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人狼ゲームと中学生  作者: えいま
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人狼デスゲーム~5日目~

大野「無駄に生き永らえた僕の命もここまでか。」

彼は不知火さんに延命して貰った事を無駄だと思っているのだろうか。不知火さんが大野君に生きて欲しいと思ったように、彼も不知火さんに死んで欲しくなかったのか。

大野「僕が死ぬ時、藍月が生きていれば一緒に死ぬ事になっている。藍月が昨日死んでしまう事は不可避だった。藍月の自殺行為は、本当に僕に生きてほしかったんだなと今になって気付いた。」

悔いた様な溜息を吐いた大野君は椅子から立ち上がる。彼は悔いを多く残した顔をしている。それは不知火さんの事なのか、他に悔いがあるのか、私には分からない。

妹島「で、どうすんの大野。昨日の不知火さんみたいに自分で死ぬの?」

大野「いいや、頼みたい人間が居る。そいつに断られたら自分で死ぬ。」

頼みたい人?一体誰だろう。

大野「頼めるか?藍野。」

そっか、彼らは同じクラスだ。仲が良くてもおかしくはない。人に自分を殺せと頼むのは大野君も心が痛むだろうな。

藍野「良いよ。引き受けてやる。」

少し躊躇った表情をしながらも了承する藍野君を皆は静かに見守っている。

大野「今日の夜も誰か死んでしまう。それは逃れられない。市民陣営、騙そうとして悪かったな。」

最期の言葉を聞いた藍野君は何かを受け取ったかのように大野君に向かって銃を撃った。藍野君の目は決意に満ちていた。

血を流して、まだ生きていた大野君が息絶えるまで私たちは会議所に居た。大野君を見送った後で私たちは部屋に戻る。明日の朝に死体を見ない事をもう願ってはいなかった。諦めていた。死人は出てしまう。


目が覚めて、匂いで今日も人が死んだことを認知する。誰だろうか、妹島さんか藍野君だ。恐る恐る部屋から出る。1つの部屋の扉が開いていて、私はその部屋に近づく。部屋を覗くと、そこには妹島さんが引き裂かれたような姿で息絶えていた。思わず後ずさりする。叫び声をあげる事すらできない程息が詰まり、胸が圧迫される。誰かが来る足音にも気付かず、その場にへたり込む私。そんな私の姿を見た誰かが皆を呼んできたみたいだ。

灯火「村井ちゃん大丈夫?ずっと人の死体を見続けてたら精神に悪いよ。ほらこっちにおいで。」

言われるがまま会議所まで着いて行った。野々市君と藍野君が来るのを待ってる間灯火さんと2人で話していた。灯火さんは必死に私を落ち着かせようとしてくれていた。2人で励まし合っていると男子2人が会議所にやってきた。

藍野「今日の会議なんだが、人狼は野々市で確定している今、話し合うことは無い。そういう事だから、今日はこれについて話そうじゃないか。」

藍野君が取り出したのは血に塗れた手帳のようなもの。これが何を意味するかは全く分からない。何か意味があるから彼は手帳を持ってきたんだと思うし、無意味な物では無いはず。

藍野「これは妹島が抱えていたものだ。あいつはこの手帳を抱えたまま死んでいた。あいつは利益を求める、死にかけの時力を振り絞ってまで無意味な手帳は抱えはしないだろう。」

パラパラとページを捲りながら呟く藍野君は、落ち着いている。どうして彼はこんなにも落ち着いていられるんだろう。人が死ぬ事に慣れているなんてことは無いよね。

灯火「その手帳には何か書いてる?」

藍野「今のところはこの人狼ゲームに対する感想だけだな。あいつは楽し気に会議をしていたが、本音はそうでも無かったらしい。人を殺させて主催者は何が楽しい、とか書かれている。ゲームに対する批判的な感想が綴られているな。」

意外だなぁ、彼の言う通り妹島さんは楽し気に会議をしていた。誰を殺すか決める会議を楽しそうに参加する彼女の神経は全く理解できなかったけど、真意は行動とは全然違う物だと今気づいた。本当は彼女も嫌だったんだね。

野々市「俺今日死ぬのか、死にたくないけど…」

愚痴を漏らすようにぼそりと囁いた野々市君を申し訳なさそうに見つめる灯火さんと藍野君。野々市君に声を掛ける代わりに日記の説明を続ける。

藍野「昨日の日記だ。主催者について、と書かれている。」

主催者について?妹島さんは主催者について何か知っている事があったの?私たちは順番に日記を回し読みする。

「私はこの人狼ゲームの主催者について思い当たる事がある。このゲームを主催しているのは私たちが通う中学校の校長だ。教師たちも共犯だろう。校長は私たちの学校に在籍する期間が酷く長いから。うちの学校の教育理念は

『生き残る強さを養う』私はこれを、社会で生きていくための強さだと解釈していた。しかし、これは額面通り捉えれば人狼ゲームと同じ意味になる。学校はこのゲームを、生きる強さを養う目的だと言って行っているのだろう。私の憶測でしかないが、信ぴょう性は高いものだと自分でも思っている。」

校長先生が主催者で、先生たちが片棒を担いでいる?こんな人を殺し合うゲームを教師が望むの?私たち生徒を支えて、正しい道に進ませるのが教師でしょ。どうして私たちに命を奪い合わせる行為を強制する。

灯火「嘘でしょ、でも、根拠は明記されてるし完全に否定することも出来ない。」

日記を読んだ灯火さんや野々市君の顔色が変わる。当たり前だ、私たちに殺し合いを強いたのは日頃、自分たちに様々なことを教えてくれる。確かに私たちを呼び出したのは校長先生だ。放送通りに正門に行くよう先生は勧めた。少し戸惑って私たちに行くようにと押したのはそれだから?いやでもまだ確定したわけじゃない。赤の他人が企画したゲームに参加させられただけなのかも。

村井「でも、妹島さんの推測だし、うちの学校の教師たちが主催者じゃないかもしれないよ?」

藍野「…、まあいい。悪いが野々市、今日死んでくれないか。」

野々市「時間か。」

会議の終了時間が迫ってきている事に気付いた。野々市君を殺して終わる。殺すのか。心の中で人殺しを否定しまくった後に人を殺す決断をする。

灯火「じゃあ投票をしよう。」

昨日と同様、灯火さんが採決をとる。結果は、当たり前だが票は野々市君に集まる。ごめんなさい、野々市君。

【今日の処刑先は『野々市 絵馬』さんに決定しました。】

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