14 邂逅
……ここは、どこだろう?
過去二回はいずれも、ひっそりとその命の灯火の絶えた直後に幼い頃へと逆行した。
その都度、死の間際に感じた孤独や恐怖や苦痛が身体を、心を襲う事で、全ての記憶まで甦った。
だけど、どういう事か。
今や世界は真っ暗闇に覆われ、前も後ろも、上も下も、音も香りも、時間の感覚すらなくて。伸ばした自分の指先さえ見えない。
「もしかして……もう、本当に終わってしまったの……?」
呟く声さえ儚く散って、応える気配もなく、なんとも心細い。
今までならば、『死』によってもたらされる安寧を心待ちにしていたが、今度ばかりは違う。
愛する弟が、大罪人の汚名を着せられたまま死んだ。殺された。
リルローズはなんとしてでも、その汚名を雪がなくてはならない。あの優しい子が幸せでいられる未来を、なんとしてでも選び取らなくてはならない。
その為ならば、何度だって『死』を繰り返そう。自分が何度殺されようとも、……再びセルジオに凍り付く程に冷たい眼差しを向けられたとしても、次こそは絶対にリュカを護ってみせる。
その決意は固い、が──
「……どうすれば良いの……?」
正に暗中模索だ。
『手伝ってあげましょうか?』
「!?」
突然、暗闇の中から声がしてリルローズは飛び上がった。心臓が胸を突き破って飛び出すかと思った程だ。
だが辺りを見回したところで、あるのは感覚すら塗り潰す程の闇。不安ばかりが増幅して、リルローズの身体は小さく震えた。
『うふふ。こっちよ、こっち』
遠いのか近いのか、そもそも男なのか女なのか、若年なのか老齢なのか。どうとでも取れる声だが、分かるのは一つ。何故かそれはとても楽しそうだという事。
最初に現れ出たのは、まるで光を束ねたように輝く、細く長い指先。音もなく、闇の中に浮かび上がったものに唖然とするリルローズを他所に、光は緩やかに人の形を取り始めた。
「……綺麗……」
ほう……と、リルローズの唇から感嘆のため息が落ちた。
『まあ。有り難う』
にっこりと笑うそれは、とても美しい女性に見えた。……実際のところは分からないが。
一言で表すならば『白』だ。
星を飾り付けたように輝く純白の髪は足首まで隠す程に長く、切れ長の目にはこの世の穢れを浄化する清き白炎が揺らめいている。
……本当に、どこもかしこも白い。長い睫毛まで真っ白だ。
『初めましてね、リルローズ。アタシはレオノア』
すっと、整った手が差し出された。これは……握手を求められているのだろうか? 少しだけ悩んでから、リルローズはおずおずとその手を握った。見た目に反して、その手は穏やかに熱を帯びていた。まるで『人』のように。
『ねぇ、リルローズ。共闘しましょう。アナタはクララを止めたい、アタシはアンネラを止めなくちゃいけない。お互いの目的の為だもの、悪い話じゃないでしょ?』
リルローズの手をしっかりと握り返して、レオノアと名乗った存在は微笑んだ。




