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小峠澄の日記

小峠澄とサイコロ


 小峠澄が〇〇市にある屋台通りの賭博場へ昔馴染みに呼ばれて立ち寄った時のこと。


 トタンと木枠で組まれた賭博場は、建物を壊さんばかりの観客入りで熱気に溢れていた。


 その中で一人頭を抱えている昔馴染みを見つけると、小峠は声を掛けた。


「何かあったの?」


 昔馴染みは小峠に事の顛末を話した。


 曰く、悪魔のサイコロを持つ客が現れたと。


 男は寿命半分を引換に『丁か半でどんな質問にも答えるサイコロ』を手に入れたとのこと。


 サイコロの効果は目覚ましく男は如何なる博打でも全勝を誇っているらしい。


 「このままじゃ商売が上がったりだ。澄ちゃん何とかしてよ」


 昔馴染みはそう言って澄に泣きついてきた。


 澄は指先を顎に持っていき思案すると、人並みを掻き分け賭博をしている男の前まで歩み寄る。


「あなたのサイコロはどんな質問にも答えられると聞いたけど本当?」


 男は小峠を舐め回すように見つめると笑った。


「ああ。本当だとも。何なら使わせてやっても良いぞ。もちろんタダとは言わないが」


 小峠は唇を少し噛んでから、精一杯口元を引き上げた。


「あなた結婚はしている?」


 男は小峠の表情を見て、更に笑みを強めた。


「してるとも。お前より数倍美人で器量が良い。だから何だ?」


「それなら、一つ質問をさせて? 結果をそのサイコロで占ってちょうだい」


「何だそんなこと。受けて立とうとも。だが対価は貰うぜ」


 そう言うと男はサイコロを振った。


 振られたサイコロは生きているかのように床の上を止まる事なく回転する。


「さあ、何を質問するんだ?」


 男が急かすと小峠は肺が一杯になるほど大きく息を溜め、怒鳴るように大声を張り上げた。


「あなたの奥さんは結婚してから他の男性と!!」


 男は小峠の大声に驚き耳を塞ぐ。


 すかさず、小峠は「※※※」と呟いてから続けた。


 「お付き合いをしていますか?」


 男は小峠の質問の意味がわからないのか、呆けた顔をしていた。


 カラン。小さな音がしてサイコロが止まると、男の視線はサイコロに戻る。


 サーっと血の気が引くように男は顔を青くすると、足をもつれさせながら、走って賭博場から出ていった。


 大きな声を出して肩で息をする小峠に、昔馴染みが近寄ると肩を叩いた。


「ありがとうお陰で潰れずに済んだわ。だけど澄ちゃん。今ボソッと何を聞いたの?」


「何も? ただ『あなたの奥さんは結婚してから他の男性と[お酒の]お付き合いをしてますか?』って聞いただけよ。何を勘違いしたかは知らないけどね」

 男は妻を信用できなくなり暴行した挙句殺してしまったとのこと

 男が持っていた悪魔のサイコロは、男が投獄されて以降、その行方も手に入れる方法も、今では誰にわからない

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