「あるある探偵。」 登校少女
今日の依頼は、行方不明の少女を探し出すこと。
少女は小学生で、依頼主は母親である。
なんと、学校からの連絡で登校していないという。
今朝、家を出て登校姿を見送ったはずが学校に来ていないそうだ。
「いつも近所の友達と登校しているのが日常なんですが...」
あまり騒になるのを嫌い、捜索願いは出さずに探偵にお任せしたいという事みたいだ。
私は早速、学校に潜入。
スーツを着て先生に扮して紛れ込んだ...。
「まずは、いじめによる不登校の線から探ってみるか...」
少女の机を調べてみると、給食のコッペパンを食べきれなかったのか机の中に隠してある...。
机には落書き...。
ノートの端にはパラパラ漫画...。
ご飯を食べるのが遅いというのは聞いていたが、まさか...。
給食を昼休みが終わっても食べているのか?
いじめの対象になってないか?
先生に尋ねるが、いじめは全くないそうだ。
バカにされる様子はたまに見かけるらしいが、そこまでじゃないようだ。
「いじめの線はとりあえず無しだな...」
「今度は通学路を徹底的に調べてみるか...」
もしかしたら、証拠になりそうな何かを見つけられるかもしれない...。
もしかして、身につけている物が落ちていたら誘拐の可能性もある...。
まずは、その路線で考えてみようかな?
しばらく歩いていると、通学路には、よく見かける赤い花がたくさん咲いていた。
その周りには蜜を吸ったであろう痕跡が散らばっている...。
時代が変わっても、みんな蜜を吸うんだなと思っていると、花の脇に少女のハンカチが落ちていた...。
ハンカチを広げると蜜の吸い殻があった...。
私は推測してみた...。
花の蜜は登下校中のあるあるだが、運悪く、花が枯れかけていたり、犬のオシッコがかかっていたりした場合はお腹を壊すことがあるんだよな...。
密の吸い殻とハンカチ...。
吐き出したのかな...?
これは腹を壊して病院に運ばれた可能性が高いな...。
私は近くの病院に向かってみた。
推測通り、少女は病院にいた。
少女と顔を合わせると、私は母親に頼まれて探しにきた探偵だと少女に打ち明けた...。
しばらくすると、少女は口を開いた。
「登校途中は散々な目に遭ったんだよ」
「水溜りを踏んじゃって、洋服に泥が付いたし、野良犬に追いかけられて、転んで洋服が破れちゃったもん」
「あと、花の蜜を吸ったら気持ち悪くなって、家に帰ろうとしたけどお母さんに怒られると思って学校に向かったけど、友達にバカにされそうだし」
「落ち込んでいたら、下痢になって気持ち悪くなって気付いたら病院にいたの」
「病院は近所のおばさんが運んでくれたみたい」
何だか少女らしい悩みが見えてきたぞ...。
それだけで登校したくない気持ちになるのは分からなくもない。
かくゆう、私にも理解できる出来事だからだ。
私は思わず自分の体験を話した。
「私が幼少期の時は、登下校中にお漏らししたことがあって、登校中は最悪で、大きい方のお漏らしは友達にバレないように先生にパンツを貰ったものだよ」
「それでも登校は諦めずにしたけどね」
しかし、少女にとっては親にも学校にも恥ずかしい姿を見せるのは嫌だったのか...。
少女は更に胸の内を明かした。
「だから病院にいる今は、登校できなくて良かったと思っているの」
「あのまま行ったら、確実にいじめの対象だよ」
「だって、学校でトイレに入っただけでアイツうんこしてるよ!ってバレて、見つかったら日には、あだ名をうんこマンて名前をつけられちゃうんだから...」
私が小学生の時と同じやん...。
続いて私は自分のエピソードを少女に話した。
「そうそう、変な思い出があって、授業中にオシッコに行きたい事を先生に言う勇気がなくて、我慢していたら、つい漏らしちゃって...」
「その時、隣にいた男子が急にバケツの水を私にぶっかけてきたの」
「びっくりして、何するの!って怒りそうになったけど、 " これで、オシッコ漏らしたのがバレないでしょ。 " って言われたもんだから、助かったけどね」
「男子は悪者を演じてまで、私のお漏らしを隠してくれたのよ」
「そんなの信じられないと思うけど、後になって話のネタみたいで笑っちゃったけどね...」
「それに比べたら全然気にする出来事じゃないわよ」
「お嬢ちゃんも大変だったけど、最後には後で必ず笑い話になる時が来るわよ!」
そう話をすると少女は笑ってくれた...。
最終的に、かわいい少女の小さな悩みが招いた、ある意味登校拒否に近い小さな事件だった。
結果、病院にいることは親と学校に知らされる事になるのだけどね...。
しかし、見つけるのが遅ければ
危うく行方不明の捜索という大事件になるところだった。
私の推測は正しかった...。
やはり、あるあるは人を笑顔にするんだなと思った仕事だった。