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聖剣士物語(仮)  作者: レイファ
第1章 ヴァリストン聖剣学院の授業
26/33

#26 第1章 13話

 他の授業よりだいぶ遅れて始まった心理力(プラナ)術の授業。

 担当教師のユダヤ・イフリスの下、和やかに授業が進んでいた。


「惜しい。自然界の二極三大の二極が、昼と夜なのは良いです。でも、もう少し具体的にすると?」

「え!?え〜っと……」

「太陽と月?」

「正解」


 イフリスは流れる様な動きで、生徒の前を移動していた。

 その動きはフロアが階段状になっているのを忘れさせる程滑らかだった。


「二極は太陽と月で、太陽が昼の光りを象徴し、月が夜の闇を象徴するというわけです。

 そうすると……残る三大とは何かな?」

「……土と風と水?」

「お?では、ジュリアス。その心は?」

「地面と空と海って事かと」

「その通りです。大地と風と水、すなわち地上、地中、空中に水中であり、仮に岩や鉄等の箱に閉じ込められたとしても、それは大地の産物であり、箱の外は大地と水と空のいずれかが存在します。光と闇も同様です。

 我々の世界は、二極三大のから離れる事は不可能なのです」


 生徒達は解けなかったクイズの答えを聞いた様に、染み染み納得した。


「心理力は自然にあり、人も自然の中の1つです。

 当然、今ここにもあります。

 皆さんと私の間に何が見えますか?」

「「「!?」」」


 ジュリアスやレヴィン、他の生徒達も皆困惑した。

 イフリスと生徒達の間に物は何一つ無いにも関わらずの質問だったからだ。

 しかし、朱雀寮の前には見えない足場という例があるため、朱雀寮生達は全員がすぐ目を凝らした。

 さらにその内の数人はフロアに進み出て手を伸ばしたが、何も見つける事はできなかった。


「見えませんか?では、今度は自分達の体を良く見て下さい。

 体の回りに膜の様な物が見えませんか?」


 生徒達は自分の手や足をまじまじと見た。

 しばらく沈黙が続いたが……。


「あ、あぁ、わかった……見えた!」


 1人の生徒が見えたのを皮切りに、次々に見えたと生徒と現れ、ジュリアスとレヴィンも見る事ができた。


「膜……っていうか、何て言って良いかわかんないけど、たしかに体からちょこっと離れた所に何かラインが……ある」

「うん。僕も見えるよレヴィン。

 体に沿って何かあるね」

「ヴァリストンに入学できたという事は、心理力を操る素養があるという事です。

 私には、視界の邪魔にはなりませんが、皆さんと私の間の空間に、光の粒の様な物が見えますよ。

 これが自然界に漂う心理力であり、自然界から取り込んだり自身の体内から引き出した心理力を触媒の様にして増大させ、攻めに防御にそれ以外の事へと作用させるのが、聖剣士(セフィター)としての力なのです。例えばこの様に……」


 イフリスは右手で懐から紙切れを取り出し頭上に放り投げ、イフリスの顔の高さまで落ちて来た紙切れに左手をかざすと、紙切れは燃え尽きる様に粉々になった。


「「「すげ〜〜!!」」」


 生徒達は興奮した。しかし、ジュリアスとレヴィンは魔法の様にも見え困惑した。


「イフリス先生!」

「何です?ジュリアス」

「今の魔法の様に見えたんですが、魔法とは違うんですか?」

「現象としては、似てる様に見えるかもしれませんが、先程言った様に魔法とは力の根源が異なります。

 魔法は魔力を源に、詠唱や魔法陣、魔術式により効果を発現させます。対して心理力は、それらを必要としません。

 そして、魔力は基本的に自身に内包されてる物だけを行使するので魔力切れが起こり得ますが、心理力は自身に内包されてる物だけでなく、二極三大の心理力を取り込み自身の物と掛け合わせる等、戦いながら心理力の回復と増幅を行いますので心理力切れは起こりません。

 とは言え、どちらも行使する精神力が残っている必要はありますけどね」


 イフリスは黒板に簡単なイラスト付きの図解しながら説明をした。


「まぁ、魔法の説明はさて置き、まずは心理力を感じる所からです。

 全員立って適当に広がって下さい」


 生徒達は即座に立ち上がった。


「いいですか。心理力の基礎には、“大地の調べを聞き、風の流れを見て、水の鼓動を感じる。そして、陰陽と共に一つとなる”という、格言の様な物があります」

「え?」

「ど、どういう事?」

「風って目に見えないじゃん」


 ジュリアスやレヴィン、他の生徒達は戸惑うも、イフリスは呆れた様に言う。


「さっきの事をもう忘れたのですか?

 肉眼で風を見ろ言うのではなく、心理力の捉え方の話ですよ。

 まぁ、気負わず意識的に感じる所から行きますよ。

 まず、呼吸は吸った時に体に良い物も一緒に周囲から吸い、吐く時に体内の悪い物を一緒に出すイメージで行いなます。

 そして、両手を合わせて、先程見た体を覆う両手の心理力を混ぜ合わせる様に両手を擦り合わせなさい」


 生徒達はイフリスに言われるがまま、深呼吸をしながら両手を何度も擦り合わせた。


「次に、左右の手をゆっくり離し、手と手の間に小さな球体をイメージして、落とさない様に。それから、指の間から心理力が零れない様に、指の間はくっつけて」


 生徒達は全員集中し一言も喋る者はなく、イフリスの言葉に従っていた。

 ジュリアスとレヴィンは息を吐く度にゾワゾワとした感覚が全身に感じ、それがイメージした球体に集まって行く様な感じがした。


「お、おぉ〜、何かある!?」

「う、うん。手と手の間を狭くしようとすると弾力があるよ」

「やべ〜。見えないのに何かある」

「えぇ、オレ何も感じないぜ?」

「あ、弾力がなくなった!?」


 ジュリアスとレヴィンは初めての感覚に興奮し、他の生徒達も感じられた者達は興奮し、感じられない者達は焦りを隠せなかった。

 それからしばらくして、全員が手と手の間に弾力を感じると共に、透明の球体を見られる様になった。


「全員できた様ですね。

 さて、ここからは個人差が出て来ます。

 手と手の間の球体を、割らない様に少しづつ揉み込み、徐々に球体が大きるなるイメージで手を広げて行きます。そして、両手を目一杯広げてもしっかりとした反発を感じれる様になるのが当面の目標です」


 レヴィンは早速やってみるも、肩幅にも届かなった。

 他に数人やってみていたが、いずれも肩幅まで広げる事はできなかった。


「いきなりはまず無理でしょうし、他の練習方法も教えますから、勝手な事はしないで下さいね。

 全員感じる事ができる片手で握れる大きさの心理力の球体を、左右どちらでも良いので、片方の掌から体内に取り込み、そのまま体内を通って逆の手に移動させたり、手から足へと移動させるやり方。

 もう一つ、心理力の球体を体に吸収し切ったり、霧散させる等して、心理力を集めてないフラットな状態から、指先、肘や膝、爪先や踵、肩等、どこか一箇所に集中させて、またの場所に集中させる……そういった練習を日々行って下さい」

「よ〜し」

「待ちなさい!」


 生徒の1人が言われた練習法を早速実践しよとするのを、イフリスは直ぐ様止めた。


「人の話しは最後まで聞く様に。

 今教えた2つの練習法は、頭部に心理力を移動させたり集中させるのは禁止とします。

 まぁ、止めてもやる子はやるんでしょうが、頭部だけに心理力を集中させた場合、最悪頭の形が歪んでしまう可能性がありますから、やるなら自己責任ですからね」


 それを聞いた生徒達がドン引きするのが見て取れた。


「頭にだけ異常が起こる可能性があるのは、頭部には脳があるからだと言われています。

 厳密には目だけに集中させるのは大丈夫です。

 でも、僅かな量で形が変形するわけじゃないですし、全身を覆う様に心理力を高める分には問題は起きず、意識的に頭部だけに心理力を集めなければ良いだけなので、心理力の操作を変に怖がる必要はありません。

 さ、鐘がなるまでの時間、感じられた心理力を動かす練習をやってみましょう。

 質問があれば手を挙げ、私を呼びなさい」


 こうして、心理力科の最初の授業は終わった。

 初めての感じたはずの心理力だったが、ジュリアスもレヴィンも初めてに思えず思い返していて、夜になり入学試験でとんでもなく重い、あの透明な物を持ち上げた時に感じた感覚と同じであった事に気付いた。

 それから2人は、朝夕の自主練に心理力の練習も加えて、さらに鍛錬にのめり込んだ。


 その後、バハムートの鍛錬術の授業では、二人一組で剣を打ち合う様になり__


「相手の剣を目で追うな。

 八方目に心理力を重ねて、目に頼らず体で感じろ。そうすれば死角からの攻撃にも対処できる様になる」


相手の剣を目で追うな。

 八方目に心理力を重ねて、目に頼らず体で感じろ。そうすれば死角からの攻撃にも対処できる様になる

 ……と、新たな概念を仕込まれる。

 イフリスの授業でも__


「肉体の行使に必要なのは筋肉や柔軟性ですが、心理力に必要なのは精神です。

 キーワードになるのは矛盾の成立です。集中力を高めつつも、色んな事に気にして周囲の変化を見逃さない。

 相手の動きに集中しつつも、自分を含めた周囲を俯瞰で捉える様にする。

 それがゾーン……心眼とも呼ばれる物の入口です」


 ……と、これまで考えた事も無い事を教わり、さらに教養科の教師バリッシュからは__


「心理力は精神力が左右する事は習いましたね。

 精神力……つまりは心から来るのが意思ですから、会話をする際や演奏を聴いたりお芝居を見る時等、普段から常に相手の心理力を感じられれば、相手の殺意や悪意等が高まり……精神の変化を感じられる様になるはずです」


……と直接戦闘に関わらない所でも心理力を活かす様に示唆され、さらに兵糧・野営術の教師ハピも__


「山火事や土砂崩れとかは、自然の……周囲の心理力に変化があるから、感じれる様にがんばるニャ!

 移動中に天気が急に崩れたり、台風の中を移動する事もあるし、傷んだ食べ物を気付かず食べ腹壊さない様に、知識に加えて心理力も活用するのニャン。

 そうすれば、ホクホク移動や野営できる率が上がるのニャ」


 ……と教わり、歴史学教師ラムネードからは__


「正しい歴史を知り心理力を操り感じる事で、遺跡や土地等の調査において、秘められた何かを発見する事もあるであろう」


 ……と。そして、魔法薬具科のマグディットからも__


「心理力を活用する事で、魔法薬の服用に影響を与えるだけでなく、心理力や魔法力を込めないと発動しないアーティファクトも存在します。得てしてそういった物は微量の力では反応しないですから、しっかりと心理力を高め、意のままに操作できるにするのです」


 ……と、全ての教科において、心理力を活用する様に言われた事に、他の1年生同様ジュリアスとレヴィンも驚くも、2人は自主鍛錬に心理学の鍛錬も加えてひたすら鍛錬に勤しんだ。

 特にジュリアスは何かに取り憑かれた様に鍛錬を行い、2人が消費するポーションの量はさらに増えたのだった。



「ジュリ、そろそろ休憩しようぜ」

「うん。でも、もうちょっと」

「体が回復する時に強くなるんだから、休憩しろって」

「うん……」


 レヴィンは腰を下ろして、鞄からポーションの小瓶を取り出すとクイッと呷った。


「おい、どうした?」

「ねぇ、大丈夫?」


 レヴィンがポーションを飲んでいる間に周りがザワつき出し、ポーションを飲み終えたレヴィンが振り返ると、ジュリアスが倒れていた。

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