「あるある探偵。」 笑劇のサプライズ
最近、ある界隈でストーカー被害が続出する事件がニュースになっていた。
そんなある日、私の元に探偵依頼が舞い込んだ。
依頼主はOLとして働く女性。
結婚を見据えて同居している彼氏がいるのだが、なかなかプロポーズをしてくれないそうだ。
一年前かな?そんな彼とデートをしていると、ある日突然、襲撃の被害に遭った...。
彼は私を守ろうと揉み合ったが、怪我もなく、金品は取られる事なく犯人は去っていったわ。
その後、一人で歩いていると後ろから人の気配や、携帯のカメラ音がするようになったの...。
狙いは分からないが、恐らく私のストーカーかもしれないの...。
身に覚えないし、どこかで知り合った人は特にいないし...。
ちなみに、彼女はその一件以来、武術を趣味で道場に通うようになり、烈蹴拳を習得。
いざという時に、襲われたら相手を退治するつもりらしい...。
(烈蹴拳とは、相手のパンチを受け止めずに振り払い、よろけた隙に蹴りを入れる技のこと)
そして、彼氏には秘密だが、武術大会に一度出た事があり、デビュー戦で優勝したらしい。
趣味で始めた事だけに試合は一度切りだと道場は退会したそうだが、私からすると、自分で解決できそうなんじゃない?と思ってしまった...。
数週間が経ったある日、その彼氏が今度は探偵依頼に来られた。
依頼内容は、 「彼女に誕生日サプライズを仕掛けたいが、バレずに何とか周辺をうまく固めてほしい」という内容だった。
サプライズに私も加担するってことになるのかな...?
それはそうと...。
全く、二人揃って依頼に来るとは何だか面倒臭い事になったな。
まさに板挟み状態だわね...。
彼は詳しく説明を続けた。
「実は誕生日のサプライズとして、彼女主演の自作映画をこっそり制作しているんです」
「最後にドッキリでした〜!!と
演者皆んなで、フラッシュボムを披露して驚かせるつもりなんです」
「最終回は僕が敵を倒してプロポーズするという内容のストーリーなんですが...」
だが、その計画はどうやら上手く進んでいないらしいのだ。
そのストーカー役は彼の友人で、要するに、映画の主人公を引き立たせる役者みたいなものらしい。
もちろん彼女は、そんな裏事情は知らない...。
ある日、彼女はストーカー役に遭遇し........。
なんと........!
退治してしまったのである........!
大事には至ってないが、実は怪我をさせてしまったらしい。
数日後、彼はまた依頼に来て彼女に友人がやられた。と報告を受ける。
私は何をすれば良いのか困惑しかない。
とりあえず、彼女の行動を監視するだけに留める事で、サプライズに協力する形になった。
もちろん、彼女には依頼であるストーカー被害も一応、調査を進めていると説明してある。
ついに本番の最終日である彼女の誕生日前夜。
日が明けた午前0時に標準を合わせる計画である...。
なんだか、サプライズあるあるに参加している私は、どこかテンションが上がっていた。
でも、これから小っ恥ずかしい雰囲気を俯瞰で見るんだなと思うと少し冷静になれた。
そろそろ、彼女を敵から救うクライマックスの時間だ。
私は計画がバレないように彼女の行動は伝えてあるから心配は無い...。
柱の影から私は映画の結末を見守る事にした...。
ストーリー上では、 " 海辺のデート中にストーカーに襲われて彼が敵を退治したところでサプライズのプロポーズをする " 流れだ。
だが、現れたのは彼氏だけ...。
約束の場所に彼女の姿が無い...。
なんとクライマックス前に彼女が敵を退治してしまい、目撃した刑事に捕まってしまったのだ...。
だから彼氏の描いたストーリーとは違う展開になってしまいサプライズが台無し...。
かに見えた...。
彼女は護身のためだったとして、お咎め無しになったのだ...。
刑事から解放された彼女は無事に戻ってきた。
約束通り彼は彼女と海辺デートをする...。
周りには港夜景がお洒落な雰囲気を彩り良い演出をしている...。
そこで、ストーカーの登場だ。
だが、その人物は友人ではなく、彼の知らない男だった...。
とりあえず、退治することに成功。
彼は知らない男の登場に少し戸惑っていたが、サプライズのプロポーズを始めた。
彼女はもちろんOK!!
見事なサプライズは成功し、プロポーズはカッコ良く決まった!!
「ハイッ!OK!」
「これは映画の撮影で、ストーカーも刑事も嘘でしたー!」
「全てドッキリでしたー!」
「これ結婚式の映像に使えそうだね!」
と、ドッキリの看板を片手に彼の友人が建物の裏からゾロゾロと出てきて目の前に勢揃いした。
その中に、あの刑事と、さっき退治したストーカーがいた。
これはどういうこと?
そう彼氏と彼女は知らないが、キャストは私が用意したんだよね〜。
私は彼の友人に、私が考えた計画を持ちかけたのよね...。
だから計画を知っているのは友人だけなのよ〜。
彼の計画は単純で、彼女が敵を打ち負かす事を知っていた私は彼の計画は成功しない事を予想していたの...。
だから、人物を増やして芝居に一捻り入れてみたのよ〜。
だから、彼女が退治した友人は怪我をしていないのよ。
彼女に倒される前提でいたから、洋服の下はエアバッグ装着しておいたのよ。
我ながら素晴らしいアイデア...。
最終的には友人が彼に耳打ちをして私の計画はバレちゃうんだけどね...。
翌日、彼氏と彼女が探偵事務所にやって来た。
あなたのお陰で結婚することになりました。
ありがとうございました。
だが、二人とも探偵に依頼していたことはお互い知らないのである。
これも私の " あるある作戦 " が功を奏したんだと...。
あるあるとは...?
サプライズは計画しすぎると本番に " とちる " 。
第三者の一捻りで、サプライズは本格化する。
サプライズには黒幕が必要。
が私の中の " あるある " である。
最後は二人とも笑顔で帰っていったし、終わりよければ全てよし!
依頼料も弾んでくれたし...。
私はこれからも " あるある " でどんな依頼も見事こなしてみせるわ!