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聖剣士物語(仮)  作者: レイファ
第1章 ヴァリストン聖剣学院の授業
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#30 第1章 17話

 王都サガリオン南西部の工房地区には大小様々な工房が軒を連ね、毎日槌を打つ音等が響いている。

 ほとんどの工房はドワーフが主で、工房で働く職人もほとんどドワーフであり、酒好きの彼らのために工房区の周辺には酒場多く営業し、毎夜賑わっている。


 今夜も表通りでは酒盛りの声で賑わっていたが、裏路地では様子が違っていた。


「はぁ、はぁ、はぁ……」


 ドワーフにも人間にも見える女が、何度も振り返りつつ裏路地を必死に走っていた。

 前方から誰かが近付いて来てる事に気付いた女は、周囲を見渡すと急いで物陰に隠れ、息切れをする呼吸を我慢し、身を潜める事に集中した。

 程なくして、ドワーフの男達が前方と後方から走り込んで来た。


「おい、いたか?」

「いや、女の人影を見た気がして走って来たんだが」

「えぇい、あのガキ!」


 ドワーフの1人が苛立ちに任せて持っていた大槌を振るい、道脇に大量に積まれているガラクタを粉砕した。

 その場所から数歩隣りに女は身を潜めていて、女はできるだけ大槌が振り下ろされた場所から離れ、地面に這いつくばった。


 大槌を持つドワーフは2撃、3撃と徐々に女が身を潜める場所の近くを粉砕していて行き、最後とばかりに大槌の横薙ぎを繰り出した。

 轟音が止み、土埃が収まると、高く積み上げられた樽や瓶、木箱等が崩れ、砕かれ、動く物はなかった。

 それを見た大槌を持つドワーフは地面に唾を吐き捨てると踵を返し、他のドワーフ達と去って行った。


……


…………………


 女は大槌を持つドワーフの攻撃で破壊され崩れた瓶や樽等の下敷きとなり、足音が遠ざかって行くのを感じると気を失った。



 朝一で王国支援ヴァリストン聖剣学院を出たジュリアスとレヴィンは、工房区に着くとさっそく工房を見て回った。

しかし、霊晶石で作った剣を作る工房は少なかった。


 それでも霊晶石で作った剣を見つける度に、イフリスの言葉に従い剣を持たせてもらうが、自分と相性が良いと思える剣はなかった。

 その後も2人は工房を見て回っていると、他より大きな工房に辿り着いた。


 その店の扉は金色で、入り口からして豪華で、金が掛けられてる印象だった。

 商品も高そうで気後れしそうな2人であったが、とりあえず店内に入ってみた。


「うわぁ〜……」

「すげぇな……」


 店には派手な装飾を施された鎧や盾や武器といった品々が並んでいて、これまで見た店の中で一番の品揃えであった。


「そこの朱雀生!……ちっ。

 キョロキョロと恥ずかしい挙動をしていると思えば、お前達か」


 ジュリアスとレヴィンが声がする方を見ると、声の主は2人と同じデザインで2人と色違いの黒地に白の白虎寮生の制服を着た金髪に鳶色の目のゼブル・フォイスであった。

 その後ろには取り巻きのゴードンとアドムが、道を塞ぐ様に立ちはだかった。


「孤児風情が貴族御用達の店に来るとはな。

 身の程をわきまえろ」

「店の前にそんな事は書いてなかったし、店に入ってからもキミ以外にそんな事は言われてないよ?」

「そうだ。それに前にも言ったが、オレ達はお前の子分じゃない。

 指図すんな!」

「貴様!」


 ゴードンがレヴィンを突き飛ばそうと腕を突き出し、レヴィンが反射的に受け流した。


「くっ、何しやがる!」

「身分を弁えないお前が悪い」

「何だと!」

「ねぇ、僕ら寮は違うけど同じ学校の仲間なのに、何で僕らに突っかかって来るの?」


 ジュリアスの問いかけにゴードンとアドムは戸惑い互いを見た後、フォイスに視線を向ける。

 フォイスは一瞬きょとんとしたが、すぐに忌々しくジュリアスを睨む。


「ふざけるな!貴族である僕達と、孤児のお前が同じなわけないだろう!」


 フォイスは怒鳴りながら鞘に左手をかけ、それを見たジュリアスとレヴィンも身構えるが、それと同時に低い声が響いた。


「何をしておる!」


 5人は動きを止め、声がする方を見ると、フォイスに似た顔立ちの長身の男が店の奥から近付いて来た。

 靴音を鳴らしながらゆっくり近付いて来る男は厳しい表情でフォイスを見ていたが、目だけでジュリアスとレヴィンを見ると、冷たく不快な物を見る様な眼差しで2人を頭から足元まで見るとフォイスに視線を戻した。


「ち、父上……」


 現れた男はフォイスの父上、バーノン・フォイスであった。

 現れた男がゼブル・フォイスの父上である事を理解したジュリアスとレヴィンは2人を見比べると、髪や瞳の色だけでなく、顔立ちも似ていた。


「ゼブル。店内で何をしている?」

「この無礼な孤児達に身の程を教えてようとしていたのです」

「その事ではない。何故先に剣を抜こうとしたかという事だ」

「それは、コイツらが生意気過ぎるから……」

「剣を抜くのは良い。だが、抜くのは相手が抜いてからだ。

 言い訳を与えず潰すのだ。

 何より、我らは貴族。下賤な者達と違う。貴き者に相応しく、スマートに事を遂行するのだ」

「はい。父上」


 フォイスがジュリアス達そっちのけで父親と話すを、フォイスの取り巻きであるゴートンとアドムは緊張感なく見ていた。


「ボブ、ザビール。何を呆けてるおる。お前達も同じだぞ。

 ゼブルに付き従うにしても、貴族に相応しい行動を忘れるでない」

「は、はい」

「し、承知しました」


 バーノンはサッと姿勢を正し返答するゴートン達を見て小さく頷くと、視線をジュリアスと向ける。

 バーノン・フォイスは立派な体格をしているが、それ以上に強い目力で蔑む様な視線にジュリアスとレヴィンは気圧された。


「黒地に赤……朱雀生か。

 お前達、身分と言う物もわからない愚か者なのか?」

「ヴァリストンじゃ身分は関係ない!

 オレ達とフォイスは同じ生徒だ!」

「それは学院内での方針であって、ここは学院の外という事を忘れているな。

 上級貴族と騎士の権限において、お前の保護者に罰を与えても良いのだぞ?」

「保護者?……僕達は」

「孤児なら面倒を見ている教会関係者や学院の教師だな」

「卑怯だぞ!」

「私は、私の権限と法を鑑みて言ってるに過ぎん。

 で、どうするのだ?大人しく去るなら今回は見逃してやろう」


 余裕たっぷりに勝ち誇るバーノン・フォイスを苦々しい思いで睨むレヴィンは右手を握り込んだ所で、その手をジュリアスが掴んだ。


「レヴィン、いこう」

「……。わかったよ」


 悔しさを滲ませながら店を出て行こうとした際に、2人が横目でフォイス達をみると、父親の後でフォイス達はレヴィン達をバカにするジェスチャーを嬉々とした表情でしていた。


 店を出たレヴィンは何も考えず怒りを滲ませながらどんどん店から離れていき、ジュリアスも黙ってレヴィンの後について行った。


「くっそ~!何なんだアイツら!ムカつく〜!」

「そうだね。それに、あの店で課題の剣が作れるが聞けなかったね」

「ヤツらが贔屓にする様な所で買いたくも、作ってもらいたくもない!」

「ま、まぁ、それはそうかも」


 レヴィンとジュリアスはいつの間にか裏路地を進んでいて、徐々に目に付く様になってきた陶器のや木材の破片を蹴りながら当てもなく進んで行った。


「は〜〜………ムカつく。

 ん?そういえば、何か人通りのない通りにいるなぁ」

「そういえば……裏路地かな?

 まだこの先の店は見てないから行ってみようよ」

「そうだな。あ〜〜〜、あのクソバカ野郎!

…って、うわ!?」


 レヴィンは目の高さにあった物を苛立ちまとめてぶつけるべく回し蹴りをするも、足元の瓦礫が割れて体勢を崩し倒れたのだった。


「も〜、レヴィン大丈夫?」

「いって〜。大じょ……!?」


 倒れた痛みで目を瞑っていたレヴィンは、ジュリアスの呼びかけで目を開けると、視界の右側は地面があり、目の前は積み上がった壊れた樽や壺あった。そして、その奥に、こちらを見る虚ろな目ながあり、レヴィンと目が合った。


「うぁあ!?」

「な、何!?どうしたのレヴィン?」


 レヴィンは慌てて立ち上がると慌てふためいていた。


「ジュ、ジュジュ、ジュリ。目を開けたらその中の何かと目が合った!」

「え!?」


 ジュリアスは倒れていたレヴィンの頭があった辺りにしゃがみ、積み上がってる物を除き込むと、人の顔見えた。


「人だよ。この下に誰がいるんだよ」

「えぇ!?マジかよ!」

「と、とにかく、このガラクタをとかそう」

「え?あ、そ、そうだな」


 ジュリアスとレヴィンは積み上がった壊れた壺や樽、木材等をどかしていった。

 2人が軽く汗をかき始めた頃に積み上がった物をどかし終えると、傷だらけの女の子が姿を現した。


「おい、大丈夫か?お〜い!」

「ちょっとレヴィン、あまり体を揺らさない方が……」


 レヴィンが呼びかけも反応がないと見るや雑に女の子の肩を揺すったので、ジュリアスが慌てて止めると、女の子の反応をした。


「う……。あぁ……えっと……」

「あ、大丈夫?」


 女の子をヨロヨロと体を起こすと周囲を見て、ジュリアスとレヴィンを認識すると、ハッとした表情を浮かべた後、立ち上がりジュリアス達を睨みつつ、ぎこちなく身構えるた。


「えっ?は?」

「あの、大丈夫ですか?」

「………」


 助けたのに睨まれた事で、レヴィンとジュリアスは戸惑いつつも声をかける。


「あのさ、オレがたまたま見つけて、2人でガラクタの中から助けたんだけど?」

「そう。何かがあったかわからないけど、家かどこかでケガの手当てをした方がいいよ」

「……」


 女の子はゆっくり周囲を見渡し、ジュリアスとレヴィンを交互に見ると、体と眉間の力が抜けた。


「そうか。助けてくれたのか……。

 その服装……ヴィリストンの生徒か」

「え?あ、うん」

「あ、レヴィン。教会に連れてく?シスターなら魔法で」

「お〜、そうだな」

「いや、いい。大したケガじゃない。自分で帰れる。

 世話になったな」


 そういうと、女の子は重い足取りで歩き出した。

 ジュリアスとレヴィンは互いの顔を見合わすと、女の子に声をかける。


「待てよ。オレらもそっちの方の工房を見に行く所だから、送ってくよ」

「いい。構うな……くっ」

「ほら、無理しないで」


 ジュリアスはよろめく女の子を支えると、女の子の誘導で工房区の奥へと進んだ。



「そこだ」


 女の子がそう告げたのは、店や工房の入口が目を引く工房区では素通りしそうな民家だった。

 女の子から鍵を受け取ったレヴィン扉を開けると、三人は中に入った。


 ジュリアスとレヴィンは民間だと思っていたが、室内にある物から小さな工房である事に気付いた。

 レヴィンが近くにあった椅子を持って来ると、ジュリアスが女の子を椅子に座らせた。

 そうしていると、近寄って来る足音がしてジュリアスとレヴィンが振り返った。


「誰じゃ……!?その子から離れい!」


 声の主はジュリアスに突っ込んで来るのを、レヴィンが間に入って声の主の突進を防いだ。しかし、その衝撃は強く、レヴィンは反撃できずにいた。

 

「!? ば、婆さん!?」

「ん?人の子か?」


 凄い勢いで突っ込んで来たのが老婆である事に気付いたレヴィンは驚いたが、老婆もレヴィンが子供である事に驚きの声を漏らした。

 老婆が一瞬入口を見るのにつられてレヴィンを入口を見た。そして、その隙を老婆に突かれ、レヴィンは2階に投げ飛ばされた。

 その直後に女の子が老婆の投げに乗って2階に飛び上がり、2階の床で受け身を取るレヴィンの横に着地した。


「何だよ、一体……うぐっ!?」


 レヴィンが立ち上がろうとすると、女の子がレヴィンの体を抑え、口を塞いだ。

 ジュリアスは老婆の意図がわからず戸惑っていると、入口の扉が乱暴に開かれたのだった。

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