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聖剣士物語(仮)  作者: レイファ
第1章 ヴァリストン聖剣学院の授業
24/33

#24 第1章 11話

 バハムートの一言で、魔物に襲われた時の事を思い出し、怒りと殺意を滾らせるジュリアスとレヴィン。

 疲れてだらけていた他の生徒達は、2人の雰囲気に押され無意識に後退っていた。

 そんなジュリアスとレヴィンに歩み寄ったバハムートが2人の肩に手を置くと、ジュリアスとレヴィンはハッとしてバハムートの顔を見た。


「魔物に対する怒りを忘れろとは言わん。だが、飲まれるな。

 心は熱く、頭は冷静に……それが、できねば戦いの場ではすぐ死ぬぞ」

「「は、はい」」

「どちらか、こっちに立て」


 バハムートに生徒立ちの中央向かい側に立つ事を指定され、ジュリアスとレヴィンは顔を見合わせ、アイコンタクトでジュリアスが指定された場所に立った。


「少し足を左右に開いて、右拳を体の正面に突き出し、倒れない様にしろ」

「わかりました」


 ジュリアスが言われた通り肩幅より少し狭いくらいに足を開き、右拳を体の前に突き出すと、バハムートはジュリアスの側面に回り、ジュリアスが突き出した右拳に平手打ちをした。

 ジュリアスは正面から拳に受けた衝撃に耐えれず、よろめいた。


「もう一都同じ体勢を取れ」

「はい」


 ジュリアスが同じ体勢を取ると、バハムートは左手でジュリアスの右の腿をポンポンと触ると、先程同様予告無しにジュリアスが突き出している右拳に平手打ちをした。


パチン!


 先程より大きな音がするが、ジュリアスはよろけない。


「え、ウソ!?」


 拳に平手打ちを受けたジュリアス自身が驚き、理解できずに笑ってしまっていた。

 そんなジュリアスをよそに、バハムートは生徒達に説明をする。


「これは、私が拳に平手を打つ前に右の腿を触った事で、ジュリアスは無意識の内に重心が右に寄った事で体幹をキープできたからだ。そして、これは全ての事に言える。

 さっき言った足の親指の使い方もそう。少し違いがやがて大きな差となるのを忘れるな」

「「「はい」」」


 バハムートはジュリアスを生徒達の列に戻すと、両手間隔に広がる様指示を出し、生徒達はそれに従った。

 次にバハムートは、両手を真横に広げて掌を正面に向け、指を少し内側に曲げる様に指示を出した。


「視線は正面をキープしろ。そうしたら、キープしたまま左右の指先を見ろ」

「「「え!?」」」


 生徒達戸惑いながらも、正面を見たまま、真横に広げた左右の手の指先を見ようとした。


「あ、見えるよ、レヴィン」

「あ、あぁ。オレもできた」


 戸惑う生徒達もいる中、ジュリアスとレヴィンはすんなりできたが、安心するのも束の間、バハムートの次の指示が飛ぶ。


「できたら次は上、下、斜めを同じ様に。視線はあくまで正面だぞ。更にそれが、できたら同時に全方向を認識できる様にする。

 これが“八方目(はっぽうもく)”という技だ」


 ジュリアスとレヴィンはできている様に思えるも、ともするとどこかの方向が意識できなかったりと不安な上、見る事にだいぶ意識を使っていて、これの上で戦うと思うと頭が痛くなる思いであった。


「常日頃から意識して使う様にすればその内慣れる」


 そして、バハムートは、朱雀寮生と玄武寮生らに拳の握り方、構え、突き方等を教えていく。

 生徒達はバハムートの指示に従い動く。

 マナーや頭を使う授業と違い、レヴィンは喜々とした表情で授業を受けていた。

 

 バハムートの指示に従い、生徒達は向かい合い、レヴィンもジュリアスと組み向かい合った。


「拳も剣と同じで、拳を出す時、当てる瞬間、拳を引く時に力を入れる。

 そして、拳を縦で打つ時は、中指から下を前に出すイメージで打つ。

 拳を横にして真っ直ぐ打つ時は人差し指と中指の部分を前に出すイメージで打つ事で、自分の手首を痛めずに強打できる」

「なんほど〜」

「たしかに言われたのと逆にすると、手首が真っ直ぐにならないから、そのまま殴ったら手首がグキってなりそうだね」


 ジュリアスやレヴィン以外も、教わった様に体を動かし確認している。


「次は体全体を使った基本の突きを教える。

 目の前に自分と同じ体格の人間がいるのをイメージしろ。

 互いに拳を突き出したら攻撃を食らってしまう。ではどうするか?

 体を横にスライドして相手の外……背中側にかわせば当たらない。内側でないのは、腰の回転で攻撃を受け可能性があるからだ。

 体をスライドさせる時は、膝を使って地面と両肩のラインが平行に動く様に」


 バハムートは説明しながら動いて見せる。そして、腰、肩と回転させ、その流れから肘を伸ばして拳を突き出した。


「足から拳にかけて、力を無駄なく伝える。そして、剣同様、拳を出す時、当てる瞬間、引く時と、要所要所で力を入れる事で拳速が上がる」


 バハムートは相変わらず涼しい顔で繰り出した拳は、生徒達にはほぼ見えなかった。


「マジかよ!?」

「見えなかった」

「拳を出し引きする時の音もヤバいぜ!?」


 驚く生徒達。中にはバハムートをマネして、拳を出し引きするもその違いが大きいのは言うまでもなかった。


「大袈裟だ。この程度の緩やかな拳速で驚くな。

 まだ修行を始めたばかりだから、体をほぐして基礎の動きを軽〜く行ってるだけだが__ 」

『『『いやいやいや』』』

「授業が進むに連れて運動強度を上げてくから気を抜くな。

 だが、まぁ、一気に上げる事はないから安心しろ」

『『『いやいやいやいや、既に前回と今回で一気にキツくなってるって!』』』


 生徒達は声には出さないが、一斉に心の中で突っ込んだ。

 バハムートの整った顔で、睨んだりしてないものの氷の様な視線を前に、言葉にする事はできなかったためだ。

 それはジュリアスとレヴィンも同様だった。


「実践では相手の攻撃に合わせて真横ではなく斜め前、相手の体の外側に入り込み攻撃をかわし、相手の追撃を封じつつ相手に一撃加えたりするが、まずは左右に動きつつ拳を突き、体の各部の連動を__ 」


 こうして、授業は進み、ジュリアスやレヴィンを始めとした生徒達は体術の基礎を学んだ。


 それからも、授業の度にバハムートの授業はキツさがどんどん増して行き、他の教科より授業数も多く、1年生達は常に疲れや筋肉痛に苦しんでいた。

 だからと言って他の教科で居眠りをしようものなら、容赦なく減点され、心身共に苦しむ様になっていた。

 ジュリアスとレヴィンは、食事の時や寮の談話室で上級生達と接する事があったが、どの上級生も自分達の1年生とは比較にならないくらい余力がある様に見えた。


 「もう、嫌だ……家に帰りたい」

 「そんな事言うなよ。体力付いたら楽になるって。早く寝て、体を回復させようぜ」


 食事と風呂を終えて談話室のソファーでぐったりしているジュリアスとレヴィンは、 同じ寮の1年生達のやり取りをぐったりしたまま何も考えず見ていた。


「……」

「……」


 しばらくソファーでぐったりしていたジュリアスとレヴィンだが、いつまでもそうしているわけにもいかず、ふたりは部屋へ向かった。

 階段を登るだけで体の至る所が筋肉痛で痛むものの登り切った二人は、自室に着くとベッドに倒れ込んだ。


「体の痛みと疲れが抜けね〜……」

「うん………」


 程なく二人の意識は落ち、夢も見ずに眠った。

 しかし、日付が変わった頃、二人は目が覚めた。

 部屋の明かりは消灯時間になると消える様になっており、部屋には月明かりが差し込むだけであったり

 レヴィンはベッドの中から周囲に手を伸ばして、何かを探した。


「レヴィン。どうしたの?」

「喉が渇いたけど起きるのが億劫で、何かないかなって……お?」


 レヴィンは体を起こすと、枕元のランプの摘みを回した。

 ランプは魔導具であり、それだけの動作で灯りが直ぐに灯った。


「あれ?飲み物とか置いてたっけ?」

「授業で作ったポーション……。

 まぁ、いいや。これも飲み物っちゃあ、飲み物だろ?」

「ケガをした時に取っておいた方がいいんじゃない?」


 ジュリアスの声も虚しく、レヴィンは躊躇なくポーションを飲み干した。


「不味い〜。もう一杯」


 レヴィンは机に置かれていたもう一本のポーションを掴むと飲み干した。


「っぷは〜!

 ふ〜、染み渡る〜……!?」


 突然レヴィンの目が見開き、ジュリアスは驚きと同時に心配になるも、当の本人はベッドから出て体アチコチ動かしている。


「ね、ねえ。大丈夫なの?」

「うん?あぁ、大丈夫。それよりもジュリ、凄いぞ!

 体の痛みが消えた!」

「えぇ!?」


 レヴィンは片足を上げて股関節を回したりしていたが、寝る前は筋肉痛でできない動きだった。

 ジュリアスはしばらく考え込んだ後、レヴィンに目を向けた。


「ねぇ、レヴィン。本当に体治ったの?痛みは無いの?」

「あぁ、痛みゼロ……な、何だよ、その目は。ほら、この通り、踊りだって踊っちゃう」


 レヴィンは屈伸やジャンプをしたり、クネクネ体を動かして見せた。

 ジュリアスはその様子を食い入る様に見る。


「いっ……。くっ……」


 ジュリアスは痛がりながらベッドから出ると、部屋のクローゼットを開け、ゴソゴソと何かを探し出す。

 少しして、調合に使う器具を2セット取り出すと、机の上に置いた。


「レヴィン。これで鍛錬の授業を乗り切れるし、上手く行けば体を鍛えるスピードを上げれるかもしれない」

「え?どうして?」

「急に体の痛みが消えたんだよね?」

「あぁ」

「考えられるのはポーションを飲んだから」

「あ~!ポーションは怪我を治すって効果があるって教科書に書いてあったけど、筋肉痛にも効くって事だ!」

「それだけじゃないよ。

ほら、バハムート先生やハピ先生が、鍛錬で筋肉痛になって回復する時に、鍛錬前より体が少し強くなるからちゃんとご飯食べて、しかっり寝る様にって言ってたじゃない」

「そういえば、そんな事言ってたな」


 ジュリアスは辛そうにベッドに腰を下ろした。


「ポーションで痛みが失くなったって事は、筋肉痛はケガに含まれるって事で、それを回復させれたって事は、筋肉痛になる前によりも強くなってるって考えられるんだよ」

「おぉ!じゃ、じゃあ、毎回鍛錬が終わった後にポーションを飲んだら、鍛錬後の苦痛を無しにして、楽に鍛えられるって事だ!」

「それだけじゃないよ。常に全力で鍛錬して、体の痛みと疲れが溜まったら直ぐにポーションを飲むのを繰り返せば、早く強くなれる可能性もあるって事だよ」

「すげ〜!魔法薬の授業のやる気が出て来たぜ〜!」


 教科書を手に取り興奮するレヴィンと対照的に、ジュリアスはベッドに寝っ転がった。


「じゃあ、レヴィン。とりあえず、これからポーションの材料集めて来てよ」

「へ?」


 間の抜けた顔で振り返るレヴィンを、ジュリアスは頭を上げてジト目でレヴィンを見返した。


「さっき僕が作ったポーション飲んだでしょ?」

「あ……」

「僕はまだ体中筋肉痛なんだから、とりあえずポーション3つ分くらい集めて来てよ」

「でも、もう夜なんスけど……」

「僕の分のポーションはもう無いし、明日授業出れるのかなぁ……」

「わ、わかったよ。行く、行って来るよ」

「よろしく〜」


 ジュリアスはニコっと微笑み、レヴィンに手を振った。

 レヴィンは諦めて扉の前に立つと、扉に耳を当て部屋の外の様子を伺った。

 そして、外に誰もいないと思ったレヴィンはそっと扉を開けて覗き込み、廊下に誰もいない事を確認するとコソコソと部屋出て行ったのだった。

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