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人狼ゲームと中学生  作者: えいま
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人狼デスゲーム~4日目~

目を覚ますとツンと血の生臭く、鈍い匂いが広がる。また誰かが死んでしまった。今日は誰?大野君?妹島さん?野々市君?灯火さん?藍野君?誰かは分からないけれど、他の人が見つけるまで部屋にこもっていよう。自分の目で誰が死んだかなんて見たくない。見たくない。

灯火「村井さん?起きてる?」

灯火さんが私の部屋の扉をノックする。私はすぐに返事をした。灯火さんは私に部屋から出てきてと言い、私は言われるがまま部屋の扉を開く。

村井「どうしたの?」

灯火「私の口からは言いにくいからさ、着いてきて。」

言いにくいってどういう事。人が死んでいる事はもう分かっている。今更隠す必要も無い。灯火さんに着いて行くと、心当たりがある扉の周りに生存者が集っていた。この部屋って確か、確か。

妹島「真也が今日の襲撃対象になった…」

真也が死んだって事?真也が死ぬはず何て無いよね。嘘だよね。

藍野「嘘だと思うのなら部屋の中を覗いてみな。」

恐る恐る部屋を覗いてみると無惨に切り裂かれた真也の死骸が横たわっている。血は乾き掛けており、体に斑点も浮き出ている。誰かが死ぬだろうと思っていた。けれど、真也が襲撃対象になるとは予想は出来なかった。真也という選択肢は自然と排除してしまっていた。

村井「何で真也が…」

そう呟いた私に答えてくれたのは灯火さんだけだった。

灯火「死が訪れる確率は平等なんだよ…」

鉛になった足を必死に動かして会議所へと向かう。今日も殺戮を続けなければいけない絶望感に苛まれながら開いた扉の先には、不知火さんの姿は消えていた。また晩に片づけられたのね。

野々市「利川が居なくなって、どうするんだよ。」

真也は霊能者だったからか、元からの性格がそうだったからか、場を仕切ってくれていた。いつも私たちの先頭に立って皆を導いてくれていた。これからどうやって進めていこうか。

灯火「今日の占い結果は妹島さん白。私目線では野々市と大野を殺せば終わる。」

勝てる道が見えてきた。でもだからと言ってこれ以上殺し合いを続ける必要なんてある?無いよね。どうして続けようとするんだろう。

野々市「俺は最初からお前の占いなんて信じちゃいない。」

灯火さんは勝手にすればと言わんばかりにため息を吐く。この人狼ゲームは野々市君の素行の悪い本性が垣間見える数少ない機会でもあった。

藍野「なら野々市と大野、吊り回数は足りている。間違えちゃいけないのは順番だ。狼を先に吊ってしまえば狐が勝つからな。」

飯山さんが背信者ではない限り、狐は確実に生きている。背信者が飯山さんだった場合、不知火さんが狐だと言える。でも飯山さんが市民だった場合は不知火さんが狐だと言うのは成り立たない。狐が死んだとき、背信者が生存していれば後追いで背信者も死亡するから。飯山さん以外に背信者の可能性がある人間はいなかった。ここで重要になるのは飯山さんか。飯山さんが不明瞭、衷さんは狂人、叶山君は猫又、鳥井君が人狼、不知火さんが狐陣営。

村井「私的には飯山さんが市民だと思っている。狐陣営がほぼ確定している不知火さんが背信者だと考えたときに、狐だと考えられるのって誰?」

私は考えを全て伝え、皆にも意見を聞いた。意外にも好感触で、皆が聞き入れてくれた。良かった、除け者にされてはいなかった。

灯火「村井ちゃんの言う事が正しいとしたら現時点で吊り対象なのって大野君なんだよね。野々市君の黒は確定してるし。だって狐陣営の藍月は大野君を庇って処刑されたしさ。庇う利益があるのは大野君が狐だった時だけだしね。」

彼女の言う通りだよ。不知火さんの自殺で利益が得られるのは大野君だけ。つまり今この時点で一番狐の可能性があるのは大野君。不知火さんは、大野君に死んで欲しくないから自分の命を投げ出した。なのにも関わらず大野君の命はたったの1日しか命を伸ばすことが出来なかった。不知火さんはただの犬死ってことか。

妹島「もうごちゃごちゃ言わずに大野つっときゃ解決するでしょ。」

彼女の言う通りだけど。でも私の頭には不知火さんの事がちらつく。不知火さんの命が無駄になるような行動は出来ない。きっとみんなそう思っているから大野君の処刑に総意を集められないんだ。

妹島「不知火の事今更気にしてるの?皆今まで人の命雑に扱ってきた癖に不知火だけ尊重するとか言わないよね。」

ハッとさせられる。確かに私たちは死んだ皆の命を無下に扱ってきた。無下に扱ったから皆死んだ。不知火さんだけじゃ無かった。結局、無駄死にしたのは皆。死んだ皆、無駄死に以外の何でも無かったんだ。

灯火「大野君、変な質問だけど、今日、死んでくれる?」

大野「…」

静まり返ったこの場で皆が視線を注ぐのは大野君の苦悶に歪んだ表情。死にたくないなら呑まない、死んでも良いなら呑む。殆どの人間が選ぶのは前者だろう。

大野「呑んでやるよ。呑まなくても投票で選ぶんだろ?それなら呑もうが呑もまいが変わらない。」

覚悟を決めた彼から溢れる言葉は皮肉を含んだ言い方だった。処刑を呑むというのはもう死からは逃れられないと踏んだ彼なりの決断。

藍野「大野、1つだけ聞かせてくれ。不知火はどうしてお前を庇って死んだりした?」

現時点で最大の謎と言うべきこと。今藍野君が大野君に問いたこと。大野君自身の口から聞きたい事だ。

大野「ピエロ、時間はあるか?」

???「勿論、早く決まったからね。好きなだけ話していいよ。」

ピエロが応答すると大きなため息を吐いて語りだす。

大野「大して話す事も無いけどな。藍月の家は反社会勢力の幹部という噂があっただろ?その噂が尽きないせいで藍月には友達と言える人間が居なかった。僕は予選はただの噂と思った。火の無いとこに煙は立たぬと言うけど、煙に似た何かは立つことが多い。まあ、初めて家に行ったとき、噂は本当だと知ったよ。だからと言って関わるのは辞めなかった。だってさ、話が合って一緒に居るのが楽しかったから。藍月にとっては初めてだったそうだ。僕のような人間は。だから、大切に思ってくれていると言ってくれた。それだけだ。」

ずっと居なかったからこそ、やっと出来た友達を大切にする。命を投げ出しててでも。きっと私には一生理解する事が出来ない感情だと思う。

大野「僕はもう良いよ。死ぬ準備は出来ている。その前に、投票か。」

投票の指揮は誰がするんだろう。真也が居なくなってしまったから…

灯火「私が利川の代わりに点呼する。」

落ち着きはらった大野君を横目に、皆が灯火さんの指揮に従う。皆が手を挙げるのは大野君の名前が呼ばれた時。大野君が死んでしまう事は不可避なんだ。私は自分にそう言い聞かせ、人を殺して生きながらえる罪から目を背ける。

【今日の処刑先は『大野 悠哉』さんに決定しました】

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