俺のモノ
「・・・わか、美鷹若頭!」
己を呼ぶ声で意識が浮上したのを感じた美鷹はゆっくりと目を開いた。
寝るつもりはなかったのだが、目を瞑っている間に寝てしまっていたのだろう。
車の窓から外を見ると見慣れた景色が目に入る。
あの後、琥珀のを抱えたまま家を出た美鷹は下で待たせていた車に乗り込み美鷹のマンションへと向かっていた。
「お休みの所申し訳ありません。ご自宅の方へまもなく到着致します」
助手席に腰掛けこちらを伺っている男。
若頭補佐 間宮右京
近藤や美鷹のようなどっから見てもカタギには見えない2人とは違い、一見ヤクザには見え難い雰囲気をしている。
しかし、臆することなく堂々と若頭補佐として美鷹の隣に立つ姿は普通の一般人にも見えないだろう。
視力補正用ではないノーフレームの眼鏡を掛け、キッチリとしたスーツを身に纏う右京は金の天秤バッチこそ付けていないものの、それでも彼が弁護士だと言われれば納得するようなそんな雰囲気を持っていた。
実際右京は、司法試験に合格をしている法律家であり美鷹のもっとも信頼する部下の1人だ。
「あぁ。今日は駐車場まででいい。それと明日は誰からの連絡も繋ぐな。お前らで対処しとけ」
「かしこまりました」
車の中で寝ていたせいか固まった体を伸ばすと、ふと美鷹の膝の上で眠っている少年の姿が目に映る。
普段であれば美鷹が誰かに膝枕をするなど考えられないだろう。
しかし、琥珀を抱えてあの家を出た瞬間泣き疲れたのか気を失うように眠った琥珀。
いくらこの車が広いとは言っても後部座席に琥珀を寝かせてそのまま隣に美鷹が座るなんてことが出来るはずもなくこの形で納まったのだ。
やっと手に入れた。
美鷹のスーツにすっぽりと収まるほどの小さな体に、今は閉じているが開けばパッチリとした大きな瞳。ぷっくらとした小さい唇は半開きになっており、ところどころに青黒い痣があるが雪のように白く滑らかな肌。
今は、ボサボサで埃をかぶっているが、腰まである茶色の髪は、洗えば綺麗な細い髪になるだろう。
無防備な仕草で擦り寄ってくる琥珀の髪を撫でてやりながら今後のことについて考え美鷹は楽しそうに口角を上げたのだった。