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20 最愛の姉へと捧げた彼の人生


『クララ・アダムスの栄華はね、結局いつも長くは続かないのよ』



「………………、は?」

たっぷりと沈黙の時間を経て、リルローズの口からは間の抜けた声が漏れ出た。その声は何故か音として発せられなかったのだが、その事に気付きもしない程にリルローズの困惑は大きなものだった。


……一体なんの話なのか。

何故、唐突にクララの話になるのだろうかと訝しむリルローズは、レオノアの様子を具に観察する。



第一、彼女の盛も衰も所詮、自分が死に追いやられた後の話であって、リルローズにとってみれば関与のしようがなく心底どうだってよい事なのに。



そもそも、マリエッタの話を持ち出したのはレオノアではないか。マリエッタの事だから気になるし不安だし先を聞きたいとも思うのに、何故クララの話などされるのか。


そう考えたなら、次第に込み上げてくるのが怒りだ。


勿体ぶった切り出し方も、回りくどい物言いも、なんとも巧妙にリルローズを苛立たせる。



『まあ当然と言えば当然よね。性懲りもなく毎度毎度あっさりと魅了されちゃうアナタの婚約者や幼馴染み達はともかく、王や忠臣達はお馬鹿じゃない。侯爵家(ソフィーリオ)以外の貴族達の、セルジオやクララ・アダムス、延いては王家への反発も大きい中で、それを収めるとなれば最適な対応は一つだけ』

だが、リルローズの胸に渦巻く怒りなどどこ吹く風、レオノアは得意げに続ける。それはリルローズには知る術もない、『その後』の話だ。


『王太子は廃嫡、全ての権限を剥奪されて、同じようにそれぞれの一族から戸籍を抹消された馬鹿三人と一緒に戦場付近の僻地へと追放。ああ、因みに王太子には第二王子が据えられたわ。それからクララ・アダムスは王族を貶めたとして産んだ子共々処分されたわ。まあ、どの道セルジオの子ではなかったしね、実に相応しい最期だと思わない?』



興味ない──そう言ってしまえばそれまでだが、それでもセルジオの行く末を、リルローズは案じずにはいられなかった。今更どうしたって何もかも意味がないのに、それでも彼もまたクララの憐れな犠牲者なのだと知ってしまったから。



『これが、アナタが死んだ過去()()の結末よ。ね、傑作でしょう?』


そうレオノアは軽快に笑うと、続けざまこう訊いた。


『これは勿論、王の主導で行われたのだけれど、実はもう一人、とっても重要な役割を担った人がいるのよ。……リルにはそれが誰だか分かるかしら?』



愛らしく小首を傾げるレオノアに言葉もないリルローズ。

リルローズが考え思い浮かべる、リルローズの理不尽な死を嘆き悲しみ悼む人物は、多く見積もっても二人。それは最愛の弟と、幼き頃よりの大親友。



『僅か十三で、復讐の為に人生の全てを捧げるだなんて本当に立派だわ。だからこそ今回は──排除されたのね、きっと』




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