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聖剣士物語(仮)  作者: レイファ
序章 レベン村の子供達
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#1 序章 1話

「――こうして壮絶な戦いの末、光の神レイティス様は邪神イブルアルターを討ち滅ぼしたのでした。しかし、邪神との戦いでレイティス様も深く傷付き、傷を癒すため天界へお戻りになったのでした!」


 ここは、アルザード大陸南東部の山奥にあるレベン村。


 この村の年季の入った教会の一室で、中年のシスター マギー・クラレンスの話しを聞いていた子供達が騒ぐ。


「えぇ〜、じゃあ毎日祈っても意味無いじゃ〜ん!」


 子供達は次々に文句を言う。この子供達の多くは孤児である。

 孤児は今の時代は珍しくはなく、孤児がいる村では孤児とそうでない子が分け隔てなく育てられている。


「いいかい?神話にはこう続きがあるよ……天界にて神々を統べ地上を見守る創造神アルディオス様は、レイティス様の代りとして精霊神を遣わし、精霊神は聖剣の英雄と共に邪神の手下残党を打ち倒していったと記されてるのよ」


 クラレンスの話しを聞く子供達の中で一番大柄の肥満児、通称ビックGと呼ばれるガキ大将のジャイン・ジーノが悪態をつく。


「ウソくせ〜〜〜っ!」

「あら、ジャイン。何がウソくさいの?」

「だって、神様なんて見た事ないし、聖剣の英雄なんて話し聞いた事ないもんよ」


 勝ち誇った表情のジャイン。彼の近くに座る金髪の美少年ジュリアスがそっと訂正する。


「聖剣の英雄の話しは、何度かシスターがしてくれたよ?」

「何っ!」


 ジャインがキッとジュリアスを睨むと、それに気付いたジャインの子分 スニーオがジュリアスの頭を叩く。


「痛っ!?」

「ジュリアスのクセに生意気だ〜!だよね、ビックG?」

「あぁ、生意気だ」

「ちょっと、スニーオ!ジュリアスに何すんのよ!!」


 端の席から黒髪で、大きく意思の強い目をした少女エミリアは、勢い良くスニーオに詰め寄ろうとするが、スニーオはジャインの後ろにサッと隠れる。


「何よあんた。どきないさいよ!」

「弱虫ジュリ坊のブス嫁がうるせ〜んだよ!生意気なジュリアスが悪いんだ!」

「なんですって〜?しかも、ブスですって〜〜〜!!」


 一触即発のエミリアとジャイン。周囲は一発即発の雰囲気に声をかける事もできずただ見てるだけだったが、机に頬杖をついてダラっとしているマリウスが、遠巻きに煽りを入れる。


「エミリア〜、無理言ってやるなよ。ブタの美的感覚が人間と同じなわけないだろ?」

「ブタ?」

「そう。腕も腹も丸々としてて体系的にピッタリで、凄んで見せてもどこかコミカルだ。

 なぁ、ピッグG?」


 マリウスの一言に何人かの子供が釣られて笑うと、ジャインの顔が怒りでみるみる赤くなる。


「マリウスめえぇ!」


 ジャインが近くにあった木製の花差しをマリウスに投げつけるも、マリウスはサッとかわした事で後ろにいた茶髪の少年ロイの顔に当たり、鼻血が出る。

 さらに少年に当たった花差しから、花や水がエミリアやその近くにいた子供達に飛び散った。


「グブっ!?う、うわぁ〜〜ん!」

「冷た!?ちょっと何すんのよ!!」


 これを切っ掛けに室内では物の投げ合いに発展する。


「エリミア〜、当たってないぞ〜。よく狙え〜」


 と、怒鳴り声が飛び交う中に、時折呑気な声でマリウスが煽る。

 ジュリアスを始めとしたおとなしめの子供達は、固まってオロオロしている。


ギギギギ〜〜〜〜〜〜〜〜!!


 収集がつかない様相を引き裂く様に、クラレンスが黒板を爪で引っ掻く音が響き渡る。

 その不快な音に子供達は悶える。


「朝からバカ騒ぎするんじゃないよ!!

 あ〜、あんた達のお陰で爪が磨り減ったじゃない!」

「どういたしまして♪」

「お礼じゃなくて怒ってるの!だいたいマリウス、歳上が煽ってんじゃないの!」

「イテっ!」


 クラレンスはマリウスの頭をはたくと手を叩きながら黒板前の机の前に立ち、号令を出す。


 子供達は床を拭き、投げられた物を片付け机を並べ直すと、各々の席に着席する。

 クラレンスは子供達を見渡し、咳払いを1つすると仕切り直しとばかりに話し出す。


「いいですか、皆さん。バカ騒ぎはここまで。これで終了、終わり。いいわね?

 さて、前から話していた光迎祭が近付いています」


 大半の子供達がソワソワし出す中、数人の男子はポカンとした顔をしている。

 すると、黒髪の少年レヴィンがジュリアスに耳打ちする。


「なあ、コウゲイサイって何だっけ?めんどくさいやつだっけ?」


 ジュリアスが小声で返事をしようとすると、ジャインや近くにいる2人の男子も会話に入ろうとして来た。しかし、その後ろにクラレンスが立つと、ジュリアス以外の頭を叩く。


「ちゃ〜んとお話しを聞いてなかった子がいる様なので、もう一度説明します。

 いいですか……光迎祭というのは15年に1度、光の神レイティス様の眷属とも言われる光の聖霊様の御使いをお招きして、この地域を清めて頂く大事な儀式の日です。その大事な儀式を、近隣の村を代表して毎回このレベン村で行います」


 儀式と聞いて、ほとんどの男子の顔が曇りかけるが、次のクラレンスの一言で表情が一変する。


「光迎祭には、他の村の村長さんや神父の他に、王都から聖剣士(セフィター)様がお見えになります。それも称号をお持ちの聖剣士様です。そして、当日は儀式の後、特別なご馳走も用意してお祝いをします」


 この言葉に子供達は男子も女子も興奮する。

 聖剣士は太古の昔、聖剣の英雄を筆頭に神と共に邪神を倒し、その後も闇の脅威を現在に至るまで内払い続けているとされるこの国の子供達の憧れの存在であり、称号持ちの聖剣士は一般の聖剣士よりも上位の存在である。そして、ご馳走は年に数回ある祝いの行事の際だけであり、物事を大袈裟には言わないクラレンスが特別と付けただけに、期待度は自然高まる。


「お黙り!儀式に参加したくないなら、欠席で構わないんですよ?」


 今度はこの一言で子供達はピタリと静まり、物凄い早さで着席し、姿勢を正す。


「あら、急にみんな良い子になっちゃったわね?」

「ええ。大事な儀式を控えて気持ちを引き締めましたからね。

 あぁ……不幸なアクシデントが…ちょっとだけありましたけど」


 チラッと鼻血を出したロイを見つつ、大げさなジェスチャーで話すマリウスにやや呆れるも、クラレンスは気を取り直して話しを続ける。


「まぁ、いいわ。それでは、今日から皆さんにも色々手伝ってもらいます。

 マリウス、ジュリアス、レヴィンの3人はモーリス神父の所に行って下さい。

 他の皆さんには、まず手分けして教会の大掃除をしてもらいます」

「「「「「は〜〜〜いっ!!」」」」」





 マリウス、ジュリアス、レヴィンの3人はモーリス神父の部屋に着くと、先頭のマリウスがノックする。


「どうぞ〜」


 中から返事があり、3人が部屋に入ると、黒いローブに緑のショールを羽織った恰幅のいい白髪の神父ロラン・モーリスが、鉢植えに水をやっていた。


「待っていましたよ」


 モーリスは水差しを置いて大きめのデスクに座り、マリウス達と向かい合った。


「そう言えば、今日も元気な声が聞こえましたね。

 元気なのは良いですが、あまりシスターを困らせてはいけませんよ」

「す、すみません」


 ジュリアスはすぐに頭を下げ謝るが、マリウスとレヴィンは苦笑いを浮かべているだけだった。


「さて、ジュリアスにレヴィン。

 今月の街へのお使いは2人の番です。知ってるとは思いますが、村の駐在兵の方達と山を降りた先にあるヘザーの街に行ってもらいます」

「「はい!」」


 ジュリアスとレヴィンの顔がほころぶ。

 村の子供達は基本的に村から出ず、村の仕事の手伝いで村を出たとしても村から遠く離れる事はない。また、村ではお金を使う機会がないため、お使いではお金の使い方を実践すべくお小遣いがもらえ、街では好きな物を買う事ができる。そのため、お使いは子供達にとっては冒険と旅行を合わせた一大イベントなのである。


「みなさんがヘザーへのお使いを楽しみにしているのは知っていますが、駐在兵の方達の言う事はしっかり聞き、軽はずみな行動はしてはいませんよ。

 道中、獣に襲われる可能性もあれば、街で良からぬ者が近寄ってくる可能性もあるのですからね」

「「はい、神父!」」


 心配するモーリスに対し、ジュリアスとレヴィンが姿勢を正して返事する姿を見てモーリスは頷くと、引き出しから手紙とキレイな赤い布に包まれた物を取り出す。


 モーリスが布の包みと手紙を机に置き布を広げると、緑色の装飾が入った鍵が現れた。


「さてジュリアス、レヴィン。

 今回のお使いですが、この手紙と鍵をヘザーの街の教会にいるグラフェス司教にお渡しして、光迎祭で使う祭器を受け取り、帰って来て下さい」


「「はい。モーリス神父」」

「では、鍵はジュリアスに。

 落とさない様に首からかけていなさい」


 モーリスは立ち上がり、鍵についてる細い革紐をジュリアスの首にかけると、レヴィンに手紙を渡す。


「手紙はレヴィンが持っていなさい。

 失くさない様にして気を付けるのですよ」

「はい」

「雑に扱って破らないで下さいね」

「はい」

「汚したり濡らしたりしてはいけませんよ」

「は、はい」

「中を覗こうとして、ちょっと開けてみる……というのもダメですからね」


 度重なる注意に、レヴィンは正した姿勢を崩してモーリスに抗議する。


「あ〜もう!わかってるよ、モーリス神父!何でおれには小言が続くのさ」


 レヴィンは、15年に一度の行事に関わる事だから念を押されるのは理解するも、ジュリアスは何も言われず自分だけが色々注意されるのが納得できなかった。


「キミはいつもジャイン達とケンカしたり、イタズラしたりしてますからね」


 モーリスの小言にレヴィンが抗議しようとするも、これまで話しを振られなかったマリウスが待ちくたびれて先に口を開く。


「あの〜、モーリス神父。レヴィンの文句は置いといて……僕は、どうしてここに来る様に言われたんでしょう?」

「うん?あぁ、すまないマリウス。

 レヴィンが心配ですっかり忘れてました」

「ちぇっ」


 拗ねるレヴィンと、それを宥めるジュリアスを横目に、モーリス達は話しを続ける。


「普段、山を降りヘザーの街へのお使いは、山を降りた回数が少ない子から順番に行ってもらっています」

「それで全員が一巡したら、またヘザーに行くチャンスがあるんですよね?」

「そうです。そして、まだ順番待ちの子もいますが、今回はマリウスにも行ってもらいます」


 それを聞いたレヴィンがすかさず反応する。


「ずっり〜。贔屓だ!」

「モーリス神父、マリウスの番はこの前終わりましたよ」


 普段優等生のジュリアスも不満を滲ませる。


「それはキミ達のためですよ。今回のお使いは光迎祭に関わります。この時期は良からぬ者も増えます。前回もそうでした。

 そのため、同行する兵士の方の人数を増やしてもらいますが、兵士の方にもこの時期は特別な仕事があります。

 また今回のお使い内容は普段より重要度が高いので、読み書き・算術の他に、少しですが戦闘の基礎訓練も受けている年長者のマリウスに、2人のサポートをしてもらいます」


 モーリスの説明にジュリアスは納得するも、レヴィンは文句こそ言わないが納得いっていない様子。

 話しが見え早く開放されたいマリウスは、話しをまとめに入る。


「とりあえず、今回のお使いは光迎祭関係の重要任務で、ジュリアスが鍵。レヴィンが手紙を持ってヘザーにいるグラフェス司教に渡して、司祭からは光迎祭で使う道具をもらって戻って来る。で、オレは二人のお守りで、まずは村の駐屯所へご案な〜い……で、合ってます?」

「ええ、その通りです。光迎祭は、聖剣士様が派遣される程の重要な儀式です……。

 万が一にも、光迎祭を予定通りに行えない事があってはなりません」


 モーリスはいつも笑顔を絶やさず、子供を叱る時には困った表情を浮かべるも、決して激昂する事はない男であったが、そのモーリスの顔から一瞬笑顔が消え真剣な表情になりとてもないプレッシャーが滲み出る。

 一瞬の事であったが、マリウス達は息を飲む。


「ですから、道中ケンカしたりする事がない様に。

 これは単なるお使いではなく、街へ出ての勉強でもあります。

 みなさん、気を抜かずしっかりと勤めを果たして下さいね」

「「「は、はい」」」


 こうしてマリウス、ジュリアス、レヴィンの3人は、村の入り口近くにある兵士の駐屯所へ向かったのだった。

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