自分の意見に固まっている他の3人を見て、ジュリアスは話しながら自分の意見に自信がなくっていっていた。


「金髪の少年!良い!良いよ!!」

「そうだぜ、ジュリ!

 あ、あえて客役を荷台に乗せて、荷台から落ちたら減点するとか!」

「競走……賭けの対象にすれば儲かりそうね」

「「「おぉ〜!」」」


 4人はその後も話しは盛り上がるが、馬達は退屈なのかしばらくすると欠伸をして座り込んだ。


「いや〜。良いアイデアをありがとう!

 そう言えば、少年達の名前を聞いてなかったな。

 2人はリサどのの弟子かな?」

「違うよ。オレはレヴィンで、こっちはジュリアス。

 ヴァリストン聖剣学院の生徒だよ」

「あぁ、よく見たらヴァリストンの制服だったな。

 悪い悪い」


 ブリードは御者の席にから布で包んだ大きな包を持って来ると、リリサに差し出した。


「リサ殿、ジュリアス、レヴィン。

 良いアイデアをありがとな。もらったアイデアは活かさせでもらうよ」

「がんばってね」

「がんばって下さい」

「コレはアイデアのお礼だ」


 リサは無言で受け取ると中を覗き込んだ。


「あぁ……勤務中は個人的な持ち合わせはほぼ無いから、金でなくて申し訳ない。せめてもの気持ちに、持ってる食料全部だ」

「いえ、今はお金よりこっちの方が助かるかも」

「そうか!そりゃ、良かった」


 レヴィンは生徒カードで買い物できるから、現金の方が良い様に思ったが、ジュリアスが素直にお礼を言うのを見て、グッと言葉を堪えた。

 そして、ジュリアス、レヴィン、リサの3人はブリードと別れると、カズンの街へと進んだ。



 陽がだいぶ傾いてる頃、ドワーフを中心とした職人の街であるカズン鉱山の麓は、王都とはまた違った雰囲気の活気で溢れていた。


 リサを先頭に進むジュリアスとレヴィンであったが、何となくリサは人通り少ない方へ進んでる様に思えた。


「リサさん」

「今日は先に宿取る感じ?」


 ジュリアス達に声をかけられたリサは足を止めて振り返った。


「このまま鉱山に行くわよ」

「「え!?」」

「忘れてるかもしれないけど、私は兄弟子達に目を付けられて、私が剣を作ろうとしてる事を知ったら必ず妨害されるわ。

 でも、ブリードの馬車のおかげで、もし兄弟子達の手下がこの街にいたとしても、兄弟子達の命令は何も受けないだろうし、今の時間ならまだ入鉱できるわ」


 ジュリアスとレヴィンはリサと出会った時の事を思い出した。

 瓦礫の中から助け出し、リサの師匠の妻であるルーシアの家であったリサの兄弟子達はゴロツキのドワーフであった。


「まぁ、また出くわしたら面倒臭い事になりそうだよなあ」

「でも、僕達がカズン鉱山に向かってる事は知らないだろうし、気にし過ぎじゃないですか」

「もう一つ、私達入鉱する場所は特別な場所なの。

 兄弟子の手下以外にも、女でハーフドワーフの私が入るのを知ったら嫌がらせをしてくるヤツもいるだろうから、こっそりと動きたいの。

 その上で反論あるかしら?」

「「……」」


 ジュリアスとレヴィンは返す言葉がなかったが、リサはもう一つ思い出した様にブリードから受け取った包をジュリアス達の前に出し、腰に着けた革袋を叩いた。


「言い忘れてたわ。

 ブリードからたっぷり食料をもらってて道具もあるから、他に準備する事は無いわ」

「わかりました」

「くっ……わかったよ」

「わかってくれて、うれしいわ」


 リサは大きな包を軽々背負った。


「行くわよ。

 静かにね」

「へいへい……」

「はい」


 3人は土地勘のあるリサを先頭に、周囲を警戒しながらカズンの街の裏道を進んだ。


 そして3人は誰とも会わずに街を抜ける事ができ、カズン鉱山の入り口と思える場所を見下ろせる場所に立ったのだった。

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