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聖剣士物語(仮)  作者: レイファ
序章 レベン村の子供達
2/31

#2 序章 2話

 教会を後にしたマリウス、ジュリアス、レヴィンの3人は、兵士達の駐屯所に向かっていた。


「驚いたよな〜。モーリス神父のあんな顔初めて見たぜ」

「そうだね。びっくりしたぁ」


 レヴィンの声に、預かった鍵を弄りながら応えるジュリアス。その横では、マリウスが渋い顔をしてる。


「こりゃ、何かあるな……」


 マリウスの呟きに手を止めるジュリアス。


「何かって?」

「あの“ホワイトヘアードゴッド”と呼ばれるモーリス神父が、あんな顔したんだ。それもオレ達の心配じゃなくて、光迎祭の心配でだ。しかも、一緒に行く兵士のおっちゃん達も今回のお遣いだけ多いんだぜ」

「う〜ん……」


 考え込むマリウスとジュリアスの肩を、レヴィンがバシバシ叩く。


「考え過ぎ、考え過ぎ。

 オレらがヘマしたら神父が司祭に怒られるとか、そんなとこだって!」

「いや、それはないだろ。お前じゃないんだから」

「うん。ないね」

「それよりも、早く駐屯所にーー」


「レヴィン!マリウス!何してんだい!!」


 マリウス達が驚いて横を向くと、大きな籠を持った恰幅のいい中年女性が近付いて来きて、持っていた大きな籠を地面に下ろすとマリウス達の前で腕組みをする。


「レヴィン、マリウス。こんな所で何サボってだい。今はお勤めの時間のはずだよ」

「ロイのおばさん!サボってるわけじゃないよ。オレ達これからモーリス神父のお使いなんだ。な?」

「あ、うん。そうそう……」


 マリウスとレヴィンは、このロイの母親であるミランダにこれまでイタズラやケンカをしては何度もキツく叱られているため萎縮しつつも、サボってない事をアピールする。


「本当かい?また何か悪さしようってんじゃないだろうねぇ?」

「ミランダおばさん。本当です。僕達モーリス神父のお使いで、これから兵士のおじさん達とヘザーの街に行くんです」


 マリウスとレヴィンの影で見えなかったジュリアスに気付くと、ロイの母親であるミランダの表情が和らいだ。


「あら、ジュリ坊。ジュリ坊が言うなら大丈夫だね」

「「えぇ!?何で?」」


 マリウスとレヴィンは即座に文句を言うも、ミランダは笑い飛ばす。


「あんた達は悪さばっかりするけど、ジュリ坊はいつも真面目に、率先して色んな仕事をしっかりやるからね〜。ま、日頃の行いの差だね」


 納得し切ってない様子のマリウスをレヴィンに、ミランダは籠に入ってる物を無造作に投げ渡す。


「ほら」

「え?あっと!?」

「おっと!?」


 マリウスとレヴィンは慌てて受け止めた物を見ると、大きな紫色の桃であった。


 この白桃ならぬ紫桃(しとう)は、白桃より味と食感が圧倒的に優れ、レベン村の収入を支える物の1つである。しかし、収穫量が少なく、村の子供達はなかなか食べる機会のない、村の甘味の王様なのである。


「「おぉ〜〜!!」」

「ショボくれた顔するんじゃないよ。ジュリ坊みたいに信用されたかったら、もっと積極的に村の仕事を手伝わないとね。ほら、ジュリ坊も」

「ありがとうございます。ミランダおばさん」

「うん」


 ミランダはジュリアスの頭を撫でると、マリウスとレヴィンの頭もワシワシと撫でる。


「ヘザーの街まで行くんなら、山を降りるんだ。それ食べて、ケガしない様にがんばるんだよ」

「わかった」

「はい」

「わかってるよ」


 マリウス達はミランダと別れ、村の入り口にある兵士の駐屯所に向かう。

 紫桃を食べ歩くマリウスとレヴィン。

 ジュリアスはゆっくりできる時間まで取っておくつもりで、その事を聞いたマリウスは街で売れる事に気付いて悔しがった。

 次第に紫桃がいくらで売れるかで話しが盛り上がっていると、3人は兵士達の駐屯所へと辿り着いた。


 レンガ造りの駐屯所の入り口には、革の鎧で身を固め、槍を持った男が立っていた。

 男はキリっとした表情であったが、マリウス達に気付くと表情を和らげ手を上げた。


「よう、マリウス!」

「おはようございま〜す」

「「お、おはようございます!」」


 村の子供達は兵士と接する機会は多少あるが、教会での礼拝の前後くらいであり、武装した状態の兵士とは接する機会は少なく、ジュリアスとレヴィン カッコいいとテンションが上がると同時に緊張していた。


「あぁ、おはよう。たしか、レヴィンとジュリ……アスだったな。隊長が中で待ってるぜ」


 門番の兵士に中に通されるマリウス達。

 中に入ると大きな机があり、机の上には地図や書類が散らばっていたが誰もいない。そして、机の奥の扉は開けられており、奥の部屋から物音が聞こえる。


 何度か詰め所に来た事があるマリウスを先頭に、3人は奥の部屋に入った。


「こんちは〜。隊長さ〜ん?」

「ん?誰だ?おめぇ達?」


 野太い声がマリウス達の背後の上の方から聞こえ、3人は揃って振り返って見上げる。


 そこには、筋肉隆々のとんでもなく大きな男が立っていた。笑おうとしてる様であったが、マリウス達にはその顔が恐ろしく見えた。


「「「わぁ〜〜〜〜〜!!!」」」


 マリウス達の絶叫が木霊し、部屋の奥からマリウス達の絶叫を聞きつけた兵士達が姿を現す。


「何だ、何だ?騒々しい」

「でででで……」

「でで……で〜」

「で〜」


 腰を抜かし、姿を現した兵士達に這い寄るマリウスとレヴィン。

 ジュリアスは大男を見上げて口をパクパクさせている。


「「「はっはっはっはっ」」」

「あ〜、驚かせみたいだな。メチャクチャ図体がデカくて強面だが、こいつもレベン村駐屯隊の一人だ」

「へ、兵隊さん?」

「あぁ。ついでに言うと、こんなナリだが、こいつは子供とネコと犬が大好きなんだ。ほら、立って」


 兵士達に起こされるマリウス達。改めて大男を見ると、大男は他の兵士達より頭2つ分くらいは大きかった。


「おで、詰め所に知らない子供がいだがら、『誰だ?』っで聞いただけ。怒鳴っだりしでない」

「お前のその図体と髭面で見下ろしゃぁ、ガキなんてみんなビビるっての」

「でも……」

「わかった、わかった。ほら、オレらは荷物の準備だ」


 クセのある赤毛の兵士に促されて、大男は駐屯所の外に出て行った。


 入れ替わる様に、他の兵士達より体を覆う面積が広く装飾性も高い革鎧を着た男がマリウス達の前に立つ。

 レベン村を中心に近隣の村々の駐屯隊をまとめる、オルガ・アシュレイである。


 オルガの後に続く兵士が、マリウス達の前に木箱を置いた。


「騒がしくなってしまったが……おはよう、マリウス。そして、レヴィンにジュリアスも」

「「「おはようございます」」」

「ジュリアスとレヴィンは、ちゃんと話しをした事がなかったな。

オレはレベン村とここら一帯の駐屯隊を指揮しているオルガ・アシュレイだ。正式な役職名は長いから、みんなからはわかりやすく隊長と呼ばれている。

 早速だが、準備をしてもらう。おい……」


 オルガが促すと、兵士の一人が箱を開ける。中にはレザーアーマーが複数セット入っていた。


 2人の兵士がジュリアスとレヴィンにレザーアーマーを装備させる。マリウスは兵士から受け取って自分で身に付けていた。


 胴・腕・腰回り・脛のレザーアーマーに加え、ジュリアスとマリウスは革の頬当を、レヴィンはレザーヘルムを装備した。


 マリウス達が身に付けた物は、兵士達の物より明らかに厚みがあり、ボテッとした印象の格好になっていた。


「3人ともなかなか似合うじゃないか」

「隊長さん、武器!武器は無いの?」

「あるぞ〜。後で渡す。

 ん?どうしたジュリアス。鎧がキツいか?」


 はしゃぐレヴィンと対象的なジュリアスにオルガは声をかける。


「いえ、キツくはないです。ただ、分厚くて何だか慣れないなと思って……」

「そうか。お前達が着てるそのレザーアーマーは、年長組が鍛錬の時間に使うヤツでな」

「ダサイし、夏場は蒸れるんだよな〜」

「そう言うな、マリウス。そいつは硬い革の下に、靴底なんかにも使われるアタックボアの革が多めに使われていてな。動きやすさよりケガをしにくい様に作ってあるのさ」

「そうなんですか」

「ところで、隊長。オレ達何で鎧着させられてるんです?

 これからヘザーまで行くんスから、鍛錬は勘弁なんスけど」


 マリウスの一言にハッとすると、ジュリアスとレヴィンはオルガに注目する。


「もちろんこれからヘザーまで行くのに、これから鍛錬をするなんて言わないさ」


 ホッとするマリウス達であったが、オルガの次の一言に身を強ばらせる。


「ただ、こちらにもちょっと仕事があってな。お前達にはヘザーの街に行く前に、オレ達に付き合ってもらう。

 その関係で最初は通常の下山ルートは通らないから、ケガしない様に念のため鎧を着せたってわけさ」


 顔を見合わせるマリウス達。そんなマリウス達の肩を叩きながら発破をかける。


「浮かない顔してるなぁ。いいか、物は考え様だ。

 普通は年長組しか着れないレザーアーマーを着て、オレ達がいるから獣も夜営も心配無い。そして!通常の下山ルートを通らないって事は?」

「う〜ん……あ、他の奴らは行った事がない!」

「そうだ。なんかしけたツラしてるが、他の子達が行った事がないって事は、まさに冒険の始まりだろう?お前達はとてもラッキーって事だ!」

「「「おぉ〜〜〜!!」」」


 オルガの言葉にマリウスとレヴィンだけでなく、普段大人しいジュリアスも目を輝かせる。


 そんなガマリウス達3人を連れて駐屯所の外に出ると、5人の兵士が荷物を整え待っていた。


「お前達、今日からしばらくオレ達と行動を共にする子達を紹介する。

 マリウスと、ヘルムの子がレヴィン。金髪の子がジュリアスだ」

「「「よろしくお願いします」」」


 マリウス達は揃って頭を下げると、オルガはマリウス達に部下を紹介する。


「お前達から見て右側の二人はさっき会ったな。赤毛なのがウェッジ、デカイ方が見た目通りのビックスだ」


 ビックスはウェッジの陰に隠れる様に半歩下がり、ウェッジに腕を叩かれた。


「その図体で隠れるわけねぇだろ!ちゃんと挨拶してやれよ」

「さっぎは驚がじて悪がったな。

 おで、ビックス。よろじくな」

「こんな図体でちょ〜っと顔が厳ついかもしんないけど、子供好きのいい奴だから」

「続けるぞ。真ん中から。エゼント、ペーゼ、ラートだ」


 ウェッジやビッグスより一回り年上のエゼント達にマリウス達が挨拶を済ませると、オルガはマリウス達に槍を渡す。


「お待ちかねの武器だ。間違ってもふざけて振り回さない様に!」


「「「はい!」」」


 マリウス達3人は受け取った槍をまじまじと見る。

 樫の木でできた柄の先に小ぶりの穂先が取り付けられた、マリウス達の背丈に合った長さの槍だった。


 準備を終えた一向は村の出入口へ移動した。


 基本的に各地の村は、万が一にも獣や魔物がにも入り込まない様に分厚く、高い外壁に囲まれている。


 マリウス達が村の出入口である門が見えて来るも、兵士9人がかりで巨大な引き戸式の門を開けようとしていた。


「門って閉める事あるんだ。オレ初めて見たぜ!」

「僕も」

「たまに動かしてちゃんと閉まるか確認しないでいて、いざって時に錆びて動きませんって事にでもなったらイカンからな」

「なるほどね〜……」


 茶髪の角刈りのペーゼは門番の下へ走り、ビックスは門を開けるのを手伝いに向かった。


 マリウス達3人は、初めて閉まっている門を開けようとしている兵士達を物珍し気に見ながら、オルガ達の後に続いた。


 オルガ達が門に着くと、ペーゼが小走りに戻って来た。


「隊長。車輪が一部動きが悪いらしくて、開門に時間かかってる様ですが、もう少しで整備は終わるとの事です」

「そうか、ではーー」

「待って〜〜〜〜〜〜!!」

「ん?」


 包みを抱えた一人の少女が、オルガ達の下へ息を切らして駆け込んで来た。


「どうした?何かあったのか?」

「はぁ、はぁ……ジ、ジュ……はぁ、はぁ……」

「エミリア!?」


 息切れしている少女がエミリアである事に気付くと、普段落ち着いているジュリアスが慌てる。


「ど、どうしたのエミリア?だ、大丈夫?」

「とりあえず深呼吸しろよエミリア。でもって、ジュリアスも落ち着けよ」

「う、うん……」


 エミリアが深呼吸している間にジュリアスは門番から水をもらいに走り、エミリアに飲ませる。


「はぁ〜……ありがとうジュリアス」

「落ち着いたかい?お勤めの時間にずいぶん急いで我々の所に来たみたいだが、何かあったのかい?」


 エゼントがエミリアに優しく声をかけると、エミリアは慌てて身嗜みを整える。


「いえ。特に何か問題が起きたわけじゃないんです。

 ジュリアスを見送りに来たんです」

「フュ〜〜♪」


 ウェッジが口笛を鳴らして反応する。

 ニヤニヤしながらジュリアスの背筋を伸ばさせて、エミリアの前に立たせる。


「ジュリアス。これ、お弁当。途中で食べて」

「ありがとう」

「やるな〜ジュリアス」


 エミリアは、一人反応するウェッジの前に立つと、ニコっと微笑みウェッジに包みを渡す。


「少ししかないですが、蜜棒です。みなさんで食べて下さい」

「え?あ〜、ありがとう。後で頂くよ」

「ジュリアスをよろしくお願いします」

「あぁ。ちゃんと面倒見るから安心しなよ」


 その様子を見ていたレヴィンは、ウェッジの横に立つと自分とジュリアスの弁当を交互に指差し、無言のアピールをする。


 エミリアはジロとレヴィンに視線を向ける。


「無いわよ。それより、その被ってるヤツ貸して」

「へ?」

「いいから貸して」

「あ、あぁ……ほら」


 レヴィンからレザーヘルムを受け取ると、エミリアはレザーヘルムをジュリアスに被せる。


「よし♪」

「エミリア?」

「……え?ジュリに装備させるの?オレの頭の装備がなくなるじゃん」

「あんたはいいの。それより、ジュリアスにもしもの事が大変でしょ!」


 あっけらかんと言い放つエミリアに呆気に取られるウェッジ。

 レヴィンはエミリアと言い合いを始める。


 見かねたオルガがエミリアとレヴィンの頭に手を置いて、二人の動きを止める。


「よ〜し、ストップだ。エミリア、いいか。

 ジュリアスが装備を固めて、その分レヴィンの装備が少なくなるって事は、もしもの時にはレヴィンを下げざるを得ない。と、いう事は、その時には一番装備を固めてるジュリアスが前に出る可能性が高くなる」

「それは困ります」

「だろ?3人が 一通り装備をしてれば、交代で前に立つ事で2人が戦ってる間に1人は呼吸を整えるって事も可能なわけだ。それに、オレ達がいるんだから心配はないさ」

「わかりました」


 そんなやり取りをしてる間に門が開け終わる。


「じゃあ、行って来るね。買う余裕があったら何かお土産買ってくるから」

「お土産はなくていいから、ケガしないで帰って来てね」


 こうして、マリウス・ジュリアス・レヴィンの3人は、オルガ達レベン村駐屯隊の兵士達と共に村を出発したのだった。

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