めぐり逢い
先に謝る、ごめんな。
昔々 あるところに おじいさんと おばあさんが おったそうな 二人には子宝に恵まれなかったそうじゃ
それでも二人は幸せだったそうじゃ。
「なぁ婆さんや」「何ですお爺さん?」
「儂は婆さんに巡り会えて幸せじゃった…ありがとう」
「何ですお爺さん今更そんな当たり前な事を言うんですか?」
「ほれ感謝の気持ちは言葉にせんと駄目じゃろ?」
「何を言ってるんですか、お爺さんが若い時から私にお前が好きだ儂と一緒になってくれと、告白されてから今までも儂は幸せじゃ婆さん愛しとるぞ、とおっしゃってるじゃないですか」
「なぁ婆さんや…儂らはもう歳じゃいつお迎えが来てもおかしくはない…じゃからこそ儂は最期まで婆さん一緒に居れた事を幸せなんじゃ」
「お爺さん…」
「婆さんや、愛しとる…」「お爺さん、私も…」
見つめ合う二人…今この世界は彼等の為に存在しているのかもしれない…
…しかし“ドンドンドン”、と出入口の戸を叩く音が
「…ハッ、何ですかね?」「なんじゃ?どれ、儂が見てこよう」
お爺さんが戸を開けると、そこには小さな“ワラシ”がおった、ワラシは小さな声で…
「お腹空いた…」と言い倒れてしまいました。
「なんじゃ!今どき行き倒れじゃと!婆さんや、味噌汁と飯の用意じゃ儂はこのワラシを床に運ぶ」
「はい、わかりました」
お爺さんはワラシを床に寝かせると椀に水を入れ、わらしの元に…「ほれ水じゃ少し飲むがええ」、とワラシの口元に椀を差し出す「……」ワラシは頷き椀に口をつけ…「っ」ワラシの目が見開かれる
「ははは、驚いたじゃろ?それはな、クエン酸入の果汁水じゃ!」
水だと思って飲んだら、まさかのクエン酸入の果汁水、不意打ち成功!…失礼。
「その水は体の疲れを和らげてくれる、ゆっくり飲むがええ」
ワラシは椀に再び口をつける…口の中に広がる酸味に驚いたが悪くなかった…
「婆さんや、そろそろかの?」
「ええ今お持ち致しますよ」
お爺さん達の前には…
白く輝くご飯、少量の漬物と梅ぼし、そして大きな椀に盛られた野菜たっぷりの味噌汁
「それでは、いただくかの」両手を合わせ
「「いただきます」」「いただきます」
「今日も婆さんの料理は最高じゃのう」
「もう嫌ですよ」
飯の最中にいちゃつく二人……チッ
[省略中……しばらくお待ち下さい]
「「「ごちそうさまでした」」」
食事を終え寛ぎ中
「なあワラシよ、お前さんの親はどうした、逸れたのか?」「…親はいない」
「そんな、まだ小さいのに…」
「なら儂らの家でしばらく居ればええ、なあ婆さんや、とうじゃ?」
「そうですね、良いと思いますよ、お爺さん」
「どうじゃワラシよ、お前さんには儂らの手伝いを少しばかりやってもらうが…」「…うん」
こうしてワラシはお爺さん、お婆さん、と暮らす事になりました。
「ほれ、この野菜は食べ頃じゃ」「うん」
時にはお爺さんと野菜の収穫を…
「ワラシ、これを運ぶの手伝っておくれ」「うん」
時にはお婆さんの料理の手伝いし
「この害獣め仕留めてやる」「……」
時には畑を荒らす害獣をお爺さんが仕留めて
「まあ!今日は肉鍋ね!」「……」
お爺さんが仕留めた害獣の肉料理を堪能。
そして、ワラシが二人と暮らし始めて一月後…
「なあ婆さんや」「何ですお爺さん?」
「儂らに子がおったらこんな感じなのかの?」
「そうですねこの子は他人に思えないですね」
「そうか…ならこの子は儂らの子じゃ」
「ええ私達の子です」
【過去の願いワラシの望】
「神様お願いします!どうか、お爺さんとお婆さんに会わせて下さい!私の命を捧げます…どうか、どうかお願いします。」
ワラシはお爺さんとお婆さんの最期の時を知っていました、ですが二人には教える事が出来ませんでした。
それは…神様との約束
《ワラシよお前の願いを叶えてやろう》
「本当ですか!」
《但しお前が、お爺さんとお婆さんに会えるのは二人の最期の時、それでもお前は…その願いを望むか?》
「望みます!また大好きなお爺さん、お婆さんに会わせてくれるなら!」
翌朝二人は目覚める事はなかった…
「お爺さん、お婆さん、また生まれ変わったら会いに来るね、それまでは…おやすみなさい」
ワラシは再び待ち続ける
それが数年なのか数十年なのか……あるいは。
《悪いなワラシお前の願いを叶えてやれん》
とある病院
「産まれたのか!?」「ええアナタ私達の子よ」
「よくやった!愛してるぞ!?」
「ちょっと落ち着いてよ、もう〜」
「そうか〜俺も遂に親父か…あぁ、ちっちゃくて可愛な〜女の子か〜じゃあ名前は」
「えぇこの子の名前は……望よ」
ノークレームでお願いします。